アルコールチェックは就業規則に記載が必要?メリットや方法などについて解説
道路交通法の改正によって、一定の車両台数を保有する事業所においては2022年4月より運転前後の飲酒検査が義務化されました。
それに加えて2023年12月1日より、アルコールチェッカーを用いたアルコールチェックが義務化されました。そのため、多くの企業でアルコールチェッカーが導入されています。
では、このルールを従業員に周知させるためにアルコールチェックを就業規則に記載することが必要なのでしょうか?
この記事では、就業規則に記載が必要かどうかや就業規則に含めるメリット、方法などについて解説します。
目次 / このページでわかること
1.アルコールチェック義務化で企業がやるべきこと
冒頭で説明した通り、車両を一定台数以上保有する事業所では2023年12月より運転前後のアルコール検知器を用いたアルコールチェックが義務化となりましたが、単にアルコールチェッカーを使えばOKというわけではありません。
飲酒検査の際にはアルコールチェッカーでの測定とあわせて、管理者が目視等で運転者の顔色や声色を確認し、問題なく運転できるかどうかを判断する必要があります。
また検知結果は1年間の記録保存が義務付けられており、定められた8項目の記録を1日2回分(運転開始前・終了後)残す必要があります。紙やExcelシートなどで保存しても構いませんし、クラウド上での保存でも問題ありません。
2.就業規則とは
そもそも就業規則とは、職場における規則をまとめたものです。労働者の賃金や労働時間などの労働条件に関すること、職場内の規律などが書かれています。
職場でのルールを定めて労使双方がそのルールを守ることで、労働者が安心して働けます。また、労使間のトラブルを防ぐ効果もあるため、職場において就業規則は欠かせません。
就業規則の役割をまとめると、次の3つとなります。
- 1. 企業で働く際の統一的なルールを明確化して、そのルールを社員に共有するもの
- 2. 企業と社員との契約書
- 3. 労働管理を円滑に進めるためのマニュアル
3.アルコールチェックを就業規則に入れる必要はある?
アルコールチェックは就業規則に入れるべきとされています。アルコールチェックは義務化されており、警察の取り締まりなどもよりいっそう厳しくなっています。
また、義務化されているからという理由だけでなく、大切な従業員の命を守るためにもアルコールチェックは不可欠です。
アルコールチェックを就業規則に入れることで、よりアルコールチェックの大切さを従業員に理解してもらえます。
すでに運送業や旅客輸送業では、アルコールチェックを行うことが就業規則に記載されています。まだ就業規則に入れていない事業者は、なるべく早く対応することをおすすめします。
4.アルコールチェックを就業規則に入れるメリット
アルコールチェックを就業規則に入れるメリットは、次の2点です。
- ・アルコールチェックのルールを確実に従業員へ周知できる
- ・違反者に対して適切な対応ができる
それぞれのメリットについて紹介します。
アルコールチェックのルールを確実に従業員へ周知できる
アルコールチェックを就業規則に入れることで、飲酒検査のルールを従業員へ周知できます。なぜなら、就業規則は働く際のルールを明確化するものであり、社員は必ず目を通すものだからです。
従業員へ周知させることで、会社と従業員双方を守ることにもなるでしょう。
違反者に対して適切な対応ができる
アルコールチェックを就業規則に入れることにより、違反者に対して適切な指導をできるメリットもあります。就業規則は、いわば企業と社員の契約書です。そのため、意図的にアルコールチェックを行わないなど就業規則を破った社員に対して、相応の対応が可能です。つまり、より強制力を高められるのです。
5.アルコールチェックを就業規則に入れる方法
アルコールチェックを就業規則に入れるためには、下記2つの方法があります。
- ・自社で変更する
- ・社労士や弁護士に依頼する
自社で変更する
自社で変更する場合は、次の3つのステップに沿って行います。
- 1. 改定案の作成と経営陣の承認
- 2. 意見書を作成
- 3. 変更届の作成と書類の提出
それぞれ詳しく説明します。
1. 改定案の作成と経営陣の承認
就業規則の変更が決まったら、改定案を作成します。雇用形態の異なる社員が在籍している場合は、変更後の就業規則が適用される範囲を決めなければなりません。
改定案をまとめたら、法務担当者などに確認してもらいます。法律に反する部分がなければ、取締役会で承認を受け、経営陣の合意を得ます。
2. 意見書を作成
就業規則を変更する場合は、労働基準監督署へ意見書の届け出が必要です。労働者の過半数の意見を聞き、まとめたものを添付することが義務づけられています。
3. 変更届の作成と書類の届け出
