自動点呼とは?乗務前・乗務後の違いや導入までの流れ、メリットデメリットを解説

最近話題になっている「自動点呼」についてご存じでしょうか?

自動点呼とは、運行管理者が原則対面で行っている点呼を認定されている点呼支援機器、すなわち「代わりに点呼を行ってくれるロボット」を活用することにより、点呼における確認、指示事項の一部、またはすべてを代替できるような仕組みのことを指します。

現在、自動車運送事業者は原則対面でドライバーの方へ運転前後の点呼や必要な指示等の運行管理を行っています。また、近年運行管理における安全性の向上や労働環境の改善、人手不足の解消などが求められる中、情報通信技術の活用が注目されています。

そこで本記事では

  • ・乗務前自動点呼と乗務後自動点呼の違いとは?
  • ・自動点呼を使用するための要件とは?
  • ・自動点呼を使用するメリット・デメリットとは?

について紹介しますので、ぜひ最後までご一読ください。

1.自動点呼とは?

冒頭で紹介したとおり自動点呼とは、運行管理者がドライバーに対して運転前後に原則対面で実施している点呼を、ロボットなどの点呼支援機器が代わりに実施するというものです。

ただし、現時点で自動点呼の導入が認められているのは乗務後自動点呼のみです。乗務前自動点呼と乗務後自動点呼について解説します。

乗務前自動点呼とは?

乗務前自動点呼とは、乗務前(乗車前)に点呼支援機器が点呼における確認、指示事項の一部または全部を代替することを指します。

乗務前自動点呼は実証実験中

令和6年6月時点で乗務前自動点呼は認められておらず、令和5年度には導入に向け機器の具体的な要件を検討するための実証実験がすすめられました。現在は乗務前自動点呼の要件の検討がすすめられています。

健康状態の確認や運転者への指示、乗務可否の判断などロボットでは難しい点も多く、検討には時間がかかる可能性がありますが、乗務前も自動点呼が可能になれば今までの点呼の概念が覆り、事業者や運行管理者の業務負担を大幅に軽減することが期待できます。

乗務後自動点呼とは?

乗務後自動点呼とは乗務後(乗車後)に点呼支援機器が点呼における確認、指示事項の一部または全部を代替することを指します。乗務後については、点呼機器により自動で点呼を行うための要件や機器の認定制度を創設されており、令和5年4月より乗務終了後の自動点呼が可能となっています。

ただし、乗務後自動点呼が可能となったはといえ完全な自動化ではなく
運行管理者等は点呼に立ち会う必要はないが、非常時に常に対応できる体制が必要
としています。

本記事の内容は、現在進行中の乗務後自動点呼の内容を主に解説しています。

2.乗務後自動点呼の3つの要件とは?

乗務後自動点呼を行うためには要件を満たす必要があり、要件は国土交通省によって定められています。
本章で説明する要件についてしっかりと確認した上で乗務後自動点呼を行うようにしましょう。

乗務後自動点呼に使用する機器・システムが満たすべき要件

自動点呼機器として乗務後自動点呼に使用する機器・システムが満たす要件については下記のように定められています。

1.乗務後自動点呼に関する基本要件
運転者の酒気帯びの状況に関する測定結果及び運転者が測定を行っている様子の静止画又は動画を、自動的に記録及び保存すること。
自動車、道路及び運行の状況、交替運転者に対する通告、その他の事項について、運転者が口頭で報告し、当該報告内容を電磁的方法により記録すること。また、運転者が口頭で報告を行うにあたり、対話形式で報告を行う機能を備えることが望ましい。
運行管理者等が伝えるべき指示事項を、運転者毎に伝達する機能を備えること。
運転者毎の点呼の実施予定・実施結果を、運行管理者等が確認できる機能を備えること。
2.なりすましの防止
事前に登録された運転者以外の者が点呼を受けられないように個人を確実に識別できる生体認証機能(顔認証、静脈認証、虹彩認証等)を有すること。
酒気帯びの状況に関する測定時には、点呼を受ける運転者以外の者が測定できないように個人を確実に識別できる生体認証機能(顔認証、静脈認証、虹彩認証等)を有すること。
3.運行管理者の対応が必要となる際の警報・通知
運転者の酒気帯びが検知された場合には、運行管理者等が気付くように警報、通知を発した上で、点呼を完了させないこと。
運転者毎に点呼を実施する予定時刻を設定することができ、予定時刻から一定時間を経過しても点呼が完了しない場合には、運行管理者等が気付くように警報、通知を発すること。
自己診断機能を備え、故障が発生した場合には故障個所、故障内容を表示するとともに、運行管理者等が気付くように警報、通知を発した上で、当該故障が解消されるまで点呼を実施できないようにすること。
4.点呼結果、機器故障時の記録
点呼を受けた運転者ごとに、次に掲げる点呼結果を電磁的方法により記録し、かつその記録を1年間保持できること。

