安全運転管理者によるアルコールチェック|業務内容や運用方法、罰則について解説
国土交通省が定める法律「道路交通法|施行規則第9条の安全運転管理者の業務」が改正され、一定台数以上の白ナンバー車両を保持する事業所に向けてアルコールチェッカーを用いたアルコールチェックが2023年12月1日から義務化となりました。
それにともない、安全運転管理者はこれまで行っていた業務に加え、アルコールチェックの管理が追加されました。
そもそもアルコールチェックの管理・運用を実施する「安全運転管理者」について、十分に業務内容を把握できていない方もいらっしゃるかもしれません。
本記事では、以下の3つについて解説します。
- 安全運転管理者の概要
- 安全運転管理者の業務内容
- アルコールチェックに関する罰則
これらの情報を理解することで、適切なアルコールチェックの運用が可能となります。
目次 / このページでわかること
1.安全運転管理者とは
安全運転管理者とは、事業用自動車の安全運転や運行計画、運転日誌管理業務を行う人を指します。
安全運転管理者を選任する必要がある事業所は、選任した日から15日以内に都道府県公安委員会に届出を行う必要があります。対象となる事業所は以下の通りです。
- ・白ナンバー車5台以上を保有している事業所
- ・または乗車定員が11人以上の白ナンバー車1台以上を保有している事業所
さらに、一部の事業所では副安全運転管理者の選任も求められます。副安全運転管理者は以下の条件に当てはまる場合は必要となります。
・自動車を20台以上40台未満保持している場合(20台追加ごとに1人追加)
安全運転管理者、副安全運転管理者について詳しくは以下の記事で解説していますので、参考にしてください。
関連記事:『安全運転管理者とは?選任義務から罰則、業務内容まで詳しく解説』
『副安全運転管理者は必要?資格要件や業務内容について徹底解説』
1-1 安全運転管理者に必要な資格・要件
安全運転管理者は、下記2つの資格・要件を満たす必要があります。
- 年齢が20歳以上であること(副安全運転管理者を置く必要がある場合、安全運転管理者の年齢は30歳)
- 運転管理の実務経験が2年以上あること。または実務経験が2年未満ではあるが、公安委員会の認定を受けていること
※副安全運転管理者を置く場合、安全運転管理者は30歳以上で自動車の管理経験2年以上の方から選任が可能です。
また、上記2つの条件を満たしているだけではなく、欠格要件に該当していた場合は安全運転管理者として任命することができません。欠格要件に関しては下記の表に記載しています。
安全運転管理者 | 副安全運転管理者 | |
---|---|---|
年齢 | 20歳以上(副安全運転管理者を置く場合は30歳以上) |
20歳以上 |
運転管理者の実務経験 (いずれかに該当する者) |
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欠格要件 |
|
参考:大阪府警察HP
1-2 安全運転管理者の業務内容
安全運転管理者の業務内容は、道路交通法施行規則第9条の10にて定められています。
具体的には下記の9つです。
安全運転管理者の業務内容 |
---|
運転者の状況把握 |
運行計画の作成 |
交代要員の配置 |
異常気象時等の安全確保の措置 |
点呼等による疲労や病気により正常な運転を行うことができないおそれの有無の確認 |
アルコール検知器を用いた運転前後の酒気帯び確認 |
アルコールチェックの1年間の記録保存・アルコール検知器を常時有効に保持 |
運転日誌の備え付けと記録 |
運転者に対する安全運転指導 |
2.アルコールチェックの記録データ保管について
アルコールチェックの記録の方法について定められている形式や管理方法などはありませんが、データでの管理をおすすめします。
白ナンバー車のアルコールチェック義務化で記録を残す必要がある項目については、具体的に8つあります。
記録必須の8つの項目 |
---|
①確認者名(点呼執行者) |
②運転者名 |
③運転者の業務に係る自動車の自動車登録番号又は識別できる記号、番号等 |
④確認の日時 |
⑤どのように確認したか(アルコール検知器の使用の有無、対面でのチェックでない場合は具体的な方法) |
