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アルコールチェック義務化の概要|開始時期や運用方法、対象事業者を解説

道路交通法の改正が予定されており、白ナンバー社用車を保有する事業所におけるアルコールチェックの義務化が始まります。緑ナンバーのトラックやバスなどの事業者はすでに義務化されていますが、今回の法改正により、白ナンバーも対象となります。

アルコールチェック義務化が開始されると、以下のような悩みが出てきています。
「法令義務化により業務が増える」
「営業マンたちの記録簿の作成が大変」
「手書きで管理するのは困難」
「義務化されるものの、具体的に何をすればいいのかわからない」という声に対して、今回はアルコールチェック義務化の内容と推奨する運用方法などを解説していきます。

1.白ナンバー事業者を含むアルコールチェックの義務化に関して

警察官の後ろ姿(白ナンバー事業者を含むアルコールチェックの義務化に関して)

飲酒検査の義務化に関する道交法改正は、2011年5月1日に行われました。国土交通省は飲酒運転撲滅を目指し、トラックやバス、タクシーなどの運送事業者(緑ナンバー)に点呼時におけるアルコール検知器の使用を義務化しました。

2022年4月1日から施行された新たな法改正では、今まで対象とされていなかった白ナンバー事業者も義務化されています。

関連記事:『IT点呼とは|ルールや導入方法、運用方法を紹介

法改正によるアルコールチェック義務化の内容(延期事項あり)

今回の法改正で「道路交通法 施行規則第9条の安全運転管理者の業務」に内容が追加されました。
2022年4月1日から運転前後に対面での酒気帯び確認が必須となり、また2023年12月1日からは酒気帯び確認の際に、アルコール検知器の使用が必須になるというように段階的に厳格化しています。

確認記録の保存も義務付けられていますので、まずは内容についてしっかりと把握しておく必要があります。

2022年4月1日から施行開始

・運転前後の運転者の状態を目視等で確認することにより、運転者の酒気帯びの有無を確認すること(1日2回)
・酒気帯びの有無について記録し、記録を1年間保存すること

2023年12月1日から施行開始

・運転者の酒気帯びの有無の確認をアルコール検知器を用いて行うこと
・アルコール検知器を常時有効に保持すること

関連記事:『道路交通法改正に伴うアルコールチェック義務化と準備すべきこと

▼目視等で確認とは?

「目視等で確認」とは、酒気帯びの有無を運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子等で確認することを示します。原則、対面での確認となりますが、対面が難しい状況は多くの企業で発生する可能性が高いのではないでしょうか。例えば直行直帰や出張など、運転者が遠隔地にいる場合は、ビデオ通話を行う・電話をするなど対面と同視される確認が必須となります。

また、今後は目視での状態確認に加えて、アルコール検知器でのチェックが義務となりますので、直行直帰や出張の際はアルコール検知器を携行する必要があります。

▼記録しなければいけない内容

4月1日から紙やExcelデータ、クラウド上など、何かしらの方法で検知記録を残さなければいけません。
記録が必要な事項は8つありますので、確認していきましょう。

記録必須の8つの事項

確認者名(点呼執行者)

運転者名

運転者の業務に係る自動車の自動車登録番号又は識別できる記号、番号等

確認の日時

どのように確認したか(アルコール検知器の使用の有無・対面でのチェックでない場合は具体的な方法)

酒気帯びの有無

指示事項

その他必要な事項

※その他必要な事項については管轄の警察によって内容が異なることがありますので、管轄の警察署にご確認ください。

▼「アルコール検知器を常時有効に保持する」とは?

アルコール検知器の「常時有効に保持」とは、アルコール検知器が正常に作動し、故障がない状態で保持しておくことを指します。このため、アルコール検知器の製作者(メーカー)が定めた取扱説明書に基づいて適切に使用・管理する必要があります。適切な使用・管理とは、定期メンテナンスを行い、かつ日常的に故障の有無を確認することで、普段から携帯していなければならないという意味ではありません。

なお、検知器の使用回数の上限を超えたものや有効期限が過ぎたものは、有効な検知器とみなされないため注意が必要です。有効期限切れを防ぐために検知器のメンテナンス期限の管理もできるアルコールチェックシステムを導入すると未然に防ぐことができます。

また、使用するアルコール検知器は「国家公安委員会が定める」もので、「呼気中のアルコールを検知し、その有無又はその濃度を警告音、警告灯、数値等により示す機能を有する機器」と定められていますのでご注意ください。機器精度など性能上の要件は特段定められてはいません。

関連記事:『知っておくべきアルコールチェッカーの仕組みや違い

【白ナンバー事業者必見】法令義務化の対象範囲

続いて、対象となる企業を具体的に見ていきましょう。
実は、白ナンバーの車両を保有している全ての企業が対象というわけではありません。法人の規模による判断ではなく、事業所単位の車両保有数で判断されます。