(1)当該点呼に責任を持つ運行管理者等の氏名及び点呼を受けた運転者の氏名
(2)運転者の乗務に係る事業用自動車の自動車登録番号又は識別できる記号、番号等
(3)点呼日時
(4)点呼方法
(5)アルコール検知器の測定結果及び酒気帯びの確認結果
(6)アルコール検知器の使用時の静止画又は動画
(7)運転者が点呼を行っている様子の静止画又は動画
(8)自動車、道路及び運行の状況
(9)交替運転者に対する通告
(10)その他必要な事項
当該機器の故障が発生した際、故障発生日、時刻、故障内容を電磁的方法により記録し、その記録を1年間保持できること。
電磁的方法にて記録された点呼結果、機器の故障記録の修正ができないこと、又は修正をした場合であっても修正前の情報が残り消去できないこと。
電磁的方法にて記録された点呼結果、機器の故障記録を出力できること。出力について機器・システムで保存された内部形式のまま大量一括に、CSV形式の電磁的記録として出力できること。
引用元:国土交通省「乗務後自動点呼の要件とりまとめについて|p.9~p.11

乗務後自動点呼を実施する場所が満たすべき施設・環境要件

乗務後自動点呼はどこでも行っていいわけではなく、しっかりと決められた環境下で行う必要があります。

施設・環境要件
なりすまし等の不正の防止及び所定の場所以外で乗務後自動点呼が実施されることを防止するため、運転者が乗務後自動点呼を実施する様子を運行管理者等が随時確認できるように監視カメラ等が適切に設置されていること。
引用元:国土交通省「乗務後自動点呼の要件とりまとめについて|p.12

乗務後自動点呼を使用する際は必ず上記の要件を満たした環境で点呼を行うようにしてください。

運用上の遵守事項

運用するにあたって事業者や運行管理者などが必ず守らなければならないことがあります。

1.事業者、運行管理者等に係る遵守事項
事業者は、乗務後自動点呼の運用に関し必要な事項について、あらかじめ運行管理規程に明記するとともに、運転者、運行管理者等及びその他の関係者に周知すること。
事業者は、乗務後自動点呼に用いる機器を常時有効に保持すること。常時有効に保持とは、正常に動作し、故障がない状態で保持しておくことをいう。このため、機器の製作者が定めた取扱に基づき、適切に使用、管理及び保守するとともに、定期的に故障の有無を確認し、故障がないものを使用しなければならない。
事業者は、所定の場所以外で乗務後自動点呼が行われるのを防止するため、乗務後自動点呼に用いる機器を持ち出されないように措置を講じること。
乗務後自動点呼の運用に伴う責任は事業者、運行管理者等が負うことから、機器の使用方法等について運転者、運行管理者等及びその他の関係者が適切に使用できるように教育体制を整備すること。
運行管理者等は、各運転者の乗務後自動点呼の実施予定・実施結果を適切に確認し、点呼の未実施を防止すること。
運行管理者等は、各運転者に必要な指示を適切に行うこと。
運行管理者等は、各運転者に必要な指導を適切に行うこと。
事業者は、運転者が携行品を確実に返却したことを確認できる体制を整備すること。
2.非常時の対応
酒気帯びが検知された場合には、運行管理者等が適切な措置を講じることができる体制を整備すること。
緊急を要する報告については、運転者から運行管理者等に適切に報告できる体制を整備すること。
当該機器の故障等で乗務後自動点呼の実施が困難になった場合は、当該営業所で実施が認められている点呼を実施できる体制を整備すること。
3.個人情報管理に係る事項
運転者の認証機能に必要な生体情報等、個人情報を扱う場合には、事業者が対象者から同意を得ること。
引用元:国土交通省「乗務後自動点呼の要件とりまとめについて|p.13~p.14

3.乗務後自動点呼を導入するまでの4つの流れ

実際に乗務後自動点呼を導入する際の具体的な流れを4つのステップで紹介します。

  1. ①乗務後自動点呼を導入する場所を決める
  2. ②自動点呼認定機器の中から機種を決める
  3. ③運輸支局に届け出する
  4. ④乗務後自動点呼を利用する

①乗務後自動点呼を導入する場所を決める

自動点呼は決められた場所以外での実施が禁止されており、自動点呼機器の持ち運びはNGとなっています。

また、自動点呼を行うドライバーの全身を運行管理者がチェックできるように監視カメラなどを設置する必要があります。事前にどの営業所で実施するのかを決めて環境を整えましょう。

