安全運転管理者によるアルコールチェック|義務化された内容や運用方法、罰則について解説

2022年4月1日から国土交通省の定める法律「道路交通法 施行規則第9条の安全運転管理者の業務」に内容が追加され、アルコールチェックの義務化が始まっています。また、今後はアルコールチェックの際にアルコールチェッカーを用いることも義務化される予定です。

そもそもアルコールチェックの運用を実施する「安全運転管理者」について、把握できていない方もいるのではないでしょうか?そこで今回は、
・安全運転管理者の概要
・アルコールチェックの義務化内容
・アルコールチェックに関する罰則
などについて紹介します。

1.安全運転管理者とは

商用車の駐車画像(安全運転管理者とは)

安全運転管理者とは、事業用自動車の安全運転と運行に必要な指導や運行計画、運転日誌管理業務を行う人のことを指します。安全運転管理者は、白ナンバー車5台以上を保有している事業所、または乗車定員が11人以上の白ナンバー車1台以上を保有している事業所で選任が必須とされています。

また、安全運転管理者だけでなく、副安全運転管理者が必要な事業所もあります。副安全運転管理者とは、自動車を20台以上40台未満保持している場合に選任が必須となり、20台追加毎に1人加算する必要があります。

1-1 安全運転管理者に必要な資格・要件

安全運転管理者は、下記2つの資格・要件を満たす必要があります。

  • ・年齢が20歳以上であること(副安全運転管理者を置く必要がある場合、安全運転管理者の年齢は30歳)
  • ・運転管理の実務経験が2年以上あること。または実務経験が2年未満ではあるが、公安委員会の認定を受けていること

※副安全運転管理者を置く場合、安全運転管理者は30歳以上で自動車の管理経験2年以上の方から選任が可能です。

また、上記2つを満たしているだけではなく、欠格要件に該当していた場合は安全運転管理者として任命することができませんので、ご注意ください。欠格要件に関しては下記の表に記載しています。

  安全運転管理者 副安全運転管理者
年齢

20歳以上(副安全運転管理者を置く場合は30歳以上)

20歳以上

運転管理者の実務経験
(いずれかに該当する者)
  • 1.運転管理実務経験2年以上
  • 2.公安委員会の教習修了者は運転管理実務経験1年以上
  • 3.公安委員会が認定した者
  • 1.運転管理実務経験1年以上
  • 2.運転経験3年以上
  • 3.公安委員会が認定した者
欠格要件
  • ・公安委員会の解任命令により解任されてから2年以内の者
  • ・次の違反行為をして2年以内の者
    • ・ひき逃げ
    • ・酒酔い運転、酒気帯び運転、無免許運転、麻薬等運転
    • ・酒酔い・酒気帯び運転に関し車両・酒類を提供する行為
    • ・酒酔い・酒気帯び運転車両へ同乗する行為
    • ・自動車使用制限命令違反、妨害運転
  • ・次の違反を下命・容認して 2年以内の者
    • ・酒酔い・酒気帯び運転、麻薬等運転、過労運転
    • ・無免許・無資格運転、最高速度違反運転、積載制限違反運転、放置駐車違反

参考:大阪府警察HP

1-2 安全運転管理者の業務内容

安全運転管理者の業務については、道路交通法施行規則第9条の10にて定められています。
具体的には下記の9つです。

安全運転管理者の業務内容

運転者の状況把握

運行計画の作成

交代要員の配置

異常気象時等の安全確保の措置

安全運転の指示

アルコール検知器を用いた運転前後の酒気帯び確認

アルコールチェックの1年間の記録保存・アルコール検知器の常時有効に保持

運転日誌の記録

運転者に対する指導

参考:e-Govポータル 道路交通法施行規則

2.アルコールチェック義務化の概要

手からクエスチョンマークがあふれる画像(アルコールチェック義務化の概要)

アルコールチェックが義務化されたことで、安全運転管理者の業務の負担が増えたことは上記でご理解いただけたと思います。そもそも、なぜアルコールチェックが義務化されたのでしょうか?
ここでは、アルコールチェックが義務化された背景や義務化の概要について紹介します。

2-1 アルコールチェックが義務化された背景

2021年6月28日に千葉県八街市で児童の列にトラックが突っ込み、男女5人が死傷する事故が発生しました。そのトラックの運転手は飲酒運転をしており、運転していたトラックが白ナンバー車であり、アルコールチェックが義務化されていなかったことが今回の法改正の背景にあります。

関連記事:『アルコールチェック義務化の概要|対象者から運用方法、補助金まで解説

2-2 アルコールチェック義務化の対象事業所

ハイヤー、タクシー、バス、トラックなど、運賃をもらって人や他社の物品を運ぶ「緑ナンバー」の自動車を保有する事業所は、2011年5月1日からすでにアルコールチェックが義務化されています。
(※「旅客自動車運用事業運輸規則」「貨物自動車運送事業輸送安全規則」の改正により)

また、2022年4月1日からは、白ナンバー車を保有する企業の中で安全運転管理者の配置が必要な事業所も対象になります。乗車定員が11名以上の自動車を1台以上保有している企業、または乗車定員に限らず5台以上の自動車を使用している場合、義務化の対象です。

2-3 アルコールチェックの義務化のスケジュール

今回の道路交通法改正による、白ナンバー保有事業所でのアルコールチェックの義務化に関しては、2022年4月1日からスタートしている改正と、今後施行が確定している義務化の2種類あります。

