自転車で飲酒運転した場合の罰則は?免許停止や事故を起こした場合の対処について
自動車での飲酒運転はもちろん違法行為になることを皆さんご存じかと思いますが、2024年11月1日から酒気帯び運転も違法行為となり罰則対象となりました。
さらに、この違法行為により厳しく罰せられることもありますが、こちらもご存じでしょうか?
場合によっては逮捕され、処分を科されることもあります。
自転車での飲酒運転にはどのような罰則や過失があるのでしょうか?
本記事では自転車で飲酒運転をした場合の罰則や、事故を起こした場合の過失などについて解説します。
目次 / このページでわかること
1.そもそも自転車も飲酒運転になる理由は?
自転車に乗るための運転免許は必要ありませんが、自動車と同じ公道を走る自転車も飲酒運転に該当することはご存じでしょうか。
気軽に乗れる自転車の飲酒運転についても正しく理解しておく必要があります。
自転車は「車両」扱いである
自転車は道路交通法上で「軽車両」に分類されます。そのため、公道を走行する際には車両としてルールを遵守する義務が伴います。たとえ乗っているのが自転車だったとしても、自動車と同様に飲酒運転は違法行為になります。
道路交通法第65条で禁止されている
道路交通法第65条には「酒気帯び運転等の禁止」について記載があります。
一 何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
二 何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。
引用元:道路交通法 第65条(酒気帯び運転等の禁止)|e-Gov法令検索
自転車は「軽車両」に分離されるため、車両等に該当することになります。
では「軽車両」に分類される自転車はどのような罰則があるのでしょうか。
次の章で自転車で飲酒運転した場合の罰則について解説します。
2.自転車で飲酒運転した場合の罰則は?
実際に自転車で飲酒運転をした場合、どのような罰則があるのでしょうか?
飲酒運転にも2種類あり「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」の2つに分類されます。本章では、「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」に分けて解説します。
自転車で「酒酔い運転」をした場合の罰則
まず、「酒酔い運転」をした場合の罰則についてです。
「酒酔い運転」はアルコール濃度の検知値とは厳密な関係はなく、アルコールの影響によって正常な運転ができないおそれがある状態で運転することを言います。
明確な数値の基準はないため、「会話が成立するか」「まっすぐ歩けるのか」などの確認が行われます。
今回の表題である自転車は「軽車両」に含まれるので罰則の対象になります。
罰則は「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」と規定されています。
自転車で「酒気帯び運転」をした場合の罰則
次に「酒気帯び運転」をした場合の罰則についてです。
酒気帯び運転は酒酔い運転と違い、数値の基準があるものになります。
酒気帯び運転は「呼気1リットル当たりのアルコール濃度が0.15mg以上、もしくは血液1ml当たりに0.3mg以上のアルコール濃度が検出されたとき」と規定されています。
上記のような規定がありますが、道路交通法上「軽車両は除く」と定められていたため、自転車の酒気帯び運転は禁止されていたものの罰則はありませんでした。しかし、2024年11月1日から酒気帯び運転は罰則付きの違反とすることとなりました。罰則について詳しくは次の項目で解説します。
自転車であっても酒気帯び運転は大変危険です。事故があってからでは遅いので、罰則の有無にかかわらず絶対にやめましょう。
関連記事:『酒気帯び運転(飲酒運転)とは|基準や処分・罰則内容をわかりやすく解説』
【2024年5月17日】自転車違反に罰則金|改正道路交通法成立
16歳以上の自転車の交通違反に反則金納付を通告できる交通反則切符(青切符)制度の導入を柱とした改正道路交通法が5月17日参院本会議で可決、成立しました。青切符制度は公布から2年以内(=2026年5月まで)に、ながら運転、酒気帯びなどの罰則は2024年11月1日に施行が開始しました。
