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IT点呼とは|条件や導入・運用方法、役立つ補助金制度を紹介

「IT点呼を導入したいけど何から始めたらいいかわからない…」
「IT点呼の導入条件、運用方法が知りたい…」
とお困りの方も多いのではないでしょうか?

IT点呼以外に対面点呼や電話点呼がありますが、そもそも点呼とは運送事業者などの運転手が安全に規則を守って運転をしているか確認することをいいます。
運送業界には多くの事業所があり運転手も膨大な数となるため、運転手の点呼を行うには膨大な時間と人が必要です。

ITが発展した現在、IT機器を使って遠隔で点呼ができるのではないかとIT点呼が考えられました。この記事ではIT点呼の概要、メリット・デメリット、運用方法や導入方法、補助金制度について説明します。

1.IT点呼とは?

IT点呼は、国土交通大臣が定めたIT機器によって行える点呼のことを言います。
Gマーク取得事業者や特定の条件を満たした事業者の場合、管轄の運輸支局長へ申請することでIT点呼ができるようになります。

今までは運行管理者と運転者が対面で行う、「対面点呼」が行われていました。これに対し、IT点呼はITシステムを使って遠隔から点呼ができます。
IT点呼はパソコンやネットワークシステム、アルコール検知器などの機械を通して行い、国土交通省により了承されたIT機器のみの使用が可能です。

IT点呼の仕組み

トラックなど貨物の運送事業者やバス・タクシー事業では下記の法律によって点呼を行うことが義務付けられています。

  • ・貨物自動車運送事業法
  • ・貨物自動車運送事業輸送安全規則
  • ・旅客自動車運送事業運輸規則

点呼のタイミングは下記の3つです。

  • 1. 乗務前点呼
  • 2. 乗務後点呼
  • 3. 乗務途中点呼(中間点呼)

点呼の内容は運行管理者が運転者と対面し、体調の確認や飲酒の有無、業務内容の確認、業務許可や安全を確保するために必要な指示を出します。基本的に、点呼はやむを得ない事情がない限り対面で行うことが決められていますが、何か理由があるときは他のIT機器で行うのが主です。

2.IT点呼4つのメリット

IT点呼には下記4つのメリットがあります。

①人件費を削減できる

運送業界は長距離の運送や深夜の運送など、深夜や長時間に渡って働くことが多い業界です。また、タクシーやバスなどの運転手も時間が不規則になりがちです。そのため、運行管理者には補助者の対応が必要になり、補助者の補充や残業代の支払いなど人件費が多くかかります。対面点呼は人件費がかかりすぎるデメリットがあり、なるべく人件費を抑えながら点呼する必要があります。
その点、IT点呼は各営業所に配置しなければいけない人材を一つの営業所にまとめられるので、人件費を削減できます。

②働き方改革に対応できる

近年の日本は、長時間の残業や休日出勤など長時間労働が問題視されています。長時間労働による病気や自殺などが社会的に大きな問題になった結果、働き方関連法案が改正されました。

  • ・休日労働を含まない年720時間以内の労働
  • ・休日労働を含む月100時間未満
  • ・休日労働を含む2〜6ヶ月の平均が月80時間
  • ・年間6ヶ月までは原則月45時間を超えてはいけない

運送業界は労働時間が不規則で早朝や深夜の勤務もあるため、長時間労働が特に問題視されている業界です。そのため改正後のルールを守るためには、働き方そのものを改革しなければなりません。例えばIT点呼を導入した場合、ドライバーの到着を管理者が長時間事務所で待つ必要がなくなります。そのため、IT点呼は改正後のルールを守るためにはおすすめです。

このようにIT点呼を導入することは単なる人件費の削減だけでなく、法令の遵守や労働基準監督署の臨時検査に対応できています。

③早朝や深夜にも少ない人員で対応できる

運送業界では大きな問題となっていた対面点呼が、IT点呼の導入により少ない人員で早朝や深夜に対応できるようになったのは、大きなメリットです。

④点呼の抜け漏れを防ぐことができる

点呼記録簿を自動作成ができる場合、紙への記入や手入力で起こりがちなミスが起こりにくいことや、記入漏れなどを防ぐことができます。そのため、点呼記録簿の説得力も格段と上がります。

