アルコールチェッカーの耐久温度は?「熱」がセンサーに与える影響と保管方法【夏は要注意】

アルコールチェッカーは、飲酒運転防止や企業の安全管理に欠かせないアイテムですが、精度の高い測定を維持するためには、適切な管理方法を心がけることが大切です。
特に夏場の高温や直射日光は、内部センサーの劣化や誤作動を招く原因となります。
そこで本記事では、アルコールチェッカーの耐久温度と「熱」が与える影響、適切な保管場所のポイントや作動しない場合の対処法、さらに保管に関するよくある質問まで詳しく解説します。
目次 / この記事でわかること
1. アルコールチェッカーの耐久温度は?
アルコールチェッカーは精密機器であるため、使用時や保管時の温度管理を適切に行うことで、検知精度を維持できます。
夏場の車内など、高温にさらされるとセンサーの精度が低下したり、故障の原因になるため注意が必要です。
一般的なアルコールチェッカーの耐久温度目安は以下のとおりです。
使用温度範囲 | 5℃〜40℃ |
---|---|
保管温度範囲 | -20℃〜60℃ |
参考:J-BAC アルコール検知器の規格・認定制度・運用|アルコール検知器協議会
多くの製品は上記の範囲で使用・保管を仮定して設計されています。
ただし、結露がないことが条件であり、車内のように温度変化が激しい場所での使用や保管は故障の原因となるため、注意が必要です。
検知精度を維持するためには、室内の温度変化が少ない場所で保管し、取扱説明書に記載された温度範囲を必ず確認しましょう。
また、炎天下の車内は1時間も経たないうちに50℃を超えるとされるため、天気の良い日や気温が高い日は、車に放置しないように注意しましょう。
以下の関連記事では、夏場の車内温度や、モバイルバッテリーなどの電子機器を車内に放置する危険性について解説しています。
車に置きっぱなしすると危険なアイテムについても多数紹介していますので、あわせて参考にしてください。
2. 「熱」がアルコールチェッカーに与える影響
アルコールチェッカーは精密機器であり、温度変化に非常に敏感です。
特に高温にさらされると、センサーの検知精度が落ちるだけでなく、内部の劣化や故障を引き起こすリスクがあります。
本章では、「熱」がアルコールチェッカーに与える影響について解説します。
2-1 熱によるセンサーの精度低下
アルコールチェッカーのセンサーは、非常に繊細であり、熱によって性能が劣化する可能性があります。
熱による影響を受けた場合、「飲酒していないのに反応する」「飲酒していても反応しない」などの誤反応を起こす可能性があるため、高温下での保管を避けることが大切です。
JAF(日本自動車連盟)が2023年8月に行ったユーザーテストでは、1時間後に車内温度が40℃を超え、最終的には47℃まで上昇しました。
特に、ダッシュボードは57.8℃まで上昇しており、駐車場所や車内環境次第では、車内温度の上昇速度がより速まる可能性があるため注意が必要です。
このような過酷な環境ではセンサーや部品が劣化し、買い替えが必要になる場合もあるため、アルコールチェッカーの使用後は、涼しい室内や日陰で保管するように心がけましょう。
2-2 液晶やバッテリーの劣化
「熱」はセンサーだけでなく、液晶ディスプレイやバッテリーにも大きな影響を与えます。
直射日光が当たる場所や夏場の車内では、液晶画面の黒ずみや表示不良が起きやすくなります。
また、数は多くないものの、リチウムイオン電池が採用されているアルコールチェッカーが存在します。
リチウムイオン電池は熱に弱く、膨張や発火のリスクがあり、非常に危険が伴うため、利用しているアルコールチェッカーを確認しておくと良いでしょう。
なお、リチウムイオン電池が原因による事故は、過去5年間で1,860件報告されており、そのうち1,587件が発火事故につながっています。
6月〜8月にかけて事故が増加する傾向にあるため、アルコールチェッカーを車に置きっぱなしにしないように注意しましょう。
参考:製品安全情報マガジン Vol.481 7月22日「リチウムイオン電池搭載製品の事故」 |NITE(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)
2-3 結露による内部トラブル
温度差が大きい場所でアルコールチェッカーを使用・保管すると、内部に結露が発生することがあります。
結露した水分が基板やセンサー部分に付着すると、ショートやサビによる故障、誤作動の原因となります。
特に冬場に寒い場所から急に暖かい室内へ移動した際は要注意です。
使用前にポケットなどで温めるなど、使用温度範囲に慣らす時間を設け、結露によるトラブルを防ぎましょう。
3. アルコールチェッカーの適切な保管場所
精密機器であるアルコールチェッカーは、日常的に適切な場所で保管することが重要です。
高温多湿な場所や、埃や化学物質が漂う場所で保管すると、センサーの精度低下や故障の原因になります。
そこで本章では、アルコールチェッカーの保管場所を決める際の3つのポイントについて解説します。
