休肝日が肝臓にもたらす効果は?「意味がない」噂は本当?適切な方法・注意点を解説

休肝日は、飲酒を控える日を設けることで肝臓を休ませ、健康を維持する習慣として広く知られています。

しかし、一部では「休肝日は意味がない」という意見もみられ、実際の休肝日の効果について疑問を持つ人も少なくありません。

そこで本記事では、休肝日が肝臓にもたらす効果や、「意味がない」と言われる理由、適切な休肝日の過ごし方、注意点について解説します。

1.休肝日とは?

休肝日とは、肝臓を休めるために、週に2日以上飲酒しない日を設けることを推奨する目的で作られた造語です。

一般的に、アルコールの分解は6〜8時間程度かかると言われ、就寝中も肝臓などの消化器官は働き続けています。

【1時間で分解できるアルコール量の簡易的な目安】
体重(kg)× 0.1 = 1時間で分解できるアルコール量(g)
※ただし、アルコール分解速度には個人差があり、飲酒量や体質によって異なります。

肝臓はアルコールを分解する臓器であり、日常的に飲酒する場合、脂肪肝や肝炎、肝硬変など、さまざまなアルコール性肝臓病のリスクが高まります。

さらに、胃や腸などの消化器官もアルコールの影響によって粘膜にダメージを受けるため、胃もたれや下痢、胃食道逆流症、ポリープなどのリスクが高まります。

そのため、休肝日を設けることで、健康リスクの予防につながると考えられています。

また、各臓器が修復されることで代謝力が向上し、疲れが取れやすくなるとされています。

慢性的な体の不調がある方や、生活習慣病のリスクを下げたい方は、毎日の飲酒や大量飲酒はなるべく控え、休肝日を設けることが大切です。

参考:休肝日|e-ヘルスネット(厚生労働省) / つくろうよ週に二日は休肝日|公益社団法人アルコール健康医学協会

2.休肝日が肝臓にもたらす効果とは?

休肝日は、肝臓を休ませるために設けた方が良いとされています。しかし、中には「休肝日は意味がない」といった声もあります。

そこで本章では、アルコールが肝臓に与える悪影響や、休肝日が肝臓にもたらす効果について解説します。

アルコールが肝臓に与える悪影響

アルコールは刺激物であり、日常的な飲酒や大量飲酒を続けると、肝臓をはじめとする消化器官に悪影響を及ぼすとされています。

とくに肝臓はアルコール分解を担う重要な臓器であり、飲酒習慣がある人はアルコール性肝障害を発症しやすいと言われています。

さまざまなアルコール性肝障害
名称 症状
脂肪肝 飲み過ぎにより肝臓に過剰な脂肪が蓄積された状態。放置すると肝炎や肝硬変などを引き起こす可能性がある。
アルコール性肝炎 脂肪肝が進行し、肝機能がより低下した状態。腹水・発熱・黄疸などの症状がみられ、禁酒が求められる。肝臓の炎症が強く、一度発症すると、その後の飲酒で繰り返し発症しやすいと言われている。
アルコール性肝線維症 炎症を修復するために生成された線維(創傷)が、長期間の飲酒習慣により、過剰に肝臓に蓄積された状態。発熱・黄疸・腹水・静脈瘤出血などの症状がみられ、禁酒が求められる。
肝硬変 繊維化が進み、肝臓が硬く小さくなった状態。一度肝硬変になると元の状態に戻ることは難しいと考えられているため、禁酒が求められる。
肝臓がん アルコールと、アルコール分解の途中で生成されるアセトアルデヒドには発がん性があると言われ、飲酒習慣がある場合、肝臓がんのリスクが高いと考えられている。とくに日本人はアセトアルデヒドの分解能力が低いため、欧米人よりもリスクが高いとされる。

男性に比べて体格が小さい女性は、アルコールの影響を受けやすく、肝障害の進行が早いと考えられています。

休肝日は、アルコールによる肝障害を予防するために重要な役割を担っています。

肝臓への負担を減らしたい方や、病気のリスクを下げたい方は、禁酒も有効な選択肢です。

禁酒によって、次のようなメリットがあります。

  • 肝臓や消化器官への負担を軽減
  • 日中の眠気や疲労感を軽減
  • 精神的な安定につながる  など

関連記事:『禁酒の効果とは?成功させるコツや禁酒が難しい人におすすめの減酒方法を紹介

参考:アルコールと肝臓病|e-ヘルスネット(厚生労働省)

休肝日が肝臓にもたらす具体的な効果とは?

