軽貨物の積載量はどのくらい?最大積載量や車両サイズ・過積載の危険性や罰則を解説

近年、物流量の増加やドライバー不足により、個人で軽貨物運送事業を始める人が増えています。
軽貨物車両は、普通運転免許を保有していれば、中型、大型、特殊などの免許取得が必要ないため、個人事業主や小規模配送業者にとって便利な輸送手段です。
しかし、積載量には厳格な制限があり、最大積載量を超えて荷物を積載した場合、事故の原因となるだけでなく、厳しい罰則の対象になります。
そこで本記事では、軽貨物の最大積載量や車両サイズ、過積載によるリスクや罰則、万が一積載量をオーバーした場合の対処法を詳しく解説します。
安全で効率的な運送のために、ぜひ参考にしてください。
目次 / このページでわかること
1. 軽貨物車両の車両サイズ
軽貨物車両は、道路運送車両法で「軽自動車」として区分され、車両サイズや排気量が規定されています。
【軽貨物車両規格】
- 長さ:3.4m以下
- 幅:1.48m以下
- 高さ:2.0m以下
- 排気量:660cc以下
規定の車両サイズに収まる軽自動車、かつ、軽トラックや軽バンなどの貨物車が「軽貨物」として分類されます。
小回りが効きやすいため、都市部の狭い道でも取り回しやすい点が魅力です。
軽貨物の維持費や税金は、普通貨物車に比べて数万円安く済みます。
なお、規定外の車両は「小型貨物」や「普通貨物」として扱われるため、軽貨物のメリットを受けられなくなります。
軽貨物運送事業を始める場合は、事業用ナンバーである「黒ナンバー」の取得が必要です。
以下の関連記事では、黒ナンバーの取得条件や取得手順を詳しく解説しています。軽貨物運送事業の開業を検討している方や、開業のノウハウを知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
2. 軽貨物の最大積載量は350kg
軽貨物の最大積載量は350kgです。最大積載量を求める場合、以下の計算式が用いられます。
【軽貨物の最大積載量の求め方】
最大積載量 = 車両総重量 −(車両重量 +(乗車定員 × 55kg))
最大積載量は荷物に関する重さであり、貨物車のみに適用されます。
ドライバーや同乗者の体重は最大積載量に含まれないため、荷室に最大で350kgの荷物を載せられます。
軽トラックや2人乗りの軽バンは、メーカーや車種に関係なく、基本的に最大積載量は350kgに規定されています。
ただし、4人乗車する場合、安全確保の観点から最大積載量が250kgまで下がるため、運送時は規定を上回らないように注意しましょう。
3. 軽貨物の最大積載寸法
軽貨物車両で制限されるのは重量だけでなく、荷物の寸法(大きさ)にも上限が定められています。
2022年5月13日に、最大積載寸法に関する法律が一部改正され、現在は以下の規定が定められています。
荷物の大きさ | 荷物の積み方 | |
---|---|---|
長さ | 自動車の長さ + 自動車の長さの10分の2 |
車体の前後から、自動車の長さの10分の1を超えてはみ出さないこと |
幅 | 自動車の幅 + 自動車の幅の10分の2 |
車体の左右から、自動車の幅の10分の1を超えてはみ出さないこと |
高さ | – | 地上から2.5mを超えてはみ出さないこと |
長さと幅の規定は10分の2ですが、前後左右にはみ出せるのは、それぞれ10分の1までです。
例えば、車体の右側に10分の1以上はみ出ると規定違反になります。
安全性を確保するために、車両のサイズと荷物のバランスを常に意識し、法令遵守を心がけた積載を心がけましょう。
4. 軽貨物の積載量|積載可能な荷物の目安
軽貨物車両の最大積載量は、基本的に350kgですが、実際にどれくらいの荷物を積めるかイメージしづらい方も少なくありません。
そこで、軽貨物(軽トラック)に積載可能な荷物の目安を以下の表で紹介しますので、荷物を運搬する際の参考にしてください。
荷物の種類 | サイズ | 個数の目安 |
---|---|---|
