居眠り運転の罰則や違反点数は?事故を起こした時の対処手順も解説
居眠り運転は、睡眠不足や疲労蓄積によって引き起こされ、事故を起こした場合、事故の状況によっては免許取り消しなどの重い罰則が下されることもあります。
居眠り運転による重大な事故を防止するために、一人ひとりが日頃から安全運転を心がけることが重要です。
この記事では、居眠り運転がもたらすリスクを理解するために、罰則や違反点数について詳しく解説します。また、万が一事故を起こした場合の対処手順や、居眠り運転対策について紹介するので、緊急時に備えて覚えておきましょう。
目次 / このページでわかること
1.居眠り運転による事故の罰則と違反点数
居眠り運転による事故を起こした場合、安全運転義務違反(漫然運転)もしくは過労運転として罰則と違反点数が科されます。
また、事故を起こさなくても居眠り運転が発覚した時点で罰則対象になります。
罰則内容は事故状況やドライバーの運転によって異なるので、解説する内容を参考にしてください。
居眠り運転が発覚した場合の罰則と違反点数
居眠り運転をした場合、事故を起こしていなくても、発覚した時点で安全運転義務違反(漫然運転)の対象になります。
罰則は違反点数2点と、車両別で反則金が科されます。金額は以下のとおりです。
普通自動車 | 9,000円 |
---|---|
大型自動車 | 12,000円 |
二輪車 | 7,000円 |
小型特殊自動車 | 6,000円 |
原動機付自転車 | 6,000円 |
反則金を支払わない場合、刑事訴追され「3か月以下の懲役または5万円以下の罰金」を科せられます。
物損事故の場合の罰則と違反点数
居眠り運転によって物損事故を起こした場合、軽度な事故であれば安全運転義務違反(漫然運転)として罰則が科されます。しかし、事故の原因や状況次第では過労運転と判定され、より重い罰則が科されます。
【安全運転義務違反(漫然運転)の罰則】
- 反則金6,000〜12,000円(車両ごとに異なる)
- 違反点数2点
【過労運転の罰則】
- 3年以下の懲役または50万円以下の罰金
- 覚醒剤などの薬物使用は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金
- 違反点数25点(免許取消(欠格期間2年))
過労運転と判定された場合、免許取り消しの行政処分が科されます。また、バスやトラックなどの事業車両による過労運転事故は、運営会社の営業停止を命じられるケースがあります。
人身事故の場合の罰則と違反点数
居眠り運転による人身事故を起こした場合、罰則はさらに重くなります。なお、事故の原因が故意か不注意かによって罰則内容が異なります。
【危険運転致死傷罪の罰則(故意)】
- 罰金刑はなく懲役刑のみ
- 人を負傷させた場合、1か月以上15年以下の懲役
- 人を死亡させた場合、1年以上20年以下の懲役
- 違反点数45〜62点(免許取消)
【過失運転致死傷罪の罰則(不注意)】
- 7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金(傷害が軽い時は、情状により刑を免除できる)
- 違反点数2〜20点(免許停止もしくは免許取消の可能性あり)
居眠り運転は、事故状況や原因によって非常に重い罰則が科されます。眠気を感じた時は、無理せず運転を中止し休憩をとるように心がけましょう。
2.居眠り運転が「過労運転」と判定されるケースもある
眠気の原因が、過労・疾患・薬物の服用によるものであれば、より罰則が重い「過労運転」として判定されるケースがあります。
なお、過労運転と判定された事故は、主にバスやトラックなどの事業車両によって引き起こされています。
そこで本章では、事業車両における過労運転の判定基準や、安全運転義務違反(漫然運転)との違いについて詳しく解説します。
安全運転義務違反(漫然運転)と過労運転の違い
安全運転義務違反(漫然運転)と過労運転の違いは以下のとおりです。
居眠り運転の違反種類 | 該当する法律 | 法律内容 |
---|---|---|
安全運転義務違反 (漫然運転) |
道路交通法第七十条 (安全運転の義務) |
車両等の運転者は、当該車両のハンドル、ブレーキその他装置を確実に操作し、道路、交通及び当該車両の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。 |
過労運転 | 道路交通法第六十六条 (過労運転等の禁止) |
何人も、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができない恐れがある状態で車両等を運転してはならない。 |
居眠り運転は、事故当時のドライバーの状態によって異なる法律で裁かれることを覚えておきましょう。なお、過労運転の判定基準はより細かく定められています。
過労運転と判定される基準
過労運転と判定するには、ドライバーの過労の度合いを見極める必要があります。その参考資料として、厚生労働省から「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」が公開されています。
1年間の拘束時間 | 1か月の拘束時間 | 1日の拘束時間 | 1日の休息時間 | |
---|---|---|---|---|
トラック運転者 | 原則:3,300時間 最大:3,400時間 |
原則:284時間 最大:310時間 |