具体的には、

  • ・乗車定員が11人以上の白ナンバー車1台以上を保有
  • ・白ナンバー車5台以上を保有している事業所

といった安全運転管理者の選任が必須となる事業所が、酒気帯び確認およびアルコール検知器使用の義務対象となります。

ただ、車両保有台数が5台未満の事業所でもアルコール検知を義務付けるなど、全社一括でルール化する企業も多いです。

ちなみに安全運転管理者の他にも、副安全運転管理者の選任が必須なケースもあります。

  • ・車両保有台数が20台以上40台未満の場合は1人
  • ・40台以上60台未満の場合は2人
  • ・60台以上80台未満の場合は3人

といったように、20台追加ごとに1人ずつ選任しなければなりません。

以下の表で、自社が該当しているか、定義に基づいて選任されているかどうか確認してみましょう。

安全運転管理者の選任 副安全運転管理者の選任
自動車の使用台数

乗車定員11人以上の自動車1台、またはその他の自動車5台以上保持で1人必須

・20台以上40台未満保持で1人必須
・以降20台追加毎に1人加算

※自動二輪車1台は0.5台として計算。50㏄以下の原動機付き自転車は含みません。



安全運転管理者と副安全運転管理者の選任時の注意点についても下記で確認しておきましょう。

安全運転管理者 副安全運転管理者
年齢

20歳以上(副安全管理者を置く場合は30歳以上)

20歳以上

運転管理の実務経験
(いずれか一つに該当していること)

運転管理経験2年以上(公安委員会の教習修了者は1年に短縮)
上記の者と同等の能力があると公安委員会が認定した者

運転管理経験1年以上又は 運転経験3年以上

欠格要件

■公安委員会の解任命令により解任されてから2年以内の者

■次の違反行為をして2年以内の者

  • ・ひき逃げ
  • ・酒酔い運転、酒気帯び運転、無免許運転、麻薬等運転
  • ・酒酔い・酒気帯び運転に関し車両・酒類を提供する行為
  • ・酒酔い・酒気帯び運転車両へ同乗する行為
  • ・自動車使用制限命令違反、妨害運転

■次の違反を下命・容認して2年以内の者

  • ・酒酔い・酒気帯び運転、麻薬等運転、過労運転
  • ・無免許・無資格運転、最高速度違反運転、積載制限違反運転、放置駐車違反

出典:大阪府警察「安全運転管理者制度とは」選任の基準一覧、資格要件一覧

アルコールチェックを怠った場合の罰則

パトカーが走る写真(アルコールチェックを怠った場合の罰則)

「義務なのはわかるけれど、忙しくて確認なんてやっていられないよ」といった声も多くあります。では、実際にアルコールチェックを怠ったらどうなるのでしょうか?

アルコールチェックを実施しなかったことによる直接的な罰則はありません。

しかし、従業員がアルコールチェックを怠り、酒気帯び運転をした場合には道路交通法違反になります。違反になるのは運転者だけではなく、安全運転管理者や違反に使用した自動車にも及ぶ可能性があります。

何より、罰則がなくとも社会の一員としての責任を持たなければなりません。法改正のためだけではなく、飲酒運転撲滅への一層のコンプライアンス強化が急がれます。

関連記事:『アルコールチェッカー義務化と飲酒や酒気帯びのコト

また、仮に飲酒運転で事故を起こしてしまった場合、運転者自身はもちろん、企業側の社会的責任を問われることになります。飲酒運転は企業イメージの低下に加え、取引先からの信頼を失い事業存続を揺るがす可能性もある悪質な行為です。そのため社員一人ひとりに安全運転の意識を持たせることが大切です。

法令に則りながら、アルコールチェックの漏れが起きない社内ルールを構築するなど、確実にアルコールチェックを行い違反運転の発生を防止しましょう。

2.アルコールチェックの運用方法

アルコールチェッカー(アルコールチェックの運用方法)

「白ナンバーのアルコールチェックが義務化されることは理解できましたが、実際にどのように運用すればいいのかさっぱりわからない」という声をいただきます。
それでは、運転者が行うこと、管理者が行うことについてそれぞれ記載していきます。

運転者

運転者は車を業務で使用する際、1日2回のチェックが必要となります。チェックをして終わりではなく、前述した通り、運転者は運転前後の状態を管理者に目視等で確認してもらう必要があります。

アルコールチェッカーは、機器に息を吹き込むだけで体内の残留アルコール濃度を数値化してくれる便利なツールです。内蔵されているセンサーや測定方法、測定結果の記録方法は機器によって違いがあります。
検知器について細かく知りたい方は「高性能な業務用アルコールチェッカーの選び方は?」のコラムからご確認ください。

管理者(安全運転管理者)

電話をする人(管理者(安全運転管理者))
管理者が行うことは次の3点です。

  • ・導入した検知器の管理
  • ・目視等の確認
  • ・記録必須項目の記録簿の作成

「法改正前にアルコール検知器を導入できたから、検知はドライバーに任せて、管理者側は何もしなくても大丈夫だろう」という認識をお持ちの管理者もいらっしゃるかもしれません。

しかし、アルコールチェッカーは半永久的に使用できる製品ではありません。検知器ごとに使用回数の上限や期限が定められており、定期的なメンテナンスが必須となります。また、常時有効に保持するために、故障していなくても定期的に交換する必要があります。もし期限切れで使用していた場合、法令違反になりますのでご注意ください。