最後に、変更届を作成して書類を届けます。就業規則変更届と労働者の意見書には、決まった様式はありません。
以下の3つを準備して、所轄労働基準監督署に提出しましょう。
- 就業規則変更届
- 労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見書
- 変更後の就業規則
社労士や弁護士に依頼する
自社での対応が難しいようであれば、社労士や弁護士に依頼する方法もあります。
就業規則の作成は社労士の独占業務であるため、依頼先としてはおすすめです。社労士は、労務管理や社会保険実務の専門家なので安心です。
また、弁護士は法律事務全般をおこなえる唯一の職種です。就業規則の作成はもちろん訴訟などの代理人にもなれます。就業規則の作成から、万が一トラブルが発生した際の対応まで依頼したいのであれば、弁護士が良いでしょう。
ただ、弁護士によって得意な分野も異なるため、就業規則に携わった経験がある弁護士に依頼することをおすすめします。
6.アルコールチェックを就業規則に入れる前に準備すべきこと
ここでは、就業規則にアルコールチェックを入れる前に準備すべきことを紹介します。
- ・安全運転管理者を選任する
- ・アルコールチェックの運用方法を決める
- ・アルコールチェッカーを導入する
それぞれ詳しく解説します。
安全運転管理者を選任する
まずは、安全運転管理者の選任をしましょう。安全運転管理者とは、事業用自動車の安全運転や運行計画、運転日誌管理業務を行う職種です。安全運転管理者の選任が必要なのは、以下のいずれかに該当する事業所です。
・白ナンバー車5台以上を保有している事業所
または、
・乗車定員が11人以上の白ナンバー車1台以上を保有している事業所
さらに、一部の事業所では副安全運転管理者の選任も求められます。
副安全運転管理者は、以下の条件に当てはまる場合に必要です。
- ・自動車を20台以上40台未満保持している場合(20台追加ごとに1人追加)
安全運転管理者は、従業員の酒気帯びの有無の確認をしなければなりません。安全運転管理者のアルコールチェックについては、下記の記事で紹介しています。
関連記事:
『安全運転管理者によるアルコールチェック|業務内容や運用方法、罰則について解説』
『副安全運転管理者は必要?資格要件や業務内容について徹底解説』
アルコールチェックの運用方法を決める
アルコールチェックを就業規則に入れる前に、アルコールチェックの基本運用ルールについても決めましょう。
具体的には、下記の4つです。
- 1. 安全運転管理者を選任する
- 2. アルコールチェッカーを導入する
- 3. アルコールチェックの運用を社内に周知する
- 4. 運転前後に酒気帯びの有無を確認・記録する
アルコールチェックの運用ルールについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
関連記事:『アルコールチェックの運用ルール|確認方法や記録項目、罰則などを紹介』
アルコールチェッカーを導入する
アルコールチェッカーとは、呼気中のアルコールを正しく検知し、アルコールの有無や濃度を音や光、数値などで示す機器です。2023年12月1日より業務上で車両を運転する場合、アルコールチェッカーを使用して飲酒検査を行うことが道路交通法で義務化されました。つまり、法令対応によってアルコールチェッカーの導入が必須となったのです。
アルコールチェックの結果は、手書きやExcelなどの書面で管理しても問題ありません。しかし、手書き記録などであれば毎日の手間が大幅にかかる上、虚偽の記録を残す、他の人に代わりにアルコールチェックしてもらう、といった不正が実際に発生しています。
クラウド型のアルコールチェックシステムを導入することで、検知データは日時や位置情報などとあわせて自動的にクラウドへデータを送信することができ、効率的かつ確実に管理できます。そのため、今は簡易的なアルコールチェッカーを使用し、紙に手書きで記録を残している、といった企業様にはクラウド型アルコールチェッカーへの切り替えをおすすめします。
クラウド管理型のアルコールチェッカーについては、以下の記事で紹介しています。
関連記事:
『アルコールチェッカーはクラウド管理型がおすすめ!種類の比較やメリット・デメリットを解説』
『アルコールチェッカーとは|種類や選び方、使い方、おすすめの検知器を徹底解説』
7.まとめ
この記事では、アルコールチェックと就業規則について紹介しました。アルコールチェックの対象企業は、2023年12月1日よりアルコールチェッカーを用いたアルコールチェックが義務化されています。
法令改正に伴い、就業規則にアルコールチェックが含まれていない事業者は、追加することをおすすめします。就業規則に入れることで、従業員にアルコールチェックの大切さをより理解してもらえるでしょう。
ぜひこの記事を参考にして、就業規則に含めることを検討してみてください。