デジタコは義務化されている?装着を怠った場合の罰則やアナタコとの違いについて

デジタコはタコグラフ(運行記録計)をデジタル化したもので、車両の走行距離、速度、時間などを記録する装置です。記録紙を用いるアナタコよりも詳細なデータを記録できるため、車両の運行管理や事故削減のための安全管理に役立てられています。

詳しくは後述しますが、バスやトラック、タクシーなどの事業用車両は、タコグラフの装着が法律で義務化されており、デジタコとアナタコのどちらかを装着しなければなりません。

そこで本記事では、デジタコとアナタコの違いや、タコグラフを装着しなかった場合の罰則、デジタコのメリットについて紹介します。デジタコを導入する際の補助金についても紹介しますので、運送業の開業を予定している方や、新しい車両の購入を検討している方は参考にしてください。

1.デジタコとアナタコの違いは?

そもそもタコグラフとは、車両の走行速度・距離・時間などを記録する運行記録用計器の一種で、車両の運行状況を把握するために用いられます。

なお、タコグラフには「デジタコ」と「アナタコ」の2種類があります。

デジタコとは?

デジタコとは「デジタルタコグラフ」の略称であり、メモリーカードに車両の走行速度・距離・時間を記録するデジタル式の運行記録計のことです。車両の位置情報、急加速・急減速、アイドリング情報等も記録されるので、アナタコよりも詳細なデータを把握できます。

アナタコとは?

アナタコとは、「アナログタコグラフ」の略称であり、円形の記録用紙に走行情報を記録するアナログ式の運行記録計のことを言います。記録できるのは「法定3要素」と呼ばれる「走行速度・距離・時間」の3つだけですが、デジタコよりも導入コストが低く、ドライバーの心理的な束縛がないのが特徴です。

2.義務化されているのはタコグラフ(運行記録計)

「デジタコは義務化されている」といった内容をインターネットなどで目にした方もいるかもしれません。

厳密には、義務化されているのは「タコグラフ(運行記録計)」であり、デジタコもしくはアナタコが装着されていれば法律違反にはなりません

この章では義務化までの経緯や、「デジタコは義務化されている」と言われている理由について詳しく解説します。

タコグラフ(運行記録計)の装着が義務化されるまでの経緯

平成23年から、度重なるトラックによる死亡事故や重軽傷事故、長距離・長時間輸送が問題視されていた状況を考慮し、「タコグラフの装着義務の対象車両の拡大」や「限度超過車両を繰り返し運行させている業者」に対する監督強化に向けた法改正の動きが始まりました。

平成26年には「貨物自動車運送事業輸送安全規則」が改正され、平成27年4月から施行されています。改正内容は以下の通りです。

貨物自動車運送事業輸送安全規則の改正内容

・道路法第47条の規定等に違反する事業用自動車による運行の防止について、「運転者に対する適切な指導及び監督を怠ってはならないこと等」を新たに追加する。

・事業用車両のうち、タコグラフの装着を義務化する車両対象を「車両総重量7トン以上または最大積載量4トン以上の事業用トラック」に拡大する。

いわゆる中型・大型トラックや長距離バス、タクシーなどがタコグラフの装着義務があり、法改正をきっかけにデジタコを装着する運送業者が増えました。違反した場合、罰則が科されるため注意が必要です。

参考:貨物自動車運送事業輸送安全規則の一部を改正する省令について|国土交通省

装着はデジタコが主流のため「デジタコ義務化」と言われている

令和6年に国土交通省がトラック事業者を対象に行ったアンケートでは、「最大積載量が4トン以上の車両において、デジタコの装着率は約80%」でした。規模が大きい事業者ほどデジタコの装着率が高く、運行管理だけでなく労務管理までできる点がデジタコの導入につながっています。

アナタコよりも詳細なデータの取得や管理ができるため、今後もさらにデジタコの導入が進んでいくと考えられています。

参考:デジタコに係るアンケート結果について(P.3)|国土交通省

3.タコグラフの装着義務を怠った場合の罰則

タコグラフの義務化に伴い、装着を怠った事業者には罰則が科されます。

そこで本章では、装着義務を怠った場合の罰則内容や、装着後に不備が発覚した場合の罰則内容について解説します。

デジタコ・アナタコを設置していなかった場合

デジタコ・アナタコを設置していなかった場合、記録義務違反となり「30日間の車両使用停止」の行政処分が下されます。

通常の罰則よりも重い処分であり、運転手だけでなく会社にとっても大きなマイナス要素です。業務に復帰できたとしても、関係者から社会的信用を失う可能性があり、小規模業者であれば倒産危機も考えられます。デジタコ・アナタコの装着が義務化されている車両は、必ず装着しましょう。

デジタコ・アナタコに不備があった場合(故障含む)

デジタコやアナタコが故障していた場合や、デジタコにメモリーカードを挿入し忘れていた場合、運行記録計不備違反となり、中型・大型車は6,000円、普通車は4,000円の反則金が発生します。