休肝日を設けることで、肝臓への負担が大幅に軽減され、アルコール性肝障害の発症リスクを下げる効果が期待できます。

肝臓は体内でもっとも大きな臓器であり、栄養素の分解・解毒・貯蔵など、生命維持に欠かせない働きを担っています。

しかし、肝臓には痛みを感じる知覚神経がなく、炎症が起きても初期段階では自覚症状が出にくいのが特徴です。

そのため「沈黙の臓器」と呼ばれ、症状を自覚する頃には、すでに病気が進行していることも少なくありません。

飲酒習慣がある方は、週に2日程度の休肝日を設け、肝臓を休める習慣を身につけましょう。

3.休肝日は意味がないという噂は本当?

実は、「休肝日を設けるだけで肝臓が回復する」という科学的に確立された根拠はほとんどありません。

そのため「休肝日には意味がない」という噂が広まっています。

しかし、行政機関や医療機関では、休肝日を推奨しており、多くの専門家もその重要性を指摘しています。

では、なぜ科学的な根拠が乏しいにもかかわらず、休肝日が推奨されているのでしょうか?

その理由の1つに、休肝日がアルコール依存症の予防に役立つと考えられていることが挙げられます。

人間の体は、長期間の飲酒でアルコール耐性がつくため、次第に少量のお酒では物足りなくなり、精神的・身体的な依存性が高まるとされています。

依存状態が続くと、飲酒のコントロールができなくなり、異常な興奮や幻覚などの異常酩酊の症状が現れます。

そのため、厚生労働省が推奨している「飲酒ガイドライン」では、休肝日という言葉は使わずに以下のような推奨をしています。

一週間のうち、飲酒をしない日を設ける(毎日飲み続けるといった継続しての飲酒を避ける)

毎日飲酒を続けた場合、アルコール依存症の発症につながる可能性があります。
一週間の純アルコール摂取量を減らすために、定期的に飲酒をしないようにするなど配慮が必要です。

引用元:健康に配慮した飲酒に関するガイドライン|厚生労働省

飲酒しない日を設けることで、アルコール依存症の予防につながり、結果として飲酒習慣が改善されると考えられます。これにより、アルコール性肝障害のリスク低減にもつながるといえるでしょう。

このことから、「休肝日は意味がない」と完全には言い切れず、健康を維持する上で、休肝日は重要な役割を担うとされています。

関連記事:『酩酊とは?単純酩酊の酔い方6ステップと異常酩酊の罪について解説

参考:アルコールと依存|e-ヘルスネット(厚生労働省)

4.適切な休肝日の日数は?