13時間以内(上限15時間、14時間超は週2回までが目安) | 継続11時間以上が基本。9時間を下回らないこと。 |
バス運転者 | 原則:281時間 最大:294時間 |
13時間以内(上限15時間、14時間超は週3回までが目安) |
上記で定められた時間の超過が認められた場合、過労運転と判定される可能性が高いです。ドライバーだけでなく、事業者も罰則の対象となります。
参考:トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント(PDF形式)|厚生労働省 / バス運転者の労働時間等の 改善基準のポイント(PDF形式)|厚生労働省
3.居眠り運転による事故事例
本章では、実際に事業車両の居眠り運転によって起きた交通事故の内容を紹介します。
発生年月日 | 事故概要 | 原因 |
---|---|---|
平成27年1月9日 | 一般道道路を走行中の乗合バスが、交差点において道路左側の電柱に衝突。乗客1名が重傷を負い、18名が軽傷を負った。 |
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平成28年3月17日 | 高速道路のトンネルにおいて、中型トラックが渋滞中の車列に追突。計12台を巻き込み、トラックを含む5台の車両火災が発生。関連車両の運転者2名が死亡、運転者3名及び同乗者1名が軽傷を負った。 |
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平成29年8月25日 | 高速道路を走行中の大型トラックが、路側帯に駐車していたマイクロバスに衝突。その衝撃でマイクロバスは約6m下方に転落。マイクロバスの乗客1名と運転者が死亡し、乗客2名が重傷、12名が軽傷を負った。 |
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居眠り運転は、一瞬の判断の遅れによって重大な事故を発生させてしまいます。事故の状況によっては、過労運転と判定されるだけでなく、懲役刑や罰金などの重い罰則が科されます。居眠り運転の危険性を理解するとともに、安全運転を心がけていきましょう。
4.居眠り運転による事故が起きた時の対処手順
居眠り運転による事故を起こした際に適切な対応を行わないと、救護義務違反などの法律に該当し、さらに罰則が厳しくなるケースがあります。
そこで本章では、居眠り運転による事故が起きた時の対処手順を紹介します。緊急時に冷静な判断ができるよう、参考にしてください。
身の回りの安全を確保
居眠り運転による事故を起こしたら、直ちに停車しましょう。なるべく路肩に車両を寄せてハザードランプを点灯し、三角表示板や発煙灯を置いて、後続車に事故を知らせてください。
周囲に事故を知らせ、身の回りの安全を確保することで二次被害を防止できます。対処を怠った場合、危険防止等措置義務違反による罰則として「1年以下の懲役または10万円以下の罰金」が科されます。
状況を把握・救護
自身の怪我の状況を確認するとともに、相手車両や周辺の歩行者を巻き込んだ場合は、相手も怪我を負っていないか確認してください。状況によっては、直ちに救急通報しましょう。
この対処を怠った場合、救護義務違反による罰則として「10年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されます。
警察へ連絡
状況を把握し適切な対処を行ったら、速やかに警察に連絡しましょう。警察が到着したら事故状況を説明してください。
気が動転して逃走を図った場合、警察官への報告義務違反による罰則として「3か月以下の懲役または5万円以下の罰金」が科されます。
保険会社へ連絡
加入している自動車保険会社に電話し、居眠り運転による事故の旨を伝えてください。保険を利用できるか確認し、担当スタッフの指示を仰ぎましょう。また、車両が損傷によって走行不能の場合はレッカーを頼んでください。保険会社によってはレッカー代が補償されます。
5.居眠り運転を防ぐためにできること
居眠り運転による事故のリスクを下げるためには、日頃から質の良い睡眠をとり、体調を整えることが重要です。
もし運転中に眠気が襲ってきた場合は、以下のような対策を行ってください。
- 15〜30分程度の仮眠をとる
- 長時間運転する場合は2時間に1回休憩をとる
- カフェイン、糖分を含む飲料を飲む
- ガムを噛む、飴をなめる
- 体を動かす
- 音楽をかける、歌を歌う
- 窓を開ける
- 居眠り運転防止アラームを活用する など
すぐに実践できる方法ばかりなので、眠気を感じたら試してください。
また、居眠り運転の対策について下記の記事でより詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:『居眠り運転を防ぐには?事故が起きやすい特徴や眠気の対処法について解説』
6.まとめ|居眠り運転の罰則は事故状況で変わる、安全運転の心構え
本記事では、居眠り運転の罰則や事故事例、事故の対処手順について紹介しました。
居眠り運転による事故の多くは、安全運転義務違反(漫然運転)による罰則を科されますが、事故状況や原因によって、より罰則が重い過労運転と判定されます。過労運転は、免許取り消しの行政処分に加えて懲役や罰金が科されます。
日頃から運転する機会が多い方や、事業車両のドライバーの方は安全運転の意識を高めることが大切です。
本記事をきっかけに、居眠り運転の危険性への理解を深め、事故のリスクを回避していきましょう。