3-1 乾燥した涼しい場所で保管する
アルコールチェッカーは温度や湿度の影響を受けやすいため、乾燥した涼しい場所で保管しましょう。
特に夏場の車内や窓際は高温になりやすく、センサーやバッテリーの劣化を早めます。
室内でも窓際を避けて、温度変化の少ない引き出しや収納棚などで保管しましょう。
また、キッチンや浴室の近くなど、湿気の多い場所や水に濡れる可能性のある場所での保管も控えましょう。
3-2 埃っぽい場所を避けて保管する
アルコールチェッカーのセンサーは非常に繊細であり、埃が付着すると故障や測定不良を引き起こす可能性があります。
倉庫や車内の足元などでの保管は、センサー部分に埃が付着する可能性があるため注意が必要です。
アルコールチェッカーの使用後は、付属ケースやジップ付き袋に入れて保管し、埃の付着を防ぎましょう。
3-3 強い匂いがする場所を避けて保管する
アルコールチェッカーのセンサーは、アルコール以外の揮発性物質にも反応する特性があります。
洗剤や芳香剤、アルコール消毒液やガソリンなど強い匂いのする場所に置くと、誤反応につながる可能性があるため、保管する際は、化学薬品や香料から離れた場所を選びましょう。
4. アルコールチェッカーが正常に作動しない場合の4つの対処法
「検知結果が明らかにおかしい」「電源が入らない」などの不具合が出た場合は、取扱説明書を確認したり、メーカーに問い合わせたりして、適切に対処することが重要です。
正常に作動しない場合、早めの対処が重要ですが、自己流で対処すると故障する恐れがあります。
そこで本章では、アルコールチェッカーが正常に作動しない場合の4つの対処法について詳しく解説します。
4-1 電池を交換する
アルコールチェッカーが正常に作動しない場合は、まずは新しい電池に交換し、動作が改善されるか確認してください。
劣化した電池や残量不足の電池は、「電源が入らない」「エラー表示が出る」「検知結果が不安定になる」などの不具合を発生させる場合があります。
また、リチウムイオン電池は寒さに弱い性質を持っているため、寒い場所で保管していた場合、電圧が低下してエラーを引き起こす可能性があります。
予備の電池を常備し、安全に利用できるように心がけましょう。
4-2 メーカーにメンテナンスや校正を依頼する
アルコールチェッカーには使用期限や使用回数が定められており、使用期限は約半年〜1年、使用回数は1,000回〜数万回のものがほとんどです。
使用期限や使用回数を超えたものは、センサーの精度が低下したり、内部部品の劣化が発生したりする場合があります。
自己流で修理を試みると故障の原因となるため、必ずメーカーへ相談し、必要に応じてメンテナンスや校正を依頼することが重要です。
特に業務用のアルコールチェッカーは、アルコールチェック義務化の法令に沿った安全管理が求められているため、正常に作動しない場合は、早めにメーカーに問い合わせて指示を仰ぎましょう。
4-3 吹き込み口を清掃する
吹き込み口に埃や汚れが溜まると、正確に測定できない場合があります。
メーカーの取扱説明書に沿って、水で濡らして硬く絞った布や専用クリーナーで優しく清掃してください。
また、使用後は吹き込み口に埃が付着しないように、付属ケースやジップ付き袋で保管し、使い捨てストローではない場合は、使用したストローやマウスピースを水洗いして清潔に保ちましょう。
あらためて使用するときは、しっかりと乾燥させてから使うようにしましょう。
以下の関連記事では、アルコールチェッカーの除菌や消毒方法について詳しく紹介していますので、あわせて参考にしてください。
4-4 アルコールチェッカーを交換する・買い替える
メーカー推奨の使用年数・回数を超えている、または校正を行っても改善しない場合は、センサーや内部部品が劣化・故障し、正確なアルコールチェックが実施できない可能性があります。
保証期間が過ぎたアルコールチェッカーの修理は高額になることもあるため、安全管理のためにも、交換・買い替えを検討することが重要です。
アルコールチェッカーのメーカーによっては、定期的に無償で交換を実施しているところもあり、アルキラーNEXもそのひとつです。
交換時期が近づくと、新しいカートリッジや検知器本体が届き、旧検知器を返却する仕組みとなっています。
また、買い替えを検討する際には、J-BAC(アルコール検知器協議会)に認定されているアルコールチェッカーがおすすめです。
J-BACが定める厳しい品質基準を満たしているため信頼性が高く、業務用としても安心して利用できます。
買い替えの際は、J-BAC公式サイトを参考にしてください。
5. アルコールチェッカーの保管に関するよくある質問
アルコールチェッカーを適切に保管するためには、温度以外にも気をつけるべき点があります。
そこで本章では、「冬場の故障リスク」や「温度以外に検知精度に影響する要素」「アルコールチェック義務化の対象企業が守るべき管理基準」について詳しく解説します。
アルコールチェッカーの冬の耐久温度は?
