副安全運転管理者は必要?資格要件や業務内容について徹底解説

業務上、一定台数以上の車両(自家用自動車)を利用する事業者はその本拠ごとに安全運転管理者を選定しなければいけません。
安全運転管理者は企業において社員1人1人の安全運転意識を向上させ、交通事故の件数を減らすために欠かせない存在です。

さらに車両の台数が多くなると「副安全運転管理者」の選任も必要なことはご存じでしょうか?

  • ・自社が副安全運転管理者選任の対象となるのかわからない
  • ・副安全運転管理者の資格要件がわからない
  • ・どのように申請すれば良いのかわからない

といった疑問を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

副安全運転管理者の選任が必要な条件や資格要件、選任する人数などについても細かく定められておりますので、自社が当てはまるかどうかこの記事で確認し、万が一選任できていない場合は迅速に対応しましょう。

1.副安全運転管理者とは?

副安全運転管理者とは、事業で使用される車両の安全管理を担う重要な役割の1つです。特に多くの車両を抱える企業では、安全運転管理者だけでは業務の負担が大きくなりがちです。

具体的には、車両を5台以上(定員11人以上の車両は1台以上)保有する企業には安全運転管理者の選任が義務付けられていますが、使用台数が20台以上になると副安全運転管理者の選任も必要となります。

副安全運転管理者は自動車の台数に応じて人数も複数人選任する必要があり、安全運転管理者の業務の補助や代行を行います。

本章では、副安全運転管理者について以下の4つの項目を解説します。

  • ・副安全運転管理者の選任義務について
  • ・副安全運転管理者を選任する人数の条件について
  • ・副安全運転管理者の資格要件について
  • ・補助者との違いについて

業務内容自体は安全運転管理者と基本的に違いはありませんが、安全運転管理者が不在時に業務を代行するなど責任をもって職務に取り組む必要がありますので、しっかり内容を把握しましょう。

副安全運転管理者の選任義務について

自動車の安全な運転を確保する全般的な責任は事業主にありますが、実際のところ事業主の業務は多種多様に渡っており、その責任のすべてを果たすのは難しいため、その代務者として使用の本拠ごとに安全運転管理者、副安全運転管理者をそれぞれ選任する必要があります。具体的な選任の流れとしては、担当者の選定後に公安委員会に届出を行います。

安全運転管理者、副安全運転管理者それぞれに選任基準が設けられており、定められているすべての要件を満たす必要があります。選任基準は道路交通法施行規則第9条の8に定められています。

副安全運転管理者を選任する人数の条件について

安全運転管理者は事業所ごとに必ず1人となっており、保有している車両台数によって人数が増えることがありませんが、副安全運転管理者は保有台数によって選任人数が異なります。
詳しくは下記の表のとおりですが、20台増えるごとに1名選任する必要があるため、注意が必要です。
※なお、自動二輪車(原付を除く)は1台を0.5台としてカウントします

車両台数副安全運転管理者の人数
19台まで不要
20台~39台まで1名
40台~59台まで2名
50台~79台まで3名
以降、20台ごとに1名ずつ追加

参考:警視庁「安全運転管理者等法定講習|1 安全運転管理者等の選任

副安全運転管理者の資格要件について

副安全運転管理者にはいくつかの資格要件が定められています。具体的には下記のとおりです。

  • 1. 20歳以上の者であること
  • 2. 自動車の運転の管理に関し1年以上の実務の経験を有する者又は自動車の運転の経験期間が3年以上の者又は自動車の運転の管理に関しこれらの者と同等以上の能力を有すると公安委員会が認定した者で、次のいずれにも該当しないものであること 以下、「安全運転管理者の資格要件」の2の1、2と同じ
    • 1. 過去2年以内に公安委員会の安全運転管理者等の解任命令(道路交通法第74条の3)を受けたことのある者
    • 2. 過去2年以内に次の違反行為をしたことがある者
      • ・ひき逃げ
      • ・酒酔い・酒気帯び運転
      • ・飲酒運転に関し車両などを提供する行為、酒類を提供する行為及び依頼・要求して同乗する行為
      • ・麻薬等運転
      • ・無免許運転、無免許運転に関し自動車等を提供する行為及び要求・依頼して同乗する行為
      • ・次の交通違反の下命・容認
        酒酔い・酒気帯び運転、麻薬等運転、過労運転、無免許・無資格運転、最高速度違反運転、積載制限違反運転、放置駐車違反
      • ・自動車使用制限命令違反
      • ・妨害運転
引用元:千葉県警察「安全運転管理者の選任|安全運転管理者の資格要件(規則第9条の9第1項)

