飲酒した状態で電動キックボードに乗るのは交通違反|罰則や事故の事例を紹介
最近、街中で電動キックボードに乗っている人を見かけることが増えてきました。
LUUPなど手軽に利用できる便利なサービスが増え、気軽に移動ができるようになったことが考えられます。
このような便利な移動手段が増えたことで気になるのが「飲酒運転」です。
実は、電動キックボードでの飲酒運転も車や自転車と同様で、厳しく罰せられる可能性が高く、場合によっては逮捕や処分を科されることもあります。
本記事では電動キックボードで飲酒運転をした場合の罰則や交通ルールについて解説します。
目次 / このページでわかること
1.電動キックボードの飲酒運転は交通違反
結論から述べると、電動キックボードでの飲酒運転は交通違反です。
気軽に乗れる電動キックボードですが、飲酒運転に関する情報を正しく理解をすることが重要です。
次で詳しく解説しますが、電動キックボードの飲酒運転には罰金などの罰則の可能性があります。お酒を飲んだ場合は、公共交通機関やタクシーを利用するようにしましょう。
電動キックボードでの飲酒運転は交通違反
くり返しになりますが、電動キックボードでの飲酒運転は交通違反となります。
道路交通法第65条第1項で「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」と定められています。電動キックボードはこの「車両等」に該当し、電動キックボードは飲酒運転に該当します。そのため、電動キックボードでの飲酒運転は自動車と同様に違法行為となります。
また自動車による飲酒運転は、「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」に分類されていますが、電動キックボードも同様です。
参考:警視庁「飲酒運転の罰則等」
飲酒運転による罰則、罰金と免許取り消しのリスク
電動キックボードは、自転車と同様に運転免許証は必要ありませんが、免許停止処分が下される可能性があります。免許が必要無ければ、自動車免許に影響がないと思われがちですが、道路交通法103条第1項8号にも記載があり、電動キックボードを飲酒した状態で運転し事故等を引き起こした場合、自動車運転免許の停止処分が下される可能性があります。
参考:道路交通法(e-Gov 法令検索)「免許の取消し、停止等」
2.電動キックボードでの飲酒運転による事故の3つの事例
本章では、実際に電動キックボードでの飲酒運転関連の事例を3つ紹介します。
電動キックボードが日常的に使われるようになってまだ日が浅いですが、危険な運転が目立ち始めています。
本事例を参考に、安全への意識を高めていきましょう。
都内で飲酒運転一斉取締り 電動キックボードも5人検挙
2024年7月に東京都内で飲酒運転の取締りが一斉におこなわれ、今回の取締りで酒気帯び運転の疑いで12人が検挙されましたが、その中の5人が電動キックボードの利用者でした。
繁華街で酒を飲んだあと帰宅する際に乗るケースが多く、利用者を逮捕したケースもありました。
警視庁交通執行課は「電動キックボードも車両だという意識を持ってもらいたい。『飲んだら乗らない』を徹底してほしい」と呼びかけています。
参考記事:NHKニュース「都内で飲酒運転一斉取締り“電動キックボード飲酒事故目立つ”」
電動キックボード、酒気帯び運転容疑 自称・市職員を現行犯逮捕
2024年5月に福岡県内で、自称春日市職員の女性を酒気帯び運転の容疑で現行犯逮捕しました。
この女性は「電動キックボードを飲酒運転してはいけないと知らなかった」と供述しています。基準値の4倍近いアルコールも検出され事故がなかったことが不幸中の幸いと言えるでしょう。
春日市は事実関係を確認中とした上で、「事実であれば市職員として決して許されないことであり、市として大変申し訳なく思っている」とコメントしました。
参考記事:朝日新聞デジタル「電動キックボード、酒気帯び運転容疑 自称・市職員を現行犯逮捕」
電動キックボードで飲酒運転 40代警察官を略式起訴
2024年4月にパトロール中の警察官が電動キックボードを運転している男(京都府警刑事部所属40代男性警部補)に呼気検査をしたところ、基準値を上回るアルコールを検出しました。同僚らと飲酒し、電動キックボードを使用し帰宅途中だったとのことです。
供述では、「歩いて帰るより早く帰れるという安易な気持ちから運転した」と説明しました。現役の警察官の飲酒運転摘発事例の為、不祥事として大きく取り上げられました。
参考記事:産経ニュース「居酒屋で飲酒後に電動キックボード運転か 京都府警警部補を書類送検へ」
3.道路交通法の改正と電動キックボードの規制強化