みかんコンテナ | 長さ52cm×幅36.5cm×高さ31cm | 54個(13個×4段+2個) |
りんごコンテナ | 長さ65cm×幅32cm×高さ29cm | 48個(12個×4段) |
ビールケース | 長さ45cm×36.5幅cm×高さ31.5cm | 60個(15個×4段) |
20Lポリタンク | 長さ33.5cm×幅19.6cm×高さ42.5cm | 40個 |
表の数値は目安であり、荷物の形状・体積・積み方によって積載できる数量は変動します。
積載量を超えると過積載となり、重大な事故や法令違反につながります。
荷物の重量やサイズを事前に確認し、安全かつ適正な運搬を心がけましょう。
5. 軽貨物の過積載における4つの危険性
軽貨物の過積載は単なる交通違反ではなく、走行性能や安全性の低下、車両の寿命にも悪影響を及ぼします。
本章では、特に注意すべき4つのリスクについて解説します。
① カーブで横転しやすくなる
過積載状態では、車両の重心が高くなり、カーブを曲がる際に遠心力の影響を強く受けます。
左右のバランスが取りにくくなり、対向車線へのはみ出しや荷崩れ、横転事故の危険性が高まります。
配達時間に追われてスピードを出すと、より危険度が増すため、過積載のまま走行するのは非常に危険です。
適切な配送スケジュールを組み、荷室の状況を意識しながら運転しましょう。
② ブレーキが効きづらくなる
荷重が重くなると、ブレーキの効きも悪くなります。
停止距離が伸び、急ブレーキをかけてもすぐには止まれず、追突や重大事故につながるおそれがあります。
過積載の場合、制動距離(ブレーキが効き始めてから車両が停止するまでの距離)の違いは明らかで、普段なら余裕を持って止まれる距離でも、前方の車に追突してしまう危険性があります。
雨や雪などで路面の状態が悪い場合や、下り坂などの制動力がかかりづらい状況では、慎重な運転が求められます。
③ 車両の故障や劣化を早める
最大積載量の規定は、ドライバーの安全性を確保するためだけでなく、車両自体を守るためにも役立っています。
規定以上の荷重を積むと、サスペンションやタイヤ、ブレーキなどのパーツに過度な負担がかかり、故障や劣化を早めてしまいます。
結果として、整備費用がかさみ、車検に通らないリスクも高まります。
車両の寿命を伸ばし、安全に運行するために、過積載にならないように注意しましょう。
④ 燃費が悪くなる
過積載状態ではエンジンに大きな負荷がかかるため、通常よりも燃費が悪くなります。
一般的な目安として、軽自動車は100kgの荷物を積むごとに燃費が約1km/Lほど低下するといわれています。
例えば、燃費が15km/Lの軽バンなら、100kg積載で14km/Lに下がり、ガソリン代にも影響が出てきます。
一度に多くの荷物を運べば効率は上がるかもしれませんが、その分燃料コストも増えることを忘れてはいけません。
6. 最大積載量を超過した時の罰則
軽貨物で最大積載量を超えた場合、「過積載違反」として厳しい罰則が科されます。
罰則はドライバーだけでなく、事業者や荷主にも及ぶ可能性があり、個人事業主や法人にとって重大なリスクとなります。
そこで本章では、それぞれの立場ごとに適用される罰則の内容を解説します。
ドライバーへの罰則
ドライバーには道路交通法に基づいて、違反点数や反則金の行政処分が科されます。
最大積載量超過割合 | 違反点数 | 反則金 |
---|---|---|
50%未満 | 1点 | 25,000円 |
50%〜100% | 2点 | 30,000円 |
100%以上 | 3点 | 35,000円 |
罰則内容は、積載割合によって変動し、違反歴によっては免許停止になる可能性があります。
事故を起こした場合、刑事罰に発展するケースもあるため、積載量の確認は念入りに行いましょう。
事業者への罰則
過積載を指示・容認した事業者には、貨物自動車運送事業法と道路交通法に基づいて、一定期間の車両停止などの行政処分が科されます。
最大積載量超過割合 | 初回 | 2回目 | 3回目 |