①2022年4月1日から施行開始した改正内容

  • ・運転前後の運転者の状態を目視等で確認し、運転者の酒気帯びの有無を確認すること
  • ・確認した結果を1年間記録・保存すること

②今後施行予定の義務化の内容

  • ・正常に作動し、故障がない状態のアルコール検知器を、常時保持しておくこと

特に、メンテナンスをせずに利用を続けると、故障扱いとなり意図せず有効ではない検知器を所有することになるので、注意が必要です。

2022年10月1日からの追加義務化施策が延期された理由

2022年10月1日から追加義務施策として予定されていたアルコールチェッカーの義務化は、主にアルコールチェッカーの供給不足による検知器の保持が困難という理由で、延期になりました。

一斉に申込みが殺到したことに加えて、アルコールチェッカーの内部に利用されている半導体不足のあおりを受けて、測定だけできる簡易型の入手も難しくなりました。結果的に企業で運用するには十分とはいえない状況になったため、延期となりました。

2-4 アルコールチェックの記録データ保管について

アルコールチェックの記録の方法についてはデータでの管理をおすすめしています。
白ナンバー車のアルコールチェック義務化で記録を残す必要がある項目については、具体的に8つあります。

記録必須の8つの項目

①確認者名(点呼執行者)

②運転者名

③運転者の業務に係る自動車の自動車登録番号又は識別できる記号、番号等

④確認の日時

⑤どのように確認したか(アルコール検知器の使用の有無、対面でのチェックでない場合は具体的な方法)

⑥酒気帯びの有無

⑦指示事項

⑧その他必要な事項

※その他必要な事項については、管轄の警察によって内容が異なることがありますので、管轄の警察署にご確認ください。

この内容の記録を紙で管理していくとなると、なかなか骨の折れる作業です。また、手書きの場合は、不正の横行や記入忘れや記録簿の紛失のリスクもあり、万が一の際に記録簿を探し出す作業に手間がかかります。

そのため、手間や負担を減らすためにも、データで記録保管できるタイプをおすすめします。

参考:データ管理で記録保管できるアルコールチェックシステム

関連記事:『アルコールチェックはクラウド管理型がおすすめ

3.アルコールチェックは安全運転管理者の役目

指先から輝く豆電球(アルコールチェックは安全運転管理者の役目)

安全運転管理者の業務内容でも述べた通り、従業員の酒気帯びの有無の確認は安全運転管理者が行う必要があります。

しかし、夜間に活動する従業員や、早朝に出勤する従業員を抱える事業所の場合、酒気帯びの確認は、必ずしも安全運転管理者が対応しなければいけないわけではありません。

副安全運転管理者」または「安全運転管理者の業務を補佐する者」によるチェックでも対応可能です。また、「安全運転管理者の業務を補助する者」は、事業所内で使用者が選任して問題なく、人数や資格要件などに制限はありません。選任にあたり、警察への届け出も不要です。そのため、無理のない範囲で業務を委任して、義務化に対応していくことも可能です。

負担を分散化しつつ、不正を防止したり手間を減らすことができるアルコールチェックシステムを導入することもひとつの方法です。

参考:岡山県警HP

4.アルコールチェックを怠った場合の罰則

今回の法改正における義務化で直接的な罰則規定が定められているわけではありません。もし、従業員がアルコールチェックを怠ってしまい、酒気帯び運転をした場合には、道路交通法違反になります。違反になるのは運転者だけではありません。

  • ・安全運転管理者の解任
  • ・違反に使用した自動車の業務利用停止

など、さまざまなペナルティを受ける可能性があります。

万が一飲酒運転で事故を起こしてしまった場合は、ペナルティを受けるだけではなく、取引先からの信頼を失い、事業存続の危機に繋がりかねません。そのため、アルコールチェックを怠ることなく、しっかりとアルコールチェックを行っていきましょう。

関連記事:『飲酒運転となる基準や処分内容をわかりやすく解説

安全運転管理者のアルコールチェックに関するよくある質問

アルコールチェックのタイミングはいつですか?
運転業務開始前と、1日の運転業務終了後の1日2回アルコールチェックを行ってください。
検知のタイミングは車に乗るごとに検知の必要はなく、乗車の直前・直後でなくても問題ありません。
運転する予定がない従業員に対してもアルコールチェックが必要ですか?
運転する予定のない人は、必ずしもアルコールチェックをする必要はありません。
安全運転管理者が必ず確認しなければいけないのですか?
安全運転管理者による確認が困難な場合は、副安全運転管理者や安全運転管理者の業務を補佐する方でも大丈夫です。
アルコールチェックの記録について警察から提出を求められることはありますか?
緑ナンバー事業所においては、監査の度に提出が求められています。現在、白ナンバー事業所では提出を求められる可能性がありますが、必ず提出が求められるとは限りません。

5.まとめ

今回の記事では、安全運転管理者と、アルコールチェックの義務化に関して紹介しました。
改めて、下記3点を抑えておきましょう。

  • ・安全運転管理者は、乗車定員が11名以上の自動車を1台以上保有している企業、または乗車定員に限らず5台以上の自動車を使用している企業において選任が必須
  • ・2022年4月1日からスタートしたアルコールチェックの義務化は、白ナンバー保有事業所で、安全運転管理者の選任が必須の企業において行わなければならない
  • ・酒気帯びの確認の有無は原則安全運転管理者が行う必要があるが、「副安全運転管理者」や「安全運転管理者の業務を補佐する者」でも可

安全運転管理者の対象にもかかわらず、まだ安全運転管理者の選任ができていない企業様は、対応を急ぎましょう。そして、しっかりとアルコールチェックをしていき、飲酒運転をなくしていきましょう。


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