3.IT点呼2つのデメリット

IT点呼のデメリットは2つあります。

①導入費用がかかる

IT点呼機器は国土交通省指定の物でないといけないため、専用の機器が必要になります。
そのため、国土交通省指定の機器を導入するにあたって、購入費用や利用費などの費用がかかります。
とはいえ、今では多くの企業がIT点呼の機器を取り扱っているため、安い費用で導入できることもあります。IT点呼を導入するときは導入費用を考慮した上で決めるといいでしょう。

②Gマークの取得が必要

IT点呼を実施するにはGマークを取得している必要があります。また、Gマークの取得は、運転手が所属している事務所と点呼者が所属している事務所の双方が取得していなければいけません。

Gマーク認定を受けるためには

  • ・安全性に対する法令の遵守状況
  • ・事故や違反の状況
  • ・安全性に対する取り組みの積極性

上記3つのテーマに分けられた38の項目100点満点中80点以上が、Gマークの認定を受ける条件です。

安全性に対する法令の遵守状況

<評価項目>
適正化指導員がそれぞれの事業所を巡回して指導した結果と、運輸安全マネジメントへの取り組み状況について

事故や違反の状況

<評価項目>
これまでの事故や違反など行政処分がどれくらいあったか

安全性に対する取組の積極性

<評価項目>
安全対策会議等を実施しているか、運転者への安全教育や配慮等にどれくらい取り組んでいるか

 

Gマーク取得に向けて申請するには、点呼記録簿や自己記録簿・運転日報などの安全対策の実施を証明する添付書類が必要です。事前に準備しておきましょう。
とはいえ、Gマークを取得していなくても、次の条件を満たしていれば、IT点呼の実施が可能です。

  • ・運送事業者が運行を開始してから3年が経過している
  • ・過去3年に渡って自動車事故報告規則に掲載されている事故を起こしていない
  • ・過去3年に渡って点呼の実施違反にかかる行政処分や警告を受けていない
  • ・適正化実施機関の直近の巡回指導評価が「A~C」である
  • ・点呼項目判定が「適」であり、巡回指導評価が「D~E」である
  • ・点呼項目判定が「否」であった場合でも3か月以内に改善報告書を提出し、総合評価が「A~C」、点呼項目判定が「適」に改善されている

このようにIT点呼を実施する上で、厳しい条件をクリアしていれば、IT点呼を行えますので、実際に確認してみましょう。

4.IT点呼の運用方法

IT点呼の運用方法は実施するための前提条件、実施するための前条件、実施の3つのステップがあります。

ステップ①実施するための前提条件

(1)Gマークの認定を受けている。または前述のIT点呼を実施する条件をクリアしている

IT点呼を行う営業所とIT点呼を受ける営業所の両方が同一事業者であり、かつ両方の営業所がIT点呼の認定を受けている必要があります。

(2)国土交通大臣指定のIT点呼用機器の準備

IT点呼を行う営業所とIT点呼を受ける営業所の両方に国土交通大臣指定の機器を設置している必要があります。また、目視で酒気帯びや疲労などを確認するためのカメラやアルコール検知器による測定結果の保存が双方正常に作動する状態で準備を行います。

(3)運輸支局長等への報告書の提出

IT点呼を行う場合は、必要項目がまとまった雛形の報告書と、実際に導入するIT点呼システムのカタログと併せて、本運用を開始する10日前までに運輸支局長等に提出する必要があります。

また、IT点呼を行う営業所とIT点呼を受ける営業所の名称が報告書と相違ないこと、IT点呼を行う営業所又は車庫の位置、IT点呼を受ける営業所又は車庫の位置が報告書と相違ないこと、IT点呼を行う営業所とIT点呼を受ける営業所のGマークの認定番号および認定期間が報告書と相違ないことを確認します。

Gマークを更新した場合

以下項目を確認する必要があります。

  • ・変更された認定番号と認定期間について変更報告書を提出
  • ・使用するIT点呼用機器の名称が報告書と相違ないこと
  • ・IT点呼を行う時間帯が報告書と相違ないこと
  • ・IT点呼実施予定日の原則10日前までに報告書を提出

ステップ②実施するための前条件

運行管理規定に必要事項を記入します。
具体的には、IT点呼の業務処理基準が運行管理規定に盛り込まれていることです。
また、営業所間で点呼に必要な情報を通達しますが、IT点呼を受ける営業所の運転手と車両の情報がIT点呼を行う事業所と共有されていなければいけません。

ステップ③実施

実施においては、IT点呼を行う側と受ける側でそれぞれ確認事項が違います。

IT点呼を行う側

  • ・実施したIT点呼の内容を点呼記録簿に全て記録し、データはバックアップする
  • ・他の事業所でIT点呼を行った場合、実施したIT点呼の内容を次の営業日に必ずIT点呼を受けた事業所に伝える