休肝日は、週に2日程度設けることが推奨されていますが、ただ単に設ければ良いというわけではありません。

適切な休肝日の設け方として、「週に5日連続で飲み、2日連続で休む」のではなく、「2〜3日飲んだら1日休む」ことが重要です。

飲酒習慣が身につくと、飲まずにはいられなくなり、アルコール依存症のリスクが高まるためです。

また、長期間の飲酒は、肝臓や胃腸などの消化器官に負担をかけるため、飲酒の間隔を意識的に空けることが重要です。

参考:つくろうよ 週に二日は休肝日|公益社団法人アルコール健康医学協会

5.適切な休肝日の過ごし方4つ

お酒を控えた経験がある方の中には、お酒が飲めずに手持ち無沙汰を感じたり、イライラしたりする方もいます。

休肝日は、ただお酒を控えるだけでなく、心身の回復に効果的な過ごし方を意識することで、より健康維持につながります。

そこで本章では、休肝日を有意義に過ごすためのポイントについて紹介します。

栄養バランスのとれた食事をする

休肝日には、肝臓の負担を軽減するための栄養バランスがとれた食事を心がけましょう。

肝臓は、栄養素の分解・解毒・貯蔵、胆汁の生成・分泌など、重要な働きを担っています。その機能を正常に保つためには、ビタミンやミネラルが欠かせません。

ビタミン、ミネラルを豊富に含む食材として、色が濃い野菜や、きのこ類、海藻類がおすすめです。

また、肝臓の修復には良質なタンパク質を摂ることも大切です。肉類、魚介類、大豆製品、卵などを取り入れ、必要な栄養を補いましょう。

一方で、かまぼこ・ちくわ・ベーコン・ハムなどの加工品は塩分が多く含まれるため、食べ過ぎには注意が必要です。

さらに、適切な食事量を心がけ、糖質の多い果物や炭水化物の摂りすぎを控えることもポイントです。

無理しない程度に運動する

毎日飲酒する方の場合、お酒に含まれる糖質の影響で、肝臓に脂肪がつきやすい傾向があります。

放置すると脂肪肝になりやすく、症状が進行すると禁酒が必要な状態になります。

そのため、休肝日には、糖質を効率的に消費できる筋トレがおすすめですが、運動習慣がない方はウォーキングやストレッチなどの軽い運動がおすすめです。

近年の研究では、30〜60分程度の有酸素運動を週3〜4回行うことで、脂肪肝化が改善することが報告されています。

休肝日にかかわらず、通勤や買い物の移動は歩いたり、散歩やラジオ体操などの習慣にすると良いでしょう。

参考:NAFLD/NASH診療ガイドライン 2020(日本消化器病学会)|日本肝臓学会

趣味の時間を作る

休肝日は、飲酒以外のリラックス方法を見つける良い機会です。

映画を見たり、読書をしたり、掃除や料理などに時間を充てることで気分転換が図れます。

また、趣味の時間を作ったり、先に予定を立てたりすることで、「暇だからお酒を飲んでしまった」という事態を防げます。

お酒以外で自分が楽しいと思えるものを見つけ、充実した時間を過ごしましょう。

ノンアルコール飲料に代替する

休肝日にどうしてもお酒が飲みたくなった時は、ノンアルコール飲料がおすすめです。

最近は、さまざまなノンアルコール飲料が販売されており、選べる楽しさがあります。

また、通常のアルコール飲料よりも価格が安いため、飲酒後に酔った勢いでラーメンを食べたり、二次会に行ったりするなどのムダな消費を抑えるメリットもあります。

しかし、お酒が飲みたい欲求が抑えられない場合、アルコール依存症の可能性が考えられるため、早めに医療機関や専門機関を受診することをおすすめします。

6.休肝日を設ける上での注意点

休肝日の効果を最大限に引き出すためには、いくつかの注意すべきポイントがあります。

とくに休肝日の目的を正しく理解しないまま過ごすと、肝臓への負担が十分に軽減されない可能性があります。

そこで本章では、休肝日を設ける際に意識したい2つの注意点について解説します。

減酒した分を取り返そうとしない

休肝日の反動で、次の日に飲みすぎるケースが考えられます。

「減酒したから、これくらい飲んでも大丈夫」と気がゆるみ、肝臓に負担をかける飲み方になってしまいがちです。

そのため、一週間単位でのアルコール摂取の総量を決め、その中でコントロールを行うと良いでしょう。

飲酒がやめられない時は専門機関を受診する

休肝日にお酒がどうしても飲みたくなる場合や、イライラや焦燥感が募る場合、アルコール依存症の可能性が考えられます。

また、ノンアルコール飲料で代替しても、アルコールの味を思い出すことで、飲酒欲求がかえって高まることがあります。