アルコールチェッカーは、使用温度範囲が0℃以上程度、保管温度範囲が-20℃以上程度に設定されている場合が多く、冬場の寒い車内で保管した場合、翌朝に使用不可になる恐れがあります。
特に、リチウムイオン電池が使用されているアルコールチェッカーは寒さに弱く、電圧不足により正常に作動しない可能性があります。
動作不良を起こさないために、「車内を離れる時はポケットに入れて持ち運ぶ」「暖かな室内で保管する」など、保管方法を工夫しましょう。
電源が入らない場合は、メーカーの取扱説明書を確認した上で、暖かい室内で室温に戻してから充電し、再起動を試しましょう。
ただし、コタツやカイロ、ドライヤーなどで急激に温めると結露が発生し、内部故障の原因になるため、ゆっくりと室温で戻すことがポイントです。
温度以外にアルコール測定の精度に影響するものはある?
温度以外にも、芳香剤やタバコ、発酵食品や薬などは検知精度に影響を与える場合があります。
未飲酒なのにアルコール反応が出た場合は、「うがいをする」「30分ほど時間をおく」「メーカーに直接確認した上でセンサーを掃除する」などして対処しましょう。
以下の関連記事では、誤反応を引き起こしやすい行為や飲食物などについて紹介していますので、あわせて参考にしてください。
関連記事:
『アルコールチェッカーは口臭に反応する?誤検知の8つの原因や適切な対処法を紹介』
『未飲酒でもアルコールチェッカーが反応してしまう?7つの原因や対処法を解説』
企業における「アルコールチェッカーを常時有効に保持する」とはどういうこと?
アルコールチェック義務化の対象企業には、「アルコールチェッカーを常時有効に保持すること」が法律で義務付けられています。
「常時有効に保持」とは、正常に作動し、故障がない状態で保持しておくことを指します。
このため、メーカーが定めた取扱説明書に基づいて適切に使用・管理し、定期的に故障の有無を確認し、故障していないアルコールチェッカーを使用しなければなりません。
違反が発覚した場合、是正措置命令や管理者の解任、罰金といった行政処分が下されるため、法令に則って適切に管理しましょう。
6. アルコールチェッカー「アルキラーNEX」の耐久温度は?
J-BACの認定機器である「アルキラーNEX」は、スマートフォン連携型のクラウド型アルコールチェックシステムです。
アルコールチェッカーに息を吹きかけるだけで、検知結果・検知日時・位置情報・顔写真がクラウドに送信され、管理者はリアルタイムでドライバーの検知状況を把握・管理できます。
顔認証によるなりすまし防止機能や、走行管理機能(オプション)も搭載しており、管理者とドライバーの双方にとって安全で効率的な運用が可能です。
アルキラーNEXの耐久温度は以下のとおりです。
使用温度範囲 | 0℃〜40℃ | 湿度10%~90%RH、被毒性ガスおよび結露なきこと |
---|---|---|
保管温度範囲 | 0℃〜50℃ | 湿度5%~95%RH、被毒性ガスおよび結露なきこと |
使用温度範囲 | 0℃〜40℃ | 湿度80%RH以下、被毒性ガスおよび結露なきこと |
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保管温度範囲 | 0℃〜50℃ |
J-BACの動作環境条件では、「呼気アルコール検知器は、+5℃から+40℃までの間で使用できなければならない」と定められています。
アルキラーNEXの使用温度範囲は0℃〜40℃であるため、J-BACの基準を十分に満たしていることが分かります。
特に、0℃から使用可能である点は、寒冷地域や冬場の屋外利用にも対応できるため、幅広い環境下で安定した測定が可能です。
また、アルキラーNEXは補償範囲内の故障に限り、故障修理費用がかからないため、万が一、故障した場合も安心して使用を継続できます。
カートリッジ交換費用やセンサー洗浄費用も発生しないため、ランニングコストを抑えつつ、法令遵守や安全管理の面でも大きなメリットとなります。
7. まとめ|「アルコールチェッカーを車に置きっぱなし」はNG!正しく保管しよう
本記事では、アルコールチェッカーの耐久温度と「熱」が与える影響、適切な保管場所のポイントや作動しない場合の対処法、保管に関するよくある質問について解説しました。
精密機器であるアルコールチェッカーは、高温多湿や直射日光の影響を受けやすいため、車内に置きっぱなしにすると、センサーの故障や検知精度の低下を引き起こす可能性が高まります。
使用後は必ず室内の温度変化が少ない場所に保管し、定期的なメンテナンスや電池のチェックも忘れずに行いましょう。