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運行管理者とは|業務内容や必要資格、安全運転管理者との違いを紹介

「正直、運行管理者がどんな仕事をしているかわからない」
「安全運転管理者と同じ人だと思う」
など、運行管理者についてあまり詳しくない方もいるかと思います。

今回の記事では、

  • ・運行管理者と安全運転管理者の違い
  • ・運行管理者の役割と必要性
  • ・運行管理者になるための必要な講習

について説明します。運行管理者に関する知識が不十分な方も、この機会に詳しく学んでみてください。

1.運行管理者とは

IMPORTANT

運行管理者とは、ドライバーの安全や事故防止などの管理を実施する担当者のことをいいます。

運行管理者になるには、国家資格である運行管理者試験に合格する必要があります。運行管理者に選任された場合は、ドライバーの疲労や健康状態を把握し、安全な運行を実現するためにドライバーの指導を行いましょう。

具体的な業務内容に関しては後述します。

運行管理者の必要性

運行管理者は、事故防止に重要な役割を担っています。運行管理者が不在の運送業では以下の問題が生じることがあります。

  • ・健康管理の不備
  • ・休憩時間や休日が不足した過密な運行スケジュール
  • ・過労による事故リスクの増加

残念ながら、適切な運行管理が行われていない事業所も少なからず存在します。ドライバーによる交通事故は、主に運行管理の不備が原因となっています。そのため、運送業において運行管理者は不可欠です。

参考:生涯学習のユーキャン「運行管理者とは?業務内容から資格取得に必要な条件・選任方法まで解説

2.運行管理者の業務内容

ノートパソコンでタイピングをする様子(「運行管理者の業務内容」詳細は以下)

運行管理者は道路運送法、および貨物自動車運送事業法に基づいて業務を行う必要があります。具体的な業務内容は多岐に渡り、大きく5つに分けられます。

①事業用自動車の運転者の業務割作成

事業者が定めた勤務時間・乗務時間の範囲内で乗務割を作成し、乗務割にしたがって、運転者を事業用自動車に乗務させなければいけません。無理のない運行計画を作成することによって、運転者と運転車両の状態を良好に保ち、過労運転や事故を防ぎます。

②休憩・睡眠施設の保守管理

運行管理者には、休憩施設や睡眠・仮眠施設の状態が常に良好であるよう計画的に管理する義務があります。休憩施設や睡眠施設を適切に管理することで、運転者の体力面での補助ができ、事故や過労運転の発生を防ぎます。

③運転者の指導監督

運行管理者は運転者に対する適切な指導監督を行わなければいけません。運行管理者が指導監督を行う理由として、運転者が順守しなければいけないルールや、安全を確保するために必要な運転技能・知識を運転者に習得させる必要があるからです。

④点呼による運転者の疲労・健康状態把握

運行管理者は点呼を取ることで運転者の疲労状態や健康状態を把握しなければいけません。健康状態の把握には、体温計測やアルコールチェックが必要になります。健康状態を把握した上で、当日の業務を割り振る必要があります。
また、運転者個人の管理を行うことでより効率的な運送に繋げることができます。

⑤安全運行の指示

運行管理者は運転者に対して安全運行の指示を出す必要があります。また安全運行に必要なドライバーの勤務時間を設定し、運行管理のための指揮命令系統を明確にする必要もあります。

参考:国土交通省「自動車運送事業の運行管理者になるには

3.安全運転管理者との違い

メモを取る様子(「安全運転管理者との違い」詳細は以下)

ここでは、運行管理者と安全運転管理者との違いについて説明していきます。

役割の違い

運行管理者は緑ナンバー車(事業用自動車)の運行管理であるのに対して、安全運転管理者は白ナンバー車の運行管理を行います。 緑ナンバーと白ナンバーの詳しい違いについては、「緑ナンバーと白ナンバーの違い」を参考にしてください。

罰則の違い

安全運転管理者を選任しなかった場合は、令和4年10月1日からの道路交通法の改正により50万円以下の罰金、選任しても届出しなかった場合は5万円以下の罰金になります。

(以前は選任しなかった場合は5万円以下の罰金、選任しても届出しなかった場合は2万円以下の罰金でした)

また、運送業を行う営業所に運行管理者が選任されていなかった場合の罰則は「30日間の事業停止処分」になります。さらに、事業停止処分を受けた事業者が、3年以内に同一の違反をした場合は、許可が取り消されます。加えて、急な退職などで運行管理者不在の状態が発生した場合であっても、最長1ヵ月を超えると処分基準に抵触してしまうので注意が必要です。

上記の通り、安全運転管理者を選任しなかった場合は金額として少なくない罰則が設けられています。また、運行管理者を選任しなかった場合は事業停止により利益を生み出すことができなくなるので、企業存続に関わる重い罰則だと言えます。

参考:警察庁「安全運転管理者の業務の拡充等

4.運行管理者になる方法

ここでは、運行管理者になるために必要な条件や資格について紹介します。

一定の条件を満たす

運行管理の実務経験が5年以上あり、運行管理の実務の間に運行管理について基礎講習や一般講習を5回以上受講していて、そのうち少なくとも1回は基礎講習を受講している必要があります。ちなみに講習は同じ年に複数回受講しても、1回とみなされるので注意してください。