IT点呼を受ける側

  • ・支局に提出した報告書の時間帯に点呼を受けなければいけない
  • ・IT点呼を行った事業所から行われたIT点呼の内容を全て記録する必要がある
  • ・支局に提出した報告書の時間帯に点呼を受けている必要がある
  • ・記録としてIT点呼を行った人の名前とIT点呼を実施した事業所の情報を記載する

5.IT点呼サービスの導入方法

IT点呼を実施するためには、IT点呼のサービスを決めていく必要があります。 IT点呼のサービスは多岐に渡るため、費用面や機能面などをしっかりと考慮してから決めるようにしましょう。

続いて、導入に必要な機器を用意します。IT点呼に最低限必要なものはカメラ・マイク・テレビ電話アプリが搭載されているパソコンと、IT点呼サービスと連携するアルコール検知器です。

IT点呼サービスはクラウド型が多く、ウェブを通して行うためソフトをインストールする必要はありません。しかし、クラウド型でない場合は特定のパソコンにソフトをインストールする必要があります。

また、IT点呼サービスには点呼簿が含まれていることが多いため、点呼記録簿を別に用意する必要はありません。点呼を行う管理者側だけでなく、点呼を受ける運転手側も用意をしなければなりません。
IT点呼サービスと連携したアプリをインストールし、個人のスマホで行う場合は、自分であることを必ず伝えます。
なお、IT点呼サービスによっては、ウェブカメラ、マイク、免許証リーダーなどが必要です。

このように、サービスによって必要な物が違うため、しっかりと確認しましょう。

6.IT点呼の補助金制度

IT点呼を導入するときは、費用がかかることを説明しました。費用面から導入に踏み出せていない企業も多いでしょう。 そんなときは、IT点呼の補助金制度を利用するのがおすすめです。

IT点呼の補助金は、

  • ・事故防止対策支援推進事業
  • ・安全装置等導入促進助成事業

の2つが提供しています。

事故防止対策支援推進事業

事故防止対策支援推進事業では、「過労運転防止のための先進的な取り組みに対する支援」とIT点呼を行う為のIT機器については、「過労運転防止のための先進的な取り組みに対する支援」の対象を設けており、毎年募集と認定が行われています。「ITを活用した遠隔地における点呼機器」として認定された一定要件を満たす機器を導入する場合、その取得にかかる経費に対し補助金を受け取れます。補助金制度の補助額・補助率は、取得に要する経費の1/2が助成の対象になります。補助金制度の申請受付期間は令和4年7月22日から11月30日まで募集しています。

安全装置等導入促進助成事業

安全装置等導入促進助成事業では、IT機器を活用した遠隔地で行う点呼で使う携帯型アルコール検知器など安全に資する装置を購入、またはリースにより導入した機器取得価格が助成対象です。
機器は「令和4年4月1日から令和4年11月30日までの間に、補助対象機器を購入し取付けたうえ支払いまで終了(事業完了)しているもの」が助成対象となります。助成金制度の助成額・助成率は、アルコール検知器の場合は車両1台につき対象装置ごとに機器取得価格の1/2(上限2万円)となります。

参考:自動車総合安全情報(国交省)「事故防止対策支援推進事業

7.まとめ

IT点呼とは、ITツールを使って遠隔で点呼ができるシステムと紹介しました。
今までは、対面で運転手が規則を守っているか確認しなければいけなかったため、膨大な時間と人件費がかかっていました。特に、運送業界は早朝や深夜の仕事が多いため、補助者が必要でした。

今回の記事をまとめると、

  • ・IT点呼を導入すると、点呼時間を短縮できる
  • ・人件費の削減に繋がる
  • ・クラウドシステムを利用すれば、すぐに点呼記録簿に記録されるため、一つひとつ自分で記録する必要がない
  • ・導入費用がかかるため補助金制度の利用がおすすめ

IT点呼の導入には一定の条件を満たさなければいけません。導入を検討する際は、しっかりと確認するようにしましょう。

株式会社パイ・アール ロゴ

この記事の執筆者

株式会社パイ・アールPAI-R Co., Ltd.

安心・安全な交通社会の実現へ向けてさまざまな課題や解決を探求し、アルコールチェックをはじめドライバーの安全管理や業務管理にまつわるさまざまなお役立ち情報を発信しています。

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