⑥酒気帯びの有無 |
⑦指示事項 |
⑧その他必要な事項 |
※その他必要な事項については、管轄の警察によって内容が異なることがありますので、管轄の警察署にご確認ください。
この内容の記録を運転前後の1日2回、紙で管理していくとなると運転者だけではなく管理者にとっても、なかなか骨の折れる作業です。また、手書きの場合は、不正の横行や記入忘れや記録簿の紛失のリスクもあり、万が一の際に記録簿を探し出す作業に手間がかかります。
そのため、手間や負担を減らすためにも、データで記録保管できるアルコールチェックシステムをおすすめします。
関連記事:『アルコールチェックはクラウド管理型がおすすめ』
3.アルコールチェックは安全運転管理者の役目
安全運転管理者の業務内容でも述べた通り、従業員の酒気帯びの有無の確認は安全運転管理者が行う必要があります。
しかし、夜間に活動する従業員や、早朝に出勤する従業員を抱える事業所の場合、酒気帯びの確認は、必ずしも安全運転管理者が対応しなければいけないわけではありません。
「副安全運転管理者」または「安全運転管理者の業務を補佐する者」によるチェックでも対応可能です。また、「安全運転管理者の業務を補助する者」は、事業所内で使用者が選任して問題なく、人数や資格要件などに制限はありません。選任にあたり、警察への届け出も不要です。そのため、無理のない範囲で業務を委任して、義務化に対応していくことも可能です。
安全運転管理者の業務負担を分散化しつつ、不正を防止したり管理の手間を減らすことができるアルコールチェックシステムを導入することもひとつの方法です。
4.アルコールチェックを怠った場合の罰則
今回の法改正における義務化で直接的な罰則規定が定められているわけではありません。しかし、従業員がアルコールチェックを怠り、酒気帯び運転をした場合には、道路交通法違反になります。また、違反になるのは運転者だけではありません。
- 安全運転管理者の解任
- 違反に使用した自動車の業務利用停止
など、さまざまなペナルティを受ける可能性があります。
万が一飲酒運転で事故を起こしてしまった場合は、ペナルティを受けるだけではなく、取引先からの信頼を失い、事業存続の危機に繋がりかねません。そのため、アルコールチェックの運用は怠らないようにしましょう。
5.安全運転管理者のアルコールチェックに関するよくある質問
- アルコールチェックのタイミングはいつですか?
-
運転業務開始前と、1日の運転業務終了後の1日2回アルコールチェックを行ってください。
検知のタイミングは車に乗るごとに検知の必要はなく、乗車の直前・直後でなくても問題ありません。 - 運転する予定がない従業員に対してもアルコールチェックが必要ですか?
-
運転する予定のない人は、必ずしもアルコールチェックをする必要はありません。
- 安全運転管理者が必ず確認しなければいけないのですか?
-
安全運転管理者による確認が困難な場合は、副安全運転管理者や安全運転管理者の業務を補佐する方でも大丈夫です。
- アルコールチェックの記録について警察から提出を求められることはありますか?
-
緑ナンバー事業所においては、監査の度に提出が求められています。現在、白ナンバー事業所では提出を求められる可能性がありますが、必ず提出が求められるとは限りません。
6.まとめ
今回の記事では、安全運転管理者と、アルコールチェックの義務化に関して紹介しました。
改めて、下記3点を抑えておきましょう。
- 安全運転管理者は、乗車定員が11名以上の自動車を1台以上保有している事業所、または乗車定員に限らず5台以上の自動車を保有している事業所において選任が必須
- 2022年4月1日からスタートしたアルコールチェックの義務化は、白ナンバー保有事業所で、安全運転管理者の選任が必須の事業所において行わなければならない
- 酒気帯びの確認の有無は原則安全運転管理者が行う必要があるが、「副安全運転管理者」や「安全運転管理者の業務を補佐する者」でも可
安全運転管理者の選任義務対象にもかかわらず、まだ安全運転管理者の選任ができていない事業所は、対応を急ぎましょう。そして、しっかりとアルコールチェックを行い、飲酒運転をなくしていきましょう。