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粕汁のアルコール度数は?飲酒運転になってしまう可能性と妊婦や子どもへの影響について

酒粕(さけかす)の歴史は古く、平安時代の書物には「糟湯酒(かすゆざけ)」という酒粕の原型である飲み物の存在が記録されています。

近年は、高血圧予防や便秘解消、肥満予防に効果的と期待され、注目が高まっていますが、酒粕の摂取には注意点があります。

そこで本記事では、酒粕を食べる場合の注意点、妊婦や子どもへの影響について詳しく解説するとともに、酒粕の特徴や種類、アルコールの有無について詳しく解説します。

酒粕に含まれるアルコールについて正しく理解し、リスクを避けて食事に取り入れましょう。

【酒粕とは】
日本酒を造る際に出る白い固形の副産物であり、もろみ(酵母や麹菌などの働きで発酵・熟成させている途中にできる固形物)を搾った後に残るもので、栄養価が高く、旨味成分も含まれています。

【粕汁とは】
酒粕を溶かし入れて煮込んだ日本の汁物料理。出汁(だし)に酒粕を溶き、味噌や醤油などで味を整え、主に魚(鮭や鰤など)や大根、人参、こんにゃくなどの具材を入れて作られます。

1. 粕汁はアルコールが含まれている可能性がある

酒粕は発酵食品ですが、アルコールが含まれており、製品によってはチューハイやビールよりも高いアルコール度数の場合があります。

参考:よくいただくご質問|山田酒造食品株式会社

酒粕を活用した料理は味わい深く、和え物、汁物、肉・魚料理、野菜炒めなど、さまざまな料理に活用できます。

また、栄養価が高く、美容や夏バテなどに効果的として注目されています。

ただし、熱に弱い栄養素が含まれているため、酒粕の効能を最大限に取り入れたい方は、生もしくは低温調理がおすすめです。

なお、加熱調理した場合でも微量のアルコールが含まれているため、体質的にお酒に弱い方は、顔が赤くなったり、酔いが回ったりする可能性があります。

関連記事:『お酒で顔が赤くなるのはなぜ?強い人・弱い人の違いや赤くならない方法を解説

2. そもそも酒粕とは?

酒粕とは、日本酒を造る際にできる副産物です。

日本酒は米や米麹が原料であり、発酵熟成させた原料を搾った液体が「日本酒」、搾りかすが「酒粕」になります。

原料や製造工程によって、種類やアルコール度数も異なるため、知れば知るほど、酒粕の奥深さや魅力に引き込まれるでしょう。

そこで本章では、酒粕の特徴について詳しく解説します。

2-1 酒粕の種類は?

酒粕の種類は主に3つです。

【酒粕の種類】
板粕

スーパーなどでよく見かける、薄く四角い板状の酒粕です。

日本酒を搾る際に、自動圧搾機を用いることで板状の酒粕が残り、これが適当な大きさにカットされて販売されています。

表面が少し乾燥して固いため、調味料として使う際は練ったり、水でふやかしたりするのがおすすめです。

ほかにも、そのままの状態で板粕に味噌をぬり、トースターで焼いておつまみとして食べるのもおすすめです。

クラッカーの代用品として食べる人も多く、クリームチーズやナッツ類、はちみつなどをトッピングして、洋風にアレンジするのも楽しいでしょう。

バラ粕

圧搾機からこぼれたり、柔らかすぎて板状にならなかった酒粕を集めたものです。

品質は板粕と同じですが、水分量が多いため、料理に馴染みやすく使いやすいのが特徴です。

味噌汁や鍋、野菜スティックのディップソースとして活用するのがおすすめです。

また、馴染みやすい特徴を活かして、生チョコレートやチーズケーキなどに利用する人も多いです。

練り粕(踏込粕・土用粕)

酒粕を熟成させ、柔らかく練り上げたペースト状の酒粕です。

バラ粕よりも食材に馴染みやすいため、漬物や肉・魚の漬け込みに利用されます。

また、酒粕を半年程度、熟成発酵させたものを踏込粕や土用粕と言い、奈良漬けなどに利用されています。

踏込粕は発酵が進んでいるため、茶色がかった色をしており、コクや甘みが強くなるのが特徴です。

上記のほか、最近では甘酒用に加工された酒粕が販売されており、手軽に酒粕を楽しめます。

関連記事:『甘酒はアルコールありなしの2種類|飲酒運転にならないように注意するポイントを解説

2-2 酒粕のアルコール度数は?