---|---|---|---|
50%未満 | 10日×違反車両数 | 20日×違反車両数 | 40日×違反車両数 |
50%〜100% | 20日×違反車両数 | 40日×違反車両数 | 80日×違反車両数 |
100%以上 | 30日×違反車両数 | 60日×違反車両数 | 120日×違反車両数 |
事業者として過積載を下命・容認した場合「7日間の営業停止処分」が科されます。
また、累積点数51点以上で「事業の全部・一部停止処分」、81点以上で「事業の許可の取消し処分」が科されます(道路交通法の点数制度とは別の点数制度です)。
道路交通法に基づく罰則は以下の通りです。
【道路交通法に基づく事業者への罰則】
- 過積載の下命・容認は「6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金」
- 公安委員会から「過積載防止措置の指示」を受けた後、1年以内に過積載を行うと、「最高3ヶ月間の車両の使用制限命令」
- 「使用制限命令」にそむいた場合、「3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金」
悪質な場合には、管理者資格の取り消しや営業許可の取り消しといった厳しい処分を受ける可能性があります。
事業者の社会的信用を大きく損なう原因になるため、過積載を見過ごしたり、黙認したりしないように、社内でのルール整備や運行管理体制の強化を徹底することが重要です。
荷主への罰則
過積載になることを知りながら、積載物を売り渡したり、引き渡した場合、貨物自動車運送事業法と道路交通法に基づいて、荷主に対して罰則や勧告措置が行われます。
措置内容 | 措置の発動条件 |
---|---|
協力要請書 | ・運送事業者の違反に対し、再発防止のために荷主への協力要請が必要な場合 |
警告書 | ・協力要請書を3年間で2回出された場合 ・荷主勧告には至らないが、過積載に荷主の関与が疑われる場合 |
荷主勧告書 | ・警告に従わず、3年以内に過積載を行った場合 ・運送事業者の過積載について、荷主の関与が疑われた場合 |
荷主勧告が発動された場合、違反の概要や荷主名が公表されます。
【道路交通法に基づく荷主への罰則内容】
- 違反した荷主が過積載の要求を繰り返すおそれがある場合、警察署長から「再発防止命令」が科される
- 再発防止命令にそむいた場合、「6ヶ月以下の懲役又は10万円以下の罰金」
荷主が主体的に過積載を下命していた場合や、再発防止命令・勧告などに応じない場合、社名が公表される可能性があります。
過積載は全関係者の責任であり、荷主も例外ではありません。
7. 軽貨物で最大積載量を超える時の対処法
軽貨物で最大積載量を超過するおそれがある場合、「制限外積載許可申請」を最寄りの交番や警察署に提出すれば、一時的に条件付きで積載超過が認められます。
【制限外積載許可申請の手続き手順】
- 1. 都道府県ごとに定められている許可条件を確認する(地域によって条件が異なる)。
- 2. 申請に必要な書類を用意する(必要書類の一例:制限外積載許可申請書、車検証のコピー、運転免許証のコピー、運搬経路を示した地図など)。
- 3. 出発地を管轄する交番又は警察署に書類を提出し、申請許可を取る。
最大積載寸法をはみ出す場合は、制限外積載許可申請を取得した上で、周囲から見やすい位置に表示板や赤旗(赤い布)を掲示しましょう。
大きな荷物を積んでいることを周囲に知らせ、安全性を確保した運行を心がけましょう。
8. まとめ|軽貨物の積載量を守り安全運転を徹底しよう
本記事では、軽貨物の積載量や車両サイズ、過積載の危険性や罰則、最大積載量を超える場合の対策について解説しました。
軽貨物に規定された積載量を守ることは、安全運転の基本であり、事故やトラブルを未然に防ぐ重要なポイントです。
過積載は車両の故障や重大事故につながるリスクが高く、罰則も科されます。
日々の業務に追われる中でも、積載量の確認を怠らず、安全第一の運転を心がけましょう。