実務経験と受講修了両方の条件をクリアしていれば、運行管理者の資格を取得できます。下記のリンクから、運行管理者試験の申込も可能ですので、実際に申し込まれる方はぜひご活用ください。

参考:「公益財団法人 運行管理者試験センター

所定の実務経験と講習受講

運行管理者になるための試験を受験する場合、下記2つの受験資格のうちいずれかを満たしている必要があります。

  • ・実務経験が1年以上
  • ・実務経験がない場合、国土交通大臣が認定する講習実施期間で基礎講習を終了している

実務経験として認められるのは、貨物軽自動車運送事業を除いた自動車運送事業車の事業用自動車、又は特定第二種貨物利用運送事業者(緑ナンバー事業者)の事業用自動車の運行管理経験です。

参考:国土交通省「自動車運送事業の運行管理者になるには

5.運行管理者の資格を取る3つのメリット

運行管理者の資格を取るメリットは主に下記の3つがあります。

  • ①運行管理者として長期的に働ける
  • ②転職で有利になる
  • ③昇進・昇給につながる可能性がある

①運行管理者として長期的に働ける

トラック、バス、タクシー等を運転し続けるドライバーの職務は常に体力と神経を酷使することになりますが、運行管理者は内勤の仕事がメインとなります。体力面や精神的な面からも長期的に働くことができる仕事です。

②転職で有利になる

事業用自動車を保有している営業所は必ず運行管理者を配置しなければならないため、即戦力として採用されやすいです。貨物トラックの運送会社から、タクシーやバスなどの他の業界に転職することも可能です。

③昇進・昇給につながる可能性がある

運送業では運行管理者の配置が義務付けられているため、会社によっては昇給の条件や昇進のために資格取得が必須となっている場合もあります。資格手当として数千円から数万円が支給される会社もあります。

6.運行管理者が抑えておきたい3つのこと

運行管理者を目指す方や、運行管理者の配置義務がある事業所の方は、トラブルを防ぐためにも必ず下記の3つは抑えておきましょう。

  • ①ドライバーとの兼任が可能
  • ②定期的に講習を受ける必要あり
  • ③アルコールチェッカーの導入が必須

①ドライバーとの兼任が可能

かつて運行管理者は営業所に常勤する人でなければいけなかったため、ドライバーを兼ねることは不可能でした。現在では運行管理者がトラックの運転も兼務できるようになりましたが、セルフ点呼ができないため、別の運行管理者や運行管理補助者がいる場合に兼務することが可能です。

運行管理者の人数や運行管理補助者の条件については下記を参考にしてください。

運行管理者は1つの営業所に1名以上が必要です。保有する緑ナンバー車の数に応じて、最低人数が変わります。

保有する事業用自動車の数運行管理者の最低人数
29両まで1人
30~59両2人
60両~89両3人

※以降保有台数が30台追加毎に1人ずつ人数が追加される

運行管理補助者になるためには下記2つのいずれかを満たす必要があります。

  • ・「すでに運行管理者の資格を保有」している者
  • ・「運行管理者の基礎講習」を受講している者

ただし、別の運行管理者や運行管理補助者がいない場合は運行管理者の兼務ができないので注意しましょう。

②定期的に講習を受ける必要あり

運行管理者に選任されている人は、2年毎に自動車事故対策機構(NASVA)が主催する講習の受講が義務付けられています。また、新たに選任した運行管理者には、原則選任した年度内に一般講習を受講させる必要があります。

さらに、万が一事故を引き起こした運行管理者においては、事故の再発防止を図るための知識の習得を目的とする特別講習も受講する必要があります。

参考:国土交通省 北陸信越運輸局 石川運輸支局「運行管理者の講習について

③アルコールチェッカーの導入が必須

2011年5月1日から、運送事業者は運転者に対する点呼でアルコール検知器を使用し、酒気帯びの有無を確認する必要があります。そのため、運行管理者がいる運送事業所では、アルコールチェッカーを使用した検知と点呼記録簿の作成が必須となります。監査時には点呼記録簿の提出が求められることもあります。

アルコールチェッカーを導入する際には、点呼記録簿も自動で作成できるアルコールチェックシステムがおすすめです。これにより、運転者と運行管理者の手間を軽減できます。

5.まとめ

下記が今回の記事のまとめです。

  • ・運行管理者はドライバーの健康状態の把握や業務割を作成し、交通事故をなくすために必要な国家資格
  • ・運行管理者は緑ナンバー保有の事業所に選任が必須で、安全運転管理者は白ナンバー車を保有する事業所に選任が必須
  • ・状況次第で運行管理者とドライバーの兼任が可能

もしこれから事業を始められる方や今まで漠然としか理解できていなかった方は、本記事を参考にして運行管理者に対する理解を深めましょう。

株式会社パイ・アール ロゴ

この記事の執筆者

株式会社パイ・アールPAI-R Co., Ltd.

安心・安全な交通社会の実現へ向けてさまざまな課題や解決を探求し、アルコールチェックをはじめドライバーの安全管理や業務管理にまつわるさまざまなお役立ち情報を発信しています。

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