2023年7月道路交通法の改正で、電動キックボードが「特定小型原動機付自転車(特定小型原付)」に変更となり、規制強化が行われました。
本章では、法改正の内容を詳しく解説します。
2023年7月1日に施行された基準
2022年4月に道路交通法の改正で「原動機付自転車(原付)」に該当していた電動キックボードのうち、条件を満たすものが「特定小型原動機付自転車(特定小型原付)」に変更されることが公布され、その後法改正は2023年7月1日より施行されました。
特定小型原動機付自転車と原動機付自転車の違いについて、下記表にまとめましたので参考にしてください。
区分 | 原動機付自転車 | 特定小型原動機付自転車 |
---|---|---|
定格出力 | 特定小型原動機付自転車以外のもの | 0.6KW以下 |
長さ | 1.9m以下 | |
幅 | 0.6m以下 | |
高さ | ‐ | |
速度制限 | 30㎞/h | 20㎞/h |
運転免許 | 必須 | 不要 |
ヘルメット | 必須 | 努力義務 |
自賠責保険 | 必須 | 必須 |
ナンバープレート | 必須 | 必須 |
車道の走行 | ○ | ○ |
歩道の走行 | ✕ | ○(6km/h以下) |
自転車レーンの走行 | ✕ | ○ |
年齢制限 | 免許に準ずる | 16歳以上 |
特定小型原動機付自転車には必要な保安部品があります。
電動キックボードを日常的に使用する方は下記部品を覚えておきましょう。
- 前照灯(ヘッドライト)
- 警音器(クラクション等)
- バッテリーの安全性(PSEマーク等の基準への適合を確認)
- 最高速度表示灯※1
- 制動装置(ブレーキ)
- 方向指示器(ウインカー)
- 尾灯、制動灯(テールランプ、ブレーキランプ)
- 後部反射器(リフレクター)
その他満たすべき基準
- 走行安定性(段差等を安全に走行できること)
- スピードリミッター(設定最高速度を超えて加速しないこと、走行中は設定最高速度の変更ができないこと)
※1 歩道を6km/h以下で走行するモードを有しないものについては、点滅機能は不要
引用元:国土交通省「特定小型原動機付自転車について」
ナンバープレート義務化の動向
先ほど記載したとおり、道路交通法が一部改正され、車両区分に「特定小型原動機付自転車」が新設されました。そのことで、2023年年7月1日から、要件を満たす電動キックボード等についてはナンバープレートの取得が義務化されています。従来の原動機付自転車のナンバープレートの取得方法と同様に、軽自動車税の申告が必要になります。
飲酒運転取り締まりの強化施策
前章でも紹介しましたが、警視庁も電動キックボードの飲酒運転に対して警戒を強めており、取締りを強化しています。
東京都内で今年1月〜5月に電動キックボードを利用した人が、もっとも過失の重い「第一当事者」となった人身事故が56件あり、25%にあたる14件が飲酒運転だったと言われています。
そのため、2024年7月に警視庁による飲酒運転の取締りが、都内各地でおこなわれ、5人が飲酒運転の疑いで検挙されました。
参考記事:NHKニュース「都内で飲酒運転一斉取締り“電動キックボード飲酒事故目立つ”」
電動キックボードのシェアリング事業を展開するLUUPでは、飲酒運転などの重大な交通違反で一度でも摘発された場合は、アカウントを無制限で利用停止にするといった対策も講じています。
参考:LUUP「電動キックボード走行時の違反行為」
【2024年9月19日】電動キックボードによる事故の17%が飲酒運転
2024年に入ってから6月までに電動キックボードによる事故が全国で134件発生し、そのうち23件(17%)は飲酒運転だったことが2024年9月19日警察庁のまとめで分かりました。また、23件のち16件は午前0時台から午前5時台に発生していたとのことです。
上記期間で起きた自転車や原付バイクの事故のうち、飲酒運転はいずれも1%で電動キックボードの交通ルール違反が極めて多いようです。
電動キックボードは特定小型原動機付自転車に分類されていることで運転免許は不要ですが、酒気帯び運転や酒酔い運転は違法行為です。
さらに、電動キックボードが特定小型原動機付自転車に分類された2023年7月から1年間の状況を調べたところ、事故が全国で219件発生し226人が負傷しています。幸い、特定小型原動機付自転車の基準を満たした電動キックボードによる死亡事故はなかったようです。都道府県別では、東京都がもっとも多く75%(165件)を占め、続いて大阪府が17%(38件)だったようです。
