モバイルバッテリーの車内放置は発火事故の原因に|安全対策や発熱時の対処法を紹介

外出時や長時間のスマホ利用、災害時において欠かせないアイテムであるモバイルバッテリーですが、誤った使い方や管理による発火事故が度々報告されています。
特に、夏場の車内放置は非常に危険とされ、バッテリーの劣化や発火リスクが高まるため、正しい扱い方を心がけることが大切です。
そこで本記事では、モバイルバッテリーを車内に放置すると危険な理由や、過去に発生した発火事故、安全に使用するための対策や適切な処分方法について紹介します。
また、モバイルバッテリー以外の車内に置いてはいけないアイテムについても紹介しますので、発火事故を未然に防ぐための参考にしてください。
目次 / この記事でわかること
1. モバイルバッテリーの車内放置が危険な2つの理由
モバイルバッテリーは便利な一方で、管理の仕方によっては思わぬ事故につながるリスクがあります。
特に車内は、季節や天候の影響で温度変化が大きく、バッテリーに負担をかけやすい環境です。
実際に、車内に放置されたモバイルバッテリーが、発火や膨張を起こした事例も報告されています。
本章では、モバイルバッテリーを車内に放置することが危険とされる2つの主な理由について解説します。
1-1 リチウムイオン電池が高温に弱いから
モバイルバッテリーに使われているリチウムイオン電池は、高温に弱い性質を持っているため、一般的に0〜40℃の範囲内での使用が推奨されています。
使用場所の温度が高い場合、高温により内部の化学反応が進み、モバイルバッテリーの劣化や膨張、発火事故につながる恐れがあります。
スマートフォンやハンディ扇風機、電気シェーバーや電子タバコなど、リチウムイオン電池が使用されたアイテムは車に置きっぱなしにせず、車を離れる際は必ず持ち出しましょう。
1-2 暑い日は車内温度が上昇するから
JAF(日本自動車連盟)が2012年に行ったユーザーテストでは、1時間もしないうちに車内温度が50℃を超え、ダッシュボードに置かれたスマートフォンに「高温注意」のような警告表示がされ、一時的に使用不可になる結果が確認されました。
テスト内容の詳細は以下のとおりです。
真夏の車内温度(JAFユーザーテスト)の詳細
実施日 | 2012年8月22日、23日 |
---|---|
天候・気温 | 晴れ・35℃ |
テスト | 午後12時から4時間、駐車条件の異なる車両(ミニバン)を5台(①〜⑤)用意し、炎天下における車内温度を測定。 |
車両の条件 | 車内最高温度 | 車内平均温度 | ダッシュボード最高温度 |
---|---|---|---|
対策なし(ボディーカラー黒) | 57℃ | 51℃ | 79℃ |
対策なし(ボディーカラー白) | 52℃ | 47℃ | 74℃ |
サンシェード装着 | 50℃ | 45℃ | 52℃ |
窓開け(3cm) | 45℃ | 42℃ | 75℃ |
エアコン作動 | 27℃ | 26℃ | 61℃ |
テスト結果を見ると、サンシェード装着や窓開け対策を行っていても、温度上昇の抑制効果が低いことが分かります。
近年の猛暑を踏まえると、車内温度の上昇速度はより速まっている可能性があるため、扱い方には注意が必要です。
JAFが2023年に実施したユーザーテストでは、外気温34℃の条件下でエアコンを停止したところ、わずか1時間後に車内温度は40℃を超え、最終的には48℃に達しました。
ダッシュボード付近は57.8℃まで上昇し、熱中症の危険度を示す「暑さ指数」も41分後には「危険レベル」に到達しています。
真夏でなくても、春や秋の晴れた日は、直射日光により車内温度が想像以上に上昇するため、モバイルバッテリーは忘れずに携帯しましょう。
2. 車内でモバイルバッテリーが発火した事故の事例
リチウムイオン電池を内蔵した製品が発火・発煙する事例は毎年増加しており、NITE(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)のデータによると、2020年から2024年までの5年間に報告された事故件数は1860件にのぼり、そのうち1587件は火災事故でした。
製品別では、モバイルバッテリーの事故が最も多く、2023年8月には、熊本県で高温の車内に長時間モバイルバッテリーを放置したことで火災に至った事例があります。
ほかにも、以下のような発火事故が発生しているため、使い方には注意が必要です。
【電車内でモバイルバッテリーが発火】
2025年7月、JR山手線内回りの電車内で、乗客が使用していたモバイルバッテリーが発火。所有者の女性を含む5人が軽傷を負い、山手線は内回りが約2時間、外回りも約1時間運転を見合わせた。
参考:【動画あり】山手線でスマホのモバイルバッテリーから出火 5人が軽いけが|NHK
【ごみ処理施設でリチウムイオン電池を使用した製品が発火】
2022年12月、兵庫県神戸市の布施畑環境センターでリチウムイオン電池が原因と思われる火災事故が発生。
ごみ処理施設やゴミ収集車でのリチウムイオン電池が原因とされる火災事故は相次いでおり、各自治体で適切な処分が呼びかけられています。
モバイルバッテリーは、扱い方を誤ると発火事故を引き起こす可能性があり、周りに居合わせた人や公共施設の運営に大きな被害を与える可能性があるため、注意が必要です。
安心して長く使用するために、次の章で紹介する安全対策を実践してみてください。
3. モバイルバッテリーの発火事故を防ぐ5つの安全対策
モバイルバッテリーを安全に使い続けるためには、発火事故を防ぐ対策を知ることが重要です。
本章では、モバイルバッテリーを安全に使用するために覚えておきたい5つの対策を紹介します。
3-1 直射日光を避けて使用・充電する
モバイルバッテリーは高温に弱く、直射日光にさらされた環境で使用すると内部の温度が急上昇し、発火や膨張のリスクが高まります。
そのため、直射日光が当たりやすいダッシュボードやシートへの放