②自動点呼認定機器の中から機種を決める

規定に基づき認定を受けた機器であって有効期限内のものを用いる必要があります。令和6年4月現在で認定を受けている自動点呼機器は以下の通りです。

参考:国土交通省「認定を受けた自動点呼機器一覧

③運輸支局に届け出する

事業所を管轄する運輸支局の支局長宛てに実施10日前までに届出書を提出する必要があります。なお、乗務後自動点呼の実施を終了する場合にも遅滞なく届出をおこないます。

④乗務後自動点呼を利用する

上記のすべての準備が完了したら、はじめて乗務後自動点呼を開始できます。実際に使用していく中で業務に支障がないか、エラーがないかを適宜チェックしてリスクヘッジを行いましょう。

4.乗務後自動点呼のメリット3選

乗務後自動点呼を取り入れることはさまざまなメリットがあります。

  • ①運行管理者の手間が減り他の業務に従事できる
  • ②業務効率化になる
  • ③点呼の信頼性が上がり品質向上に繋がる

上記3つのメリットについて紹介します。

①運行管理者の手間が減り他の業務に従事できる

本来すべて対面でおこなっていた点呼の一部を無人で対応できるようになるため、運行管理者の手間や労力を大幅に軽減することが期待できます。

関連記事:『運行管理者とは|業務内容や必要資格、安全運転管理者との違いを紹介

②業務効率化になる

点呼にかけていた時間や労力を他の業務に充てることができるため、業務効率化につながり残業や人員の削減になります。

③点呼の信頼性が上がり品質向上に繋がる

点呼記録が自動で保存されることによって、確実性や信頼性の向上につながります。また、データの管理が電子化されることにより点呼の分析や改善が簡単にできるようになります。

5.乗務後自動点呼のデメリット3選

自動点呼を取り入れるにあたってメリットを述べてきましたが、デメリットも気になりますよね。

  • ①従業員の教育コストがかかる
  • ②自動点呼の機器やシステムの運用に知識が必要
  • ③機器の導入コストがかかる

それぞれのデメリットについても解説します。

①従業員の教育コストがかかる

対面点呼であればドライバーは管理者と会話をするだけで点呼が完了していましたが、自動点呼はロボットを用いるため、使い方を覚える必要があります。とくに、スマホやタブレット操作に慣れていない高齢ドライバーへの教育には、資料や使い方動画を用意するなど時間と手間を要します。

②自動点呼の機器やシステムの運用に知識が必要

自動点呼に用いる機器はなんでも良いわけではなく、国土交通省の認可を受けた製品である必要があります。その中からどの機器を導入するかの選定、選定後の運用ルールの策定など専門的な知識が必要になります。

③機器の導入コストがかかる

自動点呼機器はロボットやAIを用いたものが多く、比較的高額な導入コストがかかります。現時点では乗務前の点呼はロボットに任せられないことから、すぐに高額なコストをかけて自動点呼機器を導入することにためらう企業も多いです。

6.乗務後自動点呼の補助金・助成金について

乗務後自動点呼を導入する際に活用できる補助金・助成金もありますので紹介します。

①国土交通省(令和5年度 事故防止対策支援推進事業)

自動車運送事業者(トラック、バス、タクシー)が先進的な機器を導入することにより、重大事故を防ぐため一定要件を満たす国土交通大臣が選定した機器の取得に対して補助をおこないます。補助額は導入経費の1/2で1申請あたりの上限は80万円となります。

また、助成対象となる機器は下記の6種類です。

  • (1)ITを活用した遠隔地における点呼機器(IT点呼機器)
  • (2)遠隔点呼機器
  • (3)自動点呼機器
  • (4)運行中における運転者の疲労状態を測定する機器
  • (5)休息期間における運転者の睡眠状態等を測定する機器
  • (6)運行中の運行管理機器

参考:自動車総合安全情報(国土交通省)「令和5年度 過労運転防止認定機器一覧」「事故防止対策支援推進事業

②全日本トラック協会(令和5年度 自動点呼機器導入促進助成事業)

各都道府県トラック協会の会員である中小トラック運送事業者を対象として助成をおこなっています。助成対象となる自動点呼機器は、国土交通省の認定を受けたものに限ります。

助成額は自動点呼機器の導入費用(上限10万円)で、周辺機器やセットアップ代金なども含みます。Gマークを有する事業者は2台分(上限20万円)となります。

参考:公益社団法人 全日本トラック協会「令和6度 自動点呼機器導入促進助成事業について

7.まとめ

自動点呼を取り入れることに対して、まだまだコストや知識などの部分で課題や不安があるかと思います。
とはいえ、うまく自動点呼を活用することができれば、業務の効率化や点呼内容の品質向上につながります。

現在、情報通信技術が発展している中で上手く技術を活用し、安全性の向上やドライバーや運行管理者の働き方改革に努めていきましょう。

株式会社パイ・アール ロゴ

この記事の執筆者

株式会社パイ・アールPAI-R Co., Ltd.

安心・安全な交通社会の実現へ向けてさまざまな課題や解決を探求し、アルコールチェックをはじめドライバーの安全管理や業務管理にまつわるさまざまなお役立ち情報を発信しています。

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