【2023年最新】アルコールチェック義務化の概要|開始時期や運用方法、対象事業者を解説

道路交通法の改正が予定されており、白ナンバー社用車を保有する事業所におけるアルコールチェックの義務化が始まります。緑ナンバーのトラックやバスなどの事業者はすでに義務化されていますが、今回の法改正により、白ナンバーも対象となります。
アルコールチェック義務化が開始されると、以下のような悩みが出てきています。
「法令義務化により業務が増える」
「営業マンたちの記録簿の作成が大変」
「手書きで管理するのは困難」
「義務化されるものの、具体的に何をすればいいのかわからない」という声に対して、今回はアルコールチェック義務化の内容と推奨する運用方法などを解説していきます。
2023年8月8日 追記:当面延期とされていたアルコールチェッカー使用の義務化は2023年12月1日から施行開始
1.白ナンバー事業者を含むアルコールチェックの義務化に関して
法改正によるアルコールチェック義務化の内容(延期事項あり)
今回の法改正で「道路交通法 施行規則第9条の安全運転管理者の業務」に内容が追加されました。
2022年4月1日から運転前後に対面での酒気帯び確認が必須となり、また2023年12月1日からは酒気帯び確認の際に、アルコール検知器の使用が必須になるというように段階的に厳格化します。
確認記録の保存も義務付けられていますので、まずは内容についてしっかりと把握しておく必要があります。
2022年4月1日から施行された義務事項 | ・運転前後の運転者の状態を目視等で確認することにより、運転者の酒気帯びの有無を確認すること(1日2回) |
---|---|
2023年12月1日から施行開始の義務事項 | ・運転者の酒気帯びの有無の確認をアルコール検知器を用いて行うこと |
関連記事:『道路交通法改正に伴うアルコールチェック義務化と準備すべきこと』
▼目視等で確認とは?
「目視等で確認」とは、酒気帯びの有無を運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子等で確認することを示します。原則、対面での確認となりますが、対面が難しい状況は多くの企業で発生する可能性が高いのではないでしょうか。例えば直行直帰や出張など、運転者が遠隔地にいる場合は、ビデオ通話を行う・電話をするなど対面と同視される確認が必須となります。
また、今後は目視での状態確認に加えて、アルコール検知器でのチェックが義務となりますので、直行直帰や出張の際はアルコール検知器を携行する必要があります。
▼記録しなければいけない内容
4月1日から紙やExcelデータ、クラウド上など、何かしらの方法で検知記録を残さなければいけません。
記録が必要な事項は8つありますので、確認していきましょう。
記録必須の8つの事項 |
---|
確認者名(点呼執行者) |
運転者名 |
運転者の業務に係る自動車の自動車登録番号又は識別できる記号、番号等 |
確認の日時 |
どのように確認したか(アルコール検知器の使用の有無・対面でのチェックでない場合は具体的な方法) |
酒気帯びの有無 |
指示事項 |
その他必要な事項 |
※その他必要な事項については管轄の警察によって内容が異なることがありますので、管轄の警察署にご確認ください。
▼「アルコール検知器を常時有効に保持する」とは?
アルコール検知器の「常時有効に保持」とは、アルコール検知器が正常に作動し、故障がない状態で保持しておくことを指します。このため、アルコール検知器の製作者(メーカー)が定めた取扱説明書に基づいて適切に使用・管理する必要があります。適切な使用・管理とは、定期メンテナンスを行い、かつ日常的に故障の有無を確認することで、普段から携帯していなければならないという意味ではありません。
なお、検知器の使用回数の上限を超えたものや有効期限が過ぎたものは、有効な検知器とみなされないため注意が必要です。有効期限切れを防ぐために検知器のメンテナンス期限の管理もできるアルコールチェックシステムを導入すると未然に防ぐことができます。
また、使用するアルコール検知器は「国家公安委員会が定める」もので、「呼気中のアルコールを検知し、その有無又はその濃度を警告音、警告灯、数値等により示す機能を有する機器」と定められていますのでご注意ください。機器精度など性能上の要件は特段定められてはいません。
関連記事:『知っておくべきアルコールチェッカーの仕組みや違い』
【白ナンバー事業者必見】法令義務化の対象範囲
続いて、対象となる企業を具体的に見ていきましょう。
実は、白ナンバーの車両を保有している全ての企業が対象というわけではありません。法人の規模による判断ではなく、事業所単位の車両保有数で判断されます。
具体的には、
- ・乗車定員が11人以上の白ナンバー車1台以上を保有
- ・白ナンバー車5台以上を保有している事業所
といった安全運転管理者の選任が必須となる事業所が、酒気帯び確認およびアルコール検知器使用の義務対象となります。
ただ、車両保有台数が5台未満の事業所でもアルコール検知を義務付けるなど、全社一括でルール化する企業も多いです。
ちなみに安全運転管理者の他にも、副安全運転管理者の選任が必須なケースもあります。
- ・車両保有台数が20台以上40台未満の場合は1人
- ・40台以上60台未満の場合は2人