一定期間の車両使用停止などの行政処分は科されませんが、事故などのトラブルが発生した際の重要な証拠が失われるため、運転前に正常に動作するかチェックしましょう。

参考:反則行為の種別及び反則金一覧表|警視庁

4.デジタコの装着義務を広げる理由

タコグラフの装着義務化は、道路の安全確保や交通事故の削減が目的です。

トラックは重大な事故の発生割合が高く、事故の要因の1つとして、長距離・長時間輸送が多いことが問題視されていました。

タコグラフの装着を義務化することで、ドライバーの適切な労働管理が行えるようになり、事故のリスクを減らす効果を期待できます。

さらにデジタコの場合、アナタコよりも記録できるデータの種類が多く、取得した情報はデータとして保存できるため、手書きで日報を作成する必要がありません。

以上の通り、運行管理や労働管理のしやすさから、現在はデジタコの装着義務が広がっています。

5.デジタコを装着する3つのメリット

デジタコ・アナタコの装着が義務化され、現在では多くの事業者がデジタコを導入しています。そこで本章では、デジタコを装着する3つのメリットを紹介します。

新しい車両を購入するにあたって、デジタコとアナタコのどちらを採用するか検討中の方は、参考にしてください。

①データとして記録できること

デジタコは、運行車両に関するあらゆる情報をデータとして記録でき、日報作成の手間も省けるため、ドライバーの労働時間短縮が期待できます。

メモリーカードに記録された情報はパソコンで読み込みでき、ネットワーク上で情報を転送すればメモリーカードを取り出す必要もありません。また、記録したデータはUSBメモリやクラウド上に保存できるため、いつでも見返すことが可能です。

②安全運転管理がスムーズになる

デジタコはGPSによる位置情報、速度超過などの危険運転、急加速・急減速、アイドリング情報といった、詳細な車両情報を記録できます。

管理者はドライバーの運転の癖を確認でき、適切な指導が可能になります。また、位置情報を元にドライバーを配置できるので、安全運転を確保しながら売り上げをアップできる点も大きなメリットです。

国土交通省が事業者向けに行ったアンケートでは、デジタコの安全運転管理に魅力を感じている事業者が多く、装着によるドライバーの安全運転への意識が高まることも期待されています。

参考:デジタコに係るアンケート結果について(P.7)|国土交通省

③労務管理・残業の把握がしやすい

デジタコの導入によって、ドライバーの稼働時間を簡単に把握できます。

ドライバーの過労運転による事故は長年問題視されており、改善するためにはドライバーの「労働時間を守ること」への理解が必要です。デジタコを導入することで、過労運転の抑止になり、ドライバーの身体への負担を軽減できます。

また、運行管理者にとってもメリットがあり、ドライバーへの指導が減るほか、残業時間の集計作業を行う手間が省けるため、簡単に労務管理ができるのも嬉しいポイントです。

参考:トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント|厚生労働省労働基準局

6.デジタコ導入するための補助金・助成金

デジタコの導入相場は約18万円〜20万円とされ、システムの性能や管理方法によって1台あたり5〜30万円程度と差があります。導入相場が3〜5万円のアナタコよりも高額です。

デジタコの導入は事業者の負担が大きいことから、経済産業省・国土交通省・トラック協会・日本自動車運送技術協会では、導入時の補助金や助成金を支援しています。

補助限度額は使用車両やデジタコの種類によって異なり、デジタコ1台あたり1〜14万円が目安です。
なお、1事業者あたりの上限額は80〜120万円が目安です。補助金や助成金を得るには各機関が定めた条件を満たす必要があり、公募によって対象事業者が決定します。

物流業界の2024年問題に対応するために、今後も補助金や助成金の活用を検討する事業者は増えると予想されます。補助金・助成金の活用を考えている方は早めに応募先の選定や書類準備に取り掛かりましょう。

参考:事故防止対策支援推進事業|国土交通省 / トラック輸送省エネ推進事業|経済産業省 / 令和6年度 安全機器等導入促進助成事業|一般社団法人 神奈川県トラック協会 / 運行管理の高度化に対する支援|公益財団法人日本自動車輸送技術協会

7.アメリカではデジタコ装着が義務化されている?

アメリカでは、2019年からELD装置(日本におけるデジタコ)の装着が義務化されています。日本よりも物流業界のデジタル化が進んでおり、物流業界とブロックチェーンを組み合わせた運行管理サービスも登場しています。

このような背景から、日本でもデジタコが義務化される可能性が高いです。

しかし、デジタコの義務化によって、アメリカでも日本の2024問題と同じような物流の課題が残されています。ドライバーの労働時間が制限されることで、一人当たりの走行距離が短くなり、事業者の利益の減少やドライバーの給料の減少・離職が懸念されています。

事業者やドライバーへの負担が大きいため、日本の運送事業者は今後のデジタコの義務化や法改正を見据えて、運行管理や労務管理を行う必要があるでしょう。

関連記事:『運送業許可(一般貨物自動車運送事業許可)を取得するために必要な5つの条件とは?

8.まとめ|タコグラフ(運行記録計)は義務化されている

本記事ではタコグラフの装着の義務化や、デジタコとアナタコの違い、タコグラフの未装着における罰則内容、デジタコの導入における補助金について解説しました。

「デジタコの装着は義務化である」といった言葉を見聞きした方も多いと思いますが、義務化されているのは「タコグラフ(運行記録計)」であり、デジタコもしくはアナタコが装着されていれば法律違反にはなりません。

ただし、デジタコの方がより詳細な運行情報を取得できることから、デジタコを導入する事業者が多いです。また、物流業界のデジタル化に伴い、今後デジタコの装着が義務される可能性が高いです。

今後の物流業界の動きを注視しつつ、本記事で紹介した内容を参考に、安全な運行管理の意識を高めていきましょう。

株式会社パイ・アール ロゴ

この記事の執筆者

株式会社パイ・アールPAI-R Co., Ltd.

安心・安全な交通社会の実現へ向けてさまざまな課題や解決を探求し、アルコールチェックをはじめドライバーの安全管理や業務管理にまつわるさまざまなお役立ち情報を発信しています。

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