こうした法令に順応するためにおすすめなのが、買い切り型ではなく定期的なメンテナンスが付帯するアルコール検知システムです。アフターサービスが充実したアルコール検知システムを導入することで、日常業務の負担を減らし、交換忘れによる期限切れを防ぐことが可能です。

それから、毎日の管理記録を作成するのも中々骨が折れる作業です。「なるべく楽に管理して、業務の効率化を図りたい。日常業務の負担にはしたくない」と思われる方も多いでしょう。

次の項目では、より簡単で効率的な管理方法について紹介していきます。

業務負担を減らすクラウド型の管理方法

資料を確認する人(業務負担を減らす管理方法)

管理の仕方については、事業所毎に細かい違いはあるかと思いますが、紙管理とデータ管理の2つに分かれます。

おすすめの方法は、データ管理です。アルコール検知器を導入する際は、データ管理の中でもクラウドで一元管理できるタイプにしていただくと最も業務効率が上がります。
インターネット環境がある場所であればどこからでもログイン可能で、管理画面で検知データの一括管理が可能です。

「導入する手間や時間を考えれば、紙での管理とそれほど変わらないのでは?」と思われる方も多いかと思います。
それでは、実際に運用していく上で一体どのような業務が発生するでしょうか。

アルコールチェック管理で発生する業務

実際に管理するための管理表のレイアウトの作成

運転者からの検知報告の記録

記録簿を保管する場所の用意

記録簿が必要な際の確認作業

拠点毎での記録簿の管理(総務部では全拠点の記録簿を集めて保管)

これらが、主に考えられる作業です。
列挙した内容だけでも今までの業務に著しく負担が増えることがわかります。

それでは紙で管理した場合と、クラウド一元管理でデータ管理をした場合に、実際に業務にかかる時間や使い勝手などはどちらが優れているでしょうか?
下記の表で確認していきましょう。

紙管理 クラウド一元管理
時間

レイアウトの作成



手書きやExcelなど



管理画面上に自動生成

記録簿の記入

×~△

運転者の報告の度に大量の項目を記録



検知データをクラウドへ自動送信

記録簿必要時の確認作業

×

必要な情報の抽出ができず目視で探す



絞り込み検索で瞬時にデータ表示が可能
出力もボタンのクリックのみで可能

使い勝手

リスクの頻度

×~△

記載ミス・書類紛失のリスク



書類紛失や記載ミスの起きないシステム

管理



各拠点の一括管理が困難
保管場所の選定が必要



拠点数を問わず管理画面で一括管理が可能

紙での管理よりも、クラウドでのデータ管理の方が圧倒的に便利で負担を大幅に削減することがわかります。

クラウド一元管理型は、専用の管理画面で情報を一括管理し、クラウド上にデータが残り、インターネット接続環境があればどこからでも確認が容易になります。その上、画面に表示中のデータをExcel形式やCSV形式のデータに変換可能です。

また、今回の法改正の中には1年間の記録保存の義務があることからも、紙の管理は紛失のリスクもあり、永続的に続けていくことを考えてもあまりおすすめできません。

実際に管理していくとなると、社内で運用ルールを決めたとしても中々ルール通りに運用できない場面が出てくることは避けられません。

クラウド一元管理システムの大きな特徴は、

  • ・出張や直行直帰にも対応可能
  • ・日常的な管理も容易にしてくれる
  • ・法改正による業務量の増加を抑えてくれる

ことです。

また、クラウド一元管理システムの中には、管理だけに留まらず、アルコールを検知するとメールなどでお知らせする便利な機能がついたものもあります。
このように、クラウド一元管理システムを導入する魅力はアルコールチェックの管理だけに留まりません。導入することで検知漏れを防ぐため、社員一人ひとりの飲酒に対する意識の向上、加えて会社のペーパーレス化の推進、ひいては取引先への印象改革にも繋がります。

アルコールチェッカー導入に役立つ補助金制度

アルコールチェックの導入に当たって補助金制度を利用できる場合があります。(※白ナンバー事業所は現在対象となる補助金制度はありません。)

公益社団法人全日本トラック協会では、貨物自動車運送事業者(トラック事業者等)における助成金制度を導入しています。助成金制度は、事業用車両の事業用車両の安全対策のひとつとして、安全装置等導入促進助成事業を行っています。

特にGマーク認定事業所がIT機器を活用した遠隔地で行う点呼に仕様する携帯型アルコール検知器を導入する場合、助成対象となります。対象装置ごとに機器取得価格の1/2(上限2万円)が助成されます。

Gマーク認定に関しては、過去記事『IT点呼とは|ルールや導入方法、運用方法を紹介』を参考にご覧ください。

参考:全日本トラック協会「安全装置等導入促進助成事業について

株式会社パイ・アール ロゴ

この記事の執筆者

株式会社パイ・アールPAI-R Co., Ltd.

安心・安全な交通社会の実現へ向けてさまざまな課題や解決を探求し、アルコールチェックをはじめドライバーの安全管理や業務管理にまつわるさまざまなお役立ち情報を発信しています。

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