このような場合は、できるだけ早めに医療機関や専門機関を受診することが大切です。

アルコール依存症は発見が遅れると、肝障害を引き起こすだけでなく、うつや睡眠障害が併発する可能性が高いと言われています。

精神面や社会生活に悪影響が出る前に、早期受診・早期治療を心がけましょう。

7.休肝日を設ける前に飲酒習慣の見直しが大切

休肝日を作ることは、肝臓を休めるために重要ですが、日々の飲酒習慣を見直すことも同様に大切です。

まずは自分がどれだけアルコールを摂取しているのか正しく把握し、自分に合った飲酒量を守ることで、肝臓への負担を減らすポイントになります。

そこで本章では、飲酒習慣を見直すための具体的なポイントを2つ紹介します。

1日の適正飲酒量をつかむ

厚生労働省が発表した「健康に配慮した飲酒を行うガイドライン」の中では、自分の飲酒量を把握することの重要性が示されています。

適切な飲酒量は、純アルコール量に着目することで、コントロールしやすくなります。

【純アルコール量とは?】
お酒に含まれるアルコール量をグラム(g)で表したもの。
アルコールの影響は、飲んだお酒の量(ml)ではなく、摂取した純アルコール量(g)で評価されます。

お酒に含まれる純アルコール量は、以下の式で計算できます。
摂取量(ml)× アルコール濃度(度数/100)× 0.8(アルコールの比重)=純アルコール量(g)

厚生労働省が推奨する1日の純アルコール摂取量は、1日20g程度とされています。お酒の種類ごとの目安は以下のとおりです。

純アルコール20gを含むお酒の目安量(※)
種類 目安
ビール(5%) 500ml ロング缶・中瓶
日本酒(15%) 180ml 1合弱
ウイスキー(43%) 60ml ダブル
ワイン(12%) 200ml 小グラス2杯
酎ハイ(7%) 350ml 1缶
焼酎(25%) 110ml 小コップ半分

※飲酒習慣のない人に対して、この量を推奨するものではありません。

また、男性は40g以上、女性は20g以上になると生活習慣病のリスクが高まると考えられています。普段から飲み過ぎに注意しましょう。

関連記事:『悪酔いとは?防止する対策や二日酔いとの違い・酔い方の種類について解説

参考:健康に配慮した飲酒に関するガイドライン|厚生労働省 / 守ろう!適正飲酒|新宿区

自分の体質を知る

アジア人は、アルコールやアセトアルデヒドの分解能力が低い人が多いと言われています。

とくに日本人はアジアの中でも、分解能力が低い、もしくは分解能力が機能していない体質を持つ人の割合が多いとされています。

そのため、顔が赤くなりやすく、酔いが回ると頭痛や吐き気などの体調不良を感じる場合があります。

また、肝臓に負担をかけやすいため、無理な飲み方をしないよう、事前に自分の体質を知ることが大切です。

自分の体質を知りたい方は、以下の方法でチェックしてみましょう。

  • アルコールパッチテスト:腕にアルコールを塗り、皮膚の反応を確認する方法
  • 遺伝子検査:体質を遺伝的に分析し、アルコールの分解能力を判定する方法

未成年者の検査も可能なので、飲酒教育にも役立ち、将来的に飲酒による健康リスクを下げることにつながります。

実際に体質検査を受けたパイ・アール従業員の体験談を、以下の関連記事で紹介しています。検査の流れや体質のタイプについて、ぜひ参考にしてください。

関連記事:『【体験談】アルコール体質検査を体験|適切な飲酒量を把握して上手に付き合おう

8.まとめ|適正飲酒で楽しく健康的な飲酒習慣を身につけよう

本記事では、休肝日が肝臓に与える効果や、アルコールが肝臓に与える悪影響、正しい休肝日の過ごし方、注意点などについて解説しました。

適正飲酒を心がけることは、健康を維持しながらお酒を楽しむための第一歩です。

自分に合った飲酒量を把握し守ることで、肝臓への負担を減らせます。また、休肝日を取り入れることで、肝臓を休ませるだけでなく、飲酒習慣を見直すきっかけにもなります。

無理のない範囲で飲酒をコントロールし、楽しく健康的な飲酒習慣を身につけていきましょう。

株式会社パイ・アール ロゴ

この記事の執筆者

株式会社パイ・アールPAI-R Co., Ltd.

安心・安全な交通社会の実現へ向けてさまざまな課題や解決を探求し、アルコールチェックをはじめドライバーの安全管理や業務管理にまつわるさまざまなお役立ち情報を発信しています。

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