- ・60台以上80台未満の場合は3人
といったように、20台追加ごとに1人ずつ選任しなければなりません。
以下の表で、自社が該当しているか、定義に基づいて選任されているかどうか確認してみましょう。
安全運転管理者の選任 | 副安全運転管理者の選任 | |
---|---|---|
自動車の使用台数 | 乗車定員11人以上の自動車1台、またはその他の自動車5台以上保持で1人必須 |
・20台以上40台未満保持で1人必須 |
※自動二輪車1台は0.5台として計算。50㏄以下の原動機付き自転車は含みません。
安全運転管理者と副安全運転管理者の選任時の注意点についても下記で確認しておきましょう。
安全運転管理者 | 副安全運転管理者 | |
---|---|---|
年齢 | 20歳以上(副安全管理者を置く場合は30歳以上) |
20歳以上 |
運転管理の実務経験 (いずれか一つに該当していること) |
運転管理経験2年以上(公安委員会の教習修了者は1年に短縮) |
運転管理経験1年以上又は 運転経験3年以上 |
欠格要件 |
■公安委員会の解任命令により解任されてから2年以内の者 |
|
■次の違反行為をして2年以内の者
|
||
■次の違反を下命・容認して2年以内の者
|
出典:大阪府警察「安全運転管理者制度とは」選任の基準一覧、資格要件一覧
アルコールチェックを怠った場合の罰則
2.アルコールチェックの運用方法
運転者
運転者は車を業務で使用する際、1日2回のチェックが必要となります。チェックをして終わりではなく、前述した通り、運転者は運転前後の状態を管理者に目視等で確認してもらう必要があります。
アルコールチェッカーは、機器に息を吹き込むだけで体内の残留アルコール濃度を数値化してくれる便利なツールです。内蔵されているセンサーや測定方法、測定結果の記録方法は機器によって違いがあります。
検知器について細かく知りたい方は「高性能な業務用アルコールチェッカーの選び方は?」のコラムからご確認ください。
管理者(安全運転管理者)
業務負担を減らすクラウド型の管理方法
アルコールチェック管理で発生する業務 |
---|
実際に管理するための管理表のレイアウトの作成 |
運転者からの検知報告の記録 |
記録簿を保管する場所の用意 |
記録簿が必要な際の確認作業 |
拠点毎での記録簿の管理(総務部では全拠点の記録簿を集めて保管) |
これらが、主に考えられる作業です。
列挙した内容だけでも今までの業務に著しく負担が増えることがわかります。
それでは紙で管理した場合と、クラウド一元管理でデータ管理をした場合に、実際に業務にかかる時間や使い勝手などはどちらが優れているでしょうか?
下記の表で確認していきましょう。
紙管理 | クラウド一元管理 | ||
---|---|---|---|
時間 | レイアウトの作成 |
〇 |
◎ |
記録簿の記入 |
×~△ |
◎ |
|
記録簿必要時の確認作業 |
× |
◎ |
|
使い勝手 | リスクの頻度 |
×~△ |
◎ |
管理 |
△ |
◎ |
紙での管理よりも、クラウドでのデータ管理の方が圧倒的に便利で負担を大幅に削減することがわかります。
クラウド一元管理型は、専用の管理画面で情報を一括管理し、クラウド上にデータが残り、インターネット接続環境があればどこからでも確認が容易になります。その上、画面に表示中のデータをExcel形式やCSV形式のデータに変換可能です。
また、今回の法改正の中には1年間の記録保存の義務があることからも、紙の管理は紛失のリスクもあり、永続的に続けていくことを考えてもあまりおすすめできません。
実際に管理していくとなると、社内で運用ルールを決めたとしても中々ルール通りに運用できない場面が出てくることは避けられません。
クラウド一元管理システムの大きな特徴は、
- ・出張や直行直帰にも対応可能
- ・日常的な管理も容易にしてくれる
- ・法改正による業務量の増加を抑えてくれる
ことです。
また、クラウド一元管理システムの中には、管理だけに留まらず、アルコールを検知するとメールなどでお知らせする便利な機能がついたものもあります。
このように、クラウド一元管理システムを導入する魅力はアルコールチェックの管理だけに留まりません。導入することで検知漏れを防ぐため、社員一人ひとりの飲酒に対する意識の向上、加えて会社のペーパーレス化の推進、ひいては取引先への印象改革にも繋がります。
アルコールチェッカー導入に役立つ補助金制度
アルコールチェックの導入に当たって補助金制度を利用できる場合があります。(※白ナンバー事業所は現在対象となる補助金制度はありません。)
公益社団法人全日本トラック協会では、貨物自動車運送事業者(トラック事業者等)における助成金制度を導入しています。助成金制度は、事業用車両の事業用車両の安全対策のひとつとして、安全装置等導入促進助成事業を行っています。
特にGマーク認定事業所がIT機器を活用した遠隔地で行う点呼に仕様する携帯型アルコール検知器を導入する場合、助成対象となります。対象装置ごとに機器取得価格の1/2(上限2万円)が助成されます。
Gマーク認定に関しては、過去記事『IT点呼とは|ルールや導入方法、運用方法を紹介』を参考にご覧ください。
参考:全日本トラック協会「安全装置等導入促進助成事業について」