酒気帯び運転、ながら運転の違反を繰り返した場合、自転車運転者講習の受講を命令できる道交法施行令の改正案も公表し、6月28日からパブリックコメントを実施しました。そして、11月1日から施行されることとなりました。
自転車の青切符は、16歳以上の運転者による比較的軽微な115種類程度の違反が対象となります。酒気帯び運転などの24種類は対象外で、反則金の額は原付バイクと同等にする方針で、施行までに政令で定めていきます。
①取り締まり対象となる自転車の主な違反(赤切符)
- ・酒酔い運転
- ・酒気帯び運転
- ・あおりなどの妨害運転
- ・スマホなどの使用で危険を生じさせた場合
2024年11月から施行された自転車の危険運転に対する罰則について、詳しくは下記のとおりです。
運転中のながらスマホ 違反者 6月以下の懲役又は10万円以下の罰金 交通の危険を生じさせた場合 1年以下の懲役又は30万円以下の罰金 引用元:自転車に関する道路交通法の改正について|警視庁
酒気帯び運転およびほう助 違反者 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 自転車の提供者 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 酒類の提供者・同乗者 2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
②取り締まり対象となる自転車の主な違反(青切符)
(反則金額は5千円~1万2千円が中心)
- ・信号無視
- ・指定場所一時不停止
- ・通行区分違反(右側通行、歩道通行など)
- ・横断歩行者妨害
- ・スマートフォンや携帯電話などの使用
- ・公安委員会遵守事項違反(傘差し運転など)
さらに、2024年11月1日に施行された道路交通法の改正では、ペダルを備えた原動機付自転車「モペット」をエンジンやモータを止めてペダルだけで走行した場合でも、原付バイクの扱いとなることも明文化しました。
参考記事:東京 新宿 改正道路交通法施行 モペット重点的取締り|NHK NEWS WEB
改正道交法施行「ながら自転車」や酒気帯び厳罰化「モペット」ルール明確化|産経ニュース
上記で解説したとおり自転車を運転中の「ながらスマホ」「飲酒運転」の厳罰化は11月から施行されました。施行前にひと足早く兵庫県警が自転車の飲酒検問を行いました。飲酒検問では、自転車の利用者にアルコール検知器を使用した検査が行われたほか、新しい罰則が書かれたチラシが配られ、厳罰化の周知と危険性を訴えていました。
3.自転車の飲酒運転で事故を起こした際の過失の割合について
実際に自転車の飲酒運転で事故をした場合の過失の割合はどうなるのでしょうか?
事故相手を「歩行者」「自転車」「自動車」に分けて解説します。
自転車と歩行者で事故を起こした場合
自転車と歩行者の事故は、自転車の過失の割合が大きくなる可能性が非常に高いです。
急な飛び出しやその他の要素により、歩行者にも過失加算がされることもありますが、横断歩道上の事故の場合、基本的な歩行者の過失割合は0%、自転車が100%とされています。
上記の要素に加え、酒気帯び運転には10%、酒酔い運転には20%が加算されます。
自転車と自転車で事故を起こした場合
自転車同士の事故は、正面衝突事故であれば過失割合は「50% 対 50%」になります。
実際には、事故当時の信号や交差点の条件、一時停止の有無などが加算されます。
上記の要素に加え、酒気帯び運転には10%、酒酔い運転には20%が加算されます。
自転車と自動車で事故を起こした場合
自転車で自動車と事故を起こした場合、自動車の過失割合が高くなる傾向にあります。
自転車は自動車よりも大怪我をする危険性が高いため、被害者保護のために割合が低く設定されています。
しかし、自転車が飲酒していた場合は重大な過失と認められ、酒気帯び運転には10%、酒酔い運転には20%が加算されます。基本的な過失割合が0%の事故であっても、10%~20%過失割合が加算される可能性はあります。
4.自転車の飲酒運転で事故を起こした場合の対処方法
自転車の飲酒運転でも罰則があることを説明させていただきました。
飲酒後の運転は許されないということを念頭に置いたうえで、それでも飲酒運転で事故を起こしてしまった場合の対処法について解説します。
加害者になった場合は弁護士に相談する
自転車での飲酒運転で事故を起こした場合、飲酒運転による罰則だけでなく、他の道路交通法違反にも問われる可能性があります。
また、被害者への賠償をした上で示談交渉も必要になります。自動車保険等の「個人賠償責任保険」や示談交渉付きの自転車保険に加入している場合は、保険会社に被害者との交渉を任せることができますが、加入していない場合は自分での交渉が必要になります。
飲酒運転が原因の交通事故の場合、当然ですが通常の事故よりも飲酒運転者側の処罰が厳しくなります。そのため、当事者同士の示談交渉は大変難しいものになります。
しかし、早急に示談がおこなわれることにより、処罰の軽減などの可能性が出てくることも事実です。そのため早い段階で弁護士に相談することが望ましいでしょう。
被害者になった場合は警察へ連絡を
飲酒事故に遭った際は、警察や保険会社に連絡をしましょう。
過失割合については、過去の判例なども参考に話し合いがされますが金額も大きく変わるので、安易な妥協は避けた方が無難です。飲酒事故になりますので、道路交通法違反になります。交通事故の被害者としては相手の過失を明確に主張することも必要でしょう。
弁護士に慰謝料請求などのサポートをしてもらうのも、1つの方法です。
5.飲酒した状態で自転車を押すのは問題ない?
ここまで自転車の飲酒運転についてお話してきましたが、万が一飲酒後に自転車で移動をしなければならない状況に直面した場合はどうすればいいのでしょうか。
選択肢の1つとして手押しで自転車を運ぶという選択肢があります。自転車に乗るという定義は、自転車を操作しながら移動することを指します。そのため、自転車を手押しで運ぶのは飲酒運転の適用範囲外としてみなされます。
もちろん飲酒状態ではありますので、手押しで自転車を運ぶ際にも周囲の状況や安全性に留意することがとても重要になります。どうしても自転車で移動をしないといけない場合は、手押しで自転車を運ぶようにしましょう。
6.自転車の飲酒運転で運転免許が停止することもある?
もし自転車で飲酒運転をしてしまった場合、自動車の免許資格が停止される可能性があることはご存じでしょうか。
自転車は運転免許がないので、自動車免許には影響がないと思われがちですが、免許資格が停止されることもあります。
その根拠に、道路交通法103条第1項8号に下記の記載があります。
免許を受けた者が(中略)当該各号のいずれかに該当することとなつた時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は、政令で定める基準に従い、その者の免許を取り消し、又は六月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができる。
八 (前略)免許を受けた者が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき。
引用元:道路交通法 第103条(免許の取消し、停止等)|e-Gov法令検索
この道路交通法により、自転車の飲酒運転によって重大な事故を起こした場合には、自動車運転免許の停止処分が下る可能性があるということになります。
これにより、自転車だからといって飲酒運転はしてはならないという事を伝えています。
飲酒運転は、それ自体が重要な危険を伴います。
「自転車だから飲酒運転してもいいか」というような軽率な行動で、自動車の運転免許まで停止される可能性があるのです。法的にも社会的にも厳しく取り締まりがされている証になるでしょう。
7.まとめ
この記事では「自転車の飲酒運転」の罰則や事故をした場合の過失について記載をしました。自転車での飲酒運転は免許がないので飲酒運転をしても問題ないと考えられている方も多かったのではないでしょうか。
しかし、自転車であっても飲酒運転で事故を起こしてしまうと大きな過失や場合によっては運転免許の停止といった処分が科されることもあります。それだけでなく、事故の加害者になることもあります。
自動車でも自転車であっても、「お酒を飲んだら乗るな」というところを再度徹底していただくことで、飲酒運転の危険性や多大な影響を考えていただけるきっかけになれば幸いです。