電動キックボードのシェアリング大手2社の稼働台数が、今年7月時点(1万4860台)と昨年6月末時点(5600台)と比べると3倍近く増えたことで、交通事故や交通違反も増加していることが考えられます。
参考記事:日本経済新聞「電動キックボード、事故の17%が飲酒運転 違反なお横行」
4.電動キックボードの安全運転の3つのポイント
電動キックボードはとても便利なものですが、事故の危険もあります。事故を未然に防ぐためにも、1人1人の安全運転が欠かせません。
安全運転のポイントを3つ上げていきます。
特定小型原動機付自転車としての運転ルールを守る
特定小型原動機付自転車としての運転ルールを守ることがとても大切です。
運転ルールとして、以下の8つが挙げられます。
1 | 飲酒運転は禁止 |
---|---|
2 | 電動キックボードを乗っている時は車道を走行 |
3 | 車道の逆走は禁止 |
4 | 「自転車を除く」「軽車両を除く」と書かれた標識のある一方通行の逆走は可能 ※ただし「特定原付は通行不可」と併記されていた場合には通行できません |
5 | 交差点での右折の際は「二段階右折」が必要 |
6 | 二人乗りは禁止 |
7 | 運転中にスマートフォンでの通話や画面を見ながらの運転は禁止 |
8 | イヤホンやヘッドホンをして音楽等を聴きながらの運転は法令違反の可能性 |
知らなかったでは済まされないので、しっかりと把握しておきましょう。
速度制限に注意する
電動キックボードは「特定小型原動機付自転車」という車両区分になり、車道走行時の最高速度は20km/hに定められています。加えて特定の標識(※最高速度6km/hでの通行が可能な道の標識)がある歩道の走行時に限り、最高速度6km/hで走行することは可能です。
参考:LUUP「LUUPの電動キックボードに乗るために必ず知っておくべき交通ルール」
ヘルメットの重要性を理解する
交通事故の被害を軽減するには、頭部を守ることがとても重要です。
自転車乗用中の交通事故で亡くなった方の、約5割が頭部に致命傷を負っているというデータが下記のとおりです。
引用元:警察庁「頭部の保護が重要です~自転車用ヘルメットと頭部保護帽~」
また自転車乗用中の交通事故において、ヘルメットを着用していなかった方の致死率は、令和元年から令和5年までの5年間で着用していた方に比べて合計で約1.9倍高くなっています。
引用元:警察庁「頭部の保護が重要です~自転車用ヘルメットと頭部保護帽~」
上記データからも、ヘルメットを着用し頭部を保護することが重要だということが分かります。
参考:独立行政法人国民生活センター「自転車と特定小型原動機付自転車で着用が努力義務化された乗車用ヘルメット(PDF)」
5.電動キックボードの普及と事故リスク
ここまで解説した通り、電動キックボードは認知や普及が急速に進んでます。
ただ、普及と同時に交通事故も増えているのが実情です。事故の要因も含めて解説します。
電動キックボードの普及率と交通事故の関係
電動キックボードの認知度は9割を超えていると言われており、その中でも、利用率は1割程度となっており徐々に広がりをみせています。
また警察庁の発表では、年々電動キックボードに関する事故が増えているとの発表があります。
参考:警察庁「電動キックボードに関連する交通違反・事故の発生状況(PDF)」
事故原因と予防策について
電動キックボードの利用者の交通違反で取締りを受けた中でもっとも多かったのが、信号無視だと言われています。また、歩道への進入や逆走などの「通行区分違反」も多く発生しています。
上記の事からも、事故の原因が信号無視や「通行区分違反」などの交通ルールを破ったことから発生しやすくなっていることもわかります。
電動キックボードの利用者の中には「自転車感覚で自由に乗れる」、「車ほど交通ルールが厳しくない」と考えられることも多いです。当たり前の話ですが、交通ルールとマナーを守るのが大切です。
それに加えて努力義務のヘルメットの着用がとても重要になります。前章でも述べましたが、着用している人に比べて着用していない人は致死率が約1.9倍高くなっています。努力義務ではありますが、自分自身を守る意味でもヘルメットを着用することが望ましいです。
参考:警察庁「特定小型原動機付自転車に関する交通ルール等について」
6.まとめ
この記事では電動キックボードの罰則や現状について記載をしました。
街中で見かけることの多い電動キックボードの交通ルールは、誤って認識されていた事も多かったのではないでしょうか。
交通社会では、道路を利用するすべての人が尊重し合って利用することが大切です。
本記事で電動キックボードのルールや現状を知っていただき、お互いを思いやれるような安全な交通社会を目指していきましょう。