搾りたての酒粕には、100gあたり約8〜9%程度のアルコールが含まれています。

チューハイやビールよりもアルコール度数が高いため、生の酒粕を食べる際は注意が必要です。

加熱された酒粕料理の場合、アルコールは多少飛びますが、加熱具合で左右されるため、同じく注意が必要です。

【加熱した酒粕料理のアルコール量】
食品名 100g中の純アルコール量 比較
酒粕 9.3g 5.5%のビール212ml飲んだアルコール量と同じ
粕汁 1.8g 粕汁お椀1杯200g食べると、5.5%のビール82ml飲んだアルコール量と同じ
酒粕甘酒 1.7g 酒粕甘酒200g飲むと、5.5%のビール78ml飲んだアルコール量と同じ

2007年に財団法人食品分析センターが行った分析結果では、加熱した酒粕料理にもアルコール分が残っており、摂取量によってはビールを飲んだ際と同等になることが分かっています。

加熱して酒粕のアルコールを飛ばした場合でも、摂取量が増えることで酔っ払う可能性がありますので、注意しましょう。

2-3 酒粕は栄養素が豊富

酒粕には、健康に良いとされる栄養素が豊富に含まれています。

主な栄養素や期待される効果は以下のとおりです。

【酒粕に含まれる主な栄養素と期待される効果】
栄養素 期待される効果 説明
ペプチド 高血圧予防 血圧の上昇を抑える「酒粕ペプチド」が含まれ、1〜2か月かけてゆっくりと血圧を低下させる効果があると言われ、高血圧の予防になるとして期待されています。
食物繊維 便秘改善 酒粕には不溶性食物繊維が含まれており、腸内で水分を吸収・膨張し、腸のぜん動運動を促す効果があると言われています。
ビタミンB群 美肌効果 ビタミンB1は疲労回復、ビタミンB2はニキビ予防や肌質改善、ビタミンB6は肌代謝を助ける栄養素として知られています。最近では、酒粕の栄養素を利用した美肌パックや美容液なども市販されています。
アデノシン 冷え性改善 血管を拡張させる働きがあり、体の末端まで血行が改善するとされています。体の巡りが改善するため、冷え性や肩こり、頭痛などにも効果的と言われています。
レジスタントプロテイン 生活習慣病の予防 食物繊維と似た働きを持つタンパク質であり、腸内の善玉菌を増やして腸内環境を改善したり、コレステロール値を下げる効果があると言われています。

上記以外にも、コラーゲンを活性化させるα-EGや、肌の潤いを保つグルコシルセラミド、腸内環境を改善させるオリゴ糖なども含まれています。

3. 粕汁を食べる場合は飲酒運転に注意

酒粕にはアルコールが含まれているため、食後に運転する予定がある方は、念のために酒粕料理を食べないことをおすすめします。

うっかり酒粕料理を食べてしまった場合は、運転を控えるか、アルコールチェッカーでアルコール濃度を計測し、酒気帯び運転にならないことを確認しましょう。

近年、飲酒運転は重大違反として認識され、取り締まりも強化されているため、「酒粕のアルコールぐらい平気だろう」と思って運転した場合、重い処分が科される可能性があります。

なお、飲酒運転には「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」の2種類があり、判断基準や罰則内容が異なります。

【飲酒運転の罰則内容】
違反行為 判断基準 行政処分 違反点数
酒酔い運転 正常な運転ができないおそれがある状態(まっすぐ歩けない、受け答えがおかしいなど) 免許取り消し(欠格期間3年) 35点
酒気帯び運転① 呼気中アルコール濃度1リットルあたり0.15mg以上0.25mg未満 免許停止(停止期間90日) 13点
酒気帯び運転② 呼気中アルコール濃度1リットルあたり0.25mg以上 免許取り消し(欠格期間2年) 25点