補助者との違いについて

副安全運転管理者は実際には安全運転管理者とほとんど同じ業務を行い、公安委員会への届出が必要ですが、一方で補助者とは安全運転管理者や副安全運転管理者を「補助する人」をさします。

公安委員会への届出は不要ですが、万が一酒気帯び確認の際に運転者からアルコールが検出された場合などには適切な判断、指示ができる人である必要があります。
補助者が担う役割や業務範囲については社内で定めた上で周知しておく必要があります。

2.副安全運転管理者の届け出について

副安全運転管理者を選任・改任・解任した場合には変更等が生じた15日以内に公安委員会への届け出が必要です。
本章では、届出の方法や届出の際に必要な書類などを解説していきます。

  • ・届け出をしない場合には罰則がある
  • ・本社と支店がある場合は、支店で出す必要がある
  • ・届け出先は?
  • ・届け出に必要な書類について

実際に届出を行う際に抜け漏れなどがないように確認してください。

届け出をしない場合には罰則がある

令和4年の道路交通法改正に伴って、令和4年10月1日より安全運転管理者の選任・解任・届出の未提出などに関して、安全運転管理者の選任義務違反に対する罰則が厳罰化されました。

具体的には、安全運転管理者や副安全運転管理者を選任しなかった場合に「50万円以下の罰金」が科されます。改正前は「5万円以下の罰金」だったのでその罰金は大きく引き上げられ、是正措置命令の罰則も追加されています。

また、安全運転管理者や副安全運転管理者の選任・解任を行った際には15日以内に管轄の公安委員会への届出が必要となりますが、この届出を怠った際には選任解任届出義務違反となり「5万円以下の罰金」が科されます。

本社と支店がある場合は、支店で出す必要がある

保有車両台数が20台以上の場合、副安全運転管理者の選任が必要ですが台数の選定は「自動車の使用の本拠(本社、支店、営業所等)ごと」に行いますので本社が20台以上保有していても支店で20台以下の場合は支店での副安全運転管理者の選任の必要はありません。

ただし本社でも20台以上、支店でも20台以上となった場合、本社・支店それぞれで安全運転管理者・副安全運転管理者両方の選任が必要となりますので注意が必要です。

届け出先はどこ?

安全運転管理者または副安全運転管理者を選任・解任等した場合には、15日以内に使用の本拠の位置を管轄する警察署を通じて、公安委員会への届出が必要となります。

届け出に必要な書類について

副安全運転管理者選任の届出時に主に必要な書類は以下のとおりです。

  • ・副安全運転管理者に関する届出書 1通
  • ・運転記録証明書 1通
  • ・その他必要な書類(住民票の写し、運転免許証の写し、安全運転管理経歴証明書など)※各都道府県警察による

参考:警視庁「安全運転管理者」、警察庁「警察行政手続サイト道路交通法関係 届出

3.安全運転管理者等法定講習を受ける必要がある

安全運転管理者講習とは公安委員会が定期的に実施している講習のことで、安全運転管理者・副安全運転管理者は年に1回は必ず受講しなければなりません。
安全運転管理者の届出をしたら公安委員会より指定の講習日の1か月前頃、届出をした本拠に以下の2点が送られてきます。

  • ・安全運転管理者講習受講通知書
  • ・手数料の納付書

日程や申し込み方法を確認し手数料を事前に納付の上、申し込みを行います。当日は必要書類を会場に持参し受講します。

受講しなかったからといって罰則があるわけではありませんが、法改正に関する重要な情報を聞き逃し、法令順守できなかった場合には罰則対象となる可能性もありますので、必ず受講するようにしましょう。
細かい内容は以下の通りです。

■講習手数料
・安全運転管理者 4,500円
・副安全運転管理者 3,000円
■受講の際に持参する持ち物
・講習通知書
・安全運転管理者証
・講習手数料
・身分証明書
・筆記用具

代理受講は認められていませんので、必ず本人が受講する必要があります。本人であることが確認できないと受講できない可能性もありますので身分証明書などの持参が必要です。

開催日程については各都道府県の警察本部のホームページなどから確認ができます。地域によってはここ数年コロナ感染対策として、オンライン受講が可能な場合もありますので確認してください。
講習時間は安全運転管理者で6時間以上~10時間以下、副安全運転管理者で4時間以上~8時間以下と定められています。

参考:警視庁「安全運転管理者等法定講習

4.副安全運転管理者の9つの業務内容について

副安全運転管理者の業務は基本的に安全運転管理者と同じです。
細かく分けると9つにもおよびますので、それぞれ確認した上で漏れなく対応するようにしましょう。

1.運転者の状況把握

運転者の運転技術や知識、道路交通法などの法令を順守できているか把握します。

2.運行計画の作成

安全運転確保のための運行計画を作成します。

3.交代要員の配置

夜間運転や長距離運転など、疲労により安全運転できない恐れがあるためあらかじめ交代要員を配置しておきます。

4.異常気象時などの安全確保の措置

異常気象や荒天などで安全運転の確保が難しいと予想される場合は、運転者に対し適切な指示を出し安全確保のための措置を講じます。

5.安全運転の指示

従業員に点呼を実施し、運転前の自動車点検状況の確認、運転者の健康状態の確認などを確認します。
あわせて安全運転のために必要な指示を出します。

6.運転前後の酒気帯び確認

運転前後には運転者の顔色、声色等を確認し酒気を帯びていないか確認します。(令和4年4月1日追加)
あわせてアルコールチェッカーも使用しアルコール数値を確認します。(令和5年12月1日追加)

7.酒気帯び確認の記録・保存

6で確認した内容を記録します。記録は1年間の保存が必要で、記録項目は全8項目にもおよびます。

8.運転日誌の記録

運転の開始・終了時刻、総運転距離などを記録する運転日誌を備え付けて運転者に記録させます。
場合によっては行き先や給油量などもあわせて記載します。

9.運転者に対する指導

その他、運転者に対し交通安全教育指針に基づく教育や運転に関する技能・知識、安全運転を確保するために必要な事項を指導します。

5.2023年12月よりアルコール検知器を使用の義務化を開始

2021年6月に千葉県で起きた飲酒事故を受けて、道路交通法が改正されました。
2022年4月に業務用車両の運転前後に酒気帯びの確認が義務化され、2023年12月には確認の際にアルコール検知器を使用することが義務化されています。

具体的な確認方法や記録内容についても定められ、安全運転管理者はアルコールチェック時の立ち合いや顔色・声色等の確認、検知結果の1年間の記録保存が求められるようになりました。

また使用するアルコール検知器は国家公安委員会が定めるものであること、常時有効に保持しておくことも求められています。

「常時有効に保持」とはアルコール検知器が故障がない状態で保持しておくことをいい、定期的にアルコールにきちんと反応するかどうか、電源が入るかどうかなどの確認が必要となります。
業務負担も責任もより大きくなり、副安全運転管理者の存在もより大きくなっていることでしょう。

関連記事:『アルコールチェック義務化の最新情報|日程や対象者、対応すべきことを解説

6.まとめ

この記事では副安全運転管理者の選任義務、資格要件、届出の方法などについて詳しく解説しました。安全運転管理者は選任できていたが、副安全運転管理者の選任が漏れていた、という企業様や40台以上保有しているのに1名しか選任できていなかった、という企業様はいらっしゃいませんでしょうか?

2022年からは運転者の酒気帯び確認も追加され、安全運転管理者・副安全運転管理者の業務内容はさらに多岐にわたってきています。

あらためて各支店・営業所の選任状況を見直し、必要に応じて補助者も選任しましょう。
万が一対応できていなかった場合は迅速に対応するようにし、社内の安全運転確保に努めてください。

株式会社パイ・アール ロゴ

この記事の執筆者

株式会社パイ・アールPAI-R Co., Ltd.

安心・安全な交通社会の実現へ向けてさまざまな課題や解決を探求し、アルコールチェックをはじめドライバーの安全管理や業務管理にまつわるさまざまなお役立ち情報を発信しています。

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