上記の表に記載していませんが、行政処分に加えて罰則(懲役または罰金)も科せられます。詳しくは以下の関連記事で確認してください。

関連記事:『飲酒運転の概要と現状について|罰則と行政処分・防止するためにできること

また最近では、電動キックボードやモペット、自転車などの飲酒運転に対する取り締まりが強化されています。これらの乗り物も道路交通法の適用を受けるため、「車じゃないし、少しなら大丈夫」と油断せず、飲酒後の運転は絶対に避けましょう。

以下の関連記事では、電動キックボードや自転車の飲酒運転の罰則、行政処分について詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。

関連記事:
自転車の飲酒運転で捕まった人はどうなる?実際の3つの事例を交えて解説
飲酒した状態で電動キックボードに乗るのは交通違反|罰則や事故の事例を紹介

3-1 酒粕料理・粕汁を食べて検挙された事例

過去、酒粕料理や粕汁を食べた後に運転し、飲酒運転(酒気帯び運転)で摘発された事例を紹介します。

尼崎市の男性(58)が粕汁を2杯飲んで飲酒運転疑いで摘発

2019年6月、兵庫県尼崎市で、58歳の男性が酒気帯び運転の疑いで現行犯逮捕される事案が発生しました。

男性は路上に停車中の車内で職務質問を受け、基準値を大幅に上回る呼気1リットル中0.60ミリグラムのアルコールが検出されました。

男性は、「仕事帰りに立ち寄った店で粕汁を飲んだ」と話しているものの、真相は不明です。

酒気帯び運転は、呼気1リットル中0.15ミリグラム以上で適用されるため、この数値は極めて高いものです。

粕汁だけでこの数値になるかは疑問ですが、どちらにせよ、飲酒の「自覚」の有無にかかわらず、基準値を超えれば検挙対象となりますので、言い逃れは難しいでしょう。

参考:(事例紹介)かす汁を飲み酒気帯び運転で逮捕された事例|弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所

神戸市教諭が粕汁で摘発

2006年9月、神戸市の小学校教諭(52)が、友人の家で粕汁を2杯食べた約2時間後に検問を受け、酒気帯び運転の基準値(呼気1L中0.15mg)のアルコールが検出され摘発されました。

教諭は飲酒を否定し、「粕汁のせい」と主張しています。

後に、摘発の事実を上司に報告しなかったことを理由に、停職6か月の懲戒処分を受けました。

粕汁によって酒気帯び運転の基準値に達する可能性があることを示す事例となりました。

参考:酒かす汁2杯食べて「飲酒運転検挙」の真相|J-CASTニュース

4. 粕汁が与える妊婦や子どもへの影響

妊娠中のアルコール摂取は、少量でも胎児に悪影響を及ぼす可能性があると言われています。

ひと昔前までは、少量であれば胎児に影響はないと考えられていましたが、近年の研究では、少量の飲酒であっても胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)の発症リスクが高まる可能性があることが示されています。

ほかにも、脳萎縮や発育不全、妊婦のうつ症状の悪化と関連すると言われています。

また、未成年者がアルコールを摂取した場合でも、脳萎縮や発育への影響などのリスクが高まるため、酒粕の摂取には注意が必要です。

たとえば酒粕甘酒を200g飲んだ場合、5.5%のビールを78ml飲んだのと同じ量のアルコールを摂取することになります。

未成年者は発育途中であるため、少量のアルコールでも深刻な影響を与える可能性があり、とくに注意が必要です。

またアルコールは、臓器障害やアルコール依存症、急性アルコール中毒などのリスクを高めるため、大人よりも影響を受けやすい未成年者は、原則として酒粕の摂取を控えることが推奨されます。

どうしても未成年者に与える機会がある場合は、酒粕の配分を減らし、しっかりと加熱してアルコール分を減らすようにしましょう。

関連記事:『妊娠中にノンアルコールビール(飲料)を飲んでも大丈夫?洋酒入りお菓子は?注意点を解説

参考:10.妊娠中の飲酒について|公益社団法人 日本産婦人科医会

4-1 妊婦や子どもにも安心なアルコール不使用の米麹甘酒

「健康のために、自然由来の高い栄養価のある食品を取り入れたい」という方には、米麹甘酒がおすすめです。

米麹甘酒は栄養価が高く、アルコールを含まないため、妊婦や小さい子どもでも安全に飲むことが可能です。

夏バテ予防や熱中症対策にも効果的とされ、スーパーやコンビニでも手軽に購入可能です。

購入時は、パッケージに「米麹甘酒」と記載された商品を選ぶように注意しましょう。

関連記事:『甘酒はアルコールありなしの2種類|飲酒運転にならないように注意するポイントを解説

5. アルコールが残りやすい酒粕を使った料理の傾向

酒粕には、製造工程上、アルコール分が8〜9%程度残っています。

料理をする場合、このアルコールは加熱により揮発しますが、調理法や加熱時間によって残りやすい場合があります。

特に、アルコールが抜けきらない傾向が強い料理は、大きく分けて以下の3つのパターンです。

  • ・生の酒粕をそのまま食べる料理
  • ・酒粕に漬け込む料理
  • ・加熱時間が短い料理や低温調理の料理

それぞれの傾向を確認しましょう。

5-1 生の酒粕をそのまま食べる料理

生の酒粕をそのまま食べる料理はアルコールが含まれていると考えてよいでしょう。

酒粕をペースト状にしてクラッカーに塗るディップや、クリームチーズやヨーグルトと混ぜてデザート感覚で食べる場合、加熱工程がないため、酒粕本来のアルコール分がそのまま残ります。

酒粕本来の風味やコクを楽しみたい場合には魅力的な食べ方ですが、アルコールを避けたい方、特に運転前や妊婦の方、お子様には注意が必要です。

軽く炙る程度のおつまみも、表面しか加熱されないため、ほとんどアルコールは抜けないと考えてよいでしょう。

5-2 酒粕に漬け込む料理

続いて、酒粕のアルコールが残りやすい料理は、魚や肉、野菜などを酒粕に漬け込む「漬け込み系の料理」です。

代表的なのは「粕漬け」ですが、食材を酒粕が持つアルコールや旨味の層にじっくりと浸すことで、食材の内部にまでアルコール分が浸透します。

漬け込んだ後、焼いて加熱する調理工程が入る場合でも、一度食材の組織に入り込んだアルコールは、短時間の加熱では完全に抜けきらないことがあります。

特に、漬け床の酒粕を洗い流さずに調理したり、酒粕ごと食べる場合は、アルコールが残りやすくなりますので注意が必要です。

5-3 加熱時間が短い料理や低温調理の料理

調理の過程で、加熱時間が短い、または低温調理を行う料理は酒粕のアルコールが残りやすいです。

アルコールは沸点が約78℃と比較的低いため、じっくり加熱することで揮発しやすい性質を持ちます。

しかし、酒粕入りのクッキーやパウンドケーキなどのスイーツは、焼き時間が短いと中心部の温度が上がりにくく、アルコールが残りやすい場合があります。

また、電子レンジでの短時間の加熱も、鍋で煮込むなどの調理法に比べるとアルコールの揮発が不十分になりがちです。

酒粕を料理に使う際は、アルコール分を飛ばすために、事前に水や出汁と合わせてしっかりと煮る「予備加熱」を行うと安心です。

6. まとめ|アルコールに注意して粕汁を楽しもう

本記事では、酒粕の特徴や種類、アルコール分、食べるときの注意点、妊婦や子どもへの影響について解説しました。

酒粕は栄養価が高く、日本では古くから親しまれている伝統食品です。

冷え性や高血圧などの体の不調に効果的とされ、注目が高まっていますが、アルコールを含むため、摂取するタイミングには注意が必要です。

もし、うっかり酒粕料理を食べてしまったときは、酒気帯び運転を避けるためにもアルコールチェッカーでアルコール濃度を確認するか、あるいは安全のために運転そのものを控えるよう心がけましょう。

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この記事の執筆者

株式会社パイ・アールPAI-R Co., Ltd.

安心・安全な交通社会の実現へ向けてさまざまな課題や解決を探求している 株式会社パイ・アール は、アルコールチェックをはじめドライバーの安全管理や業務管理にまつわるさまざまなお役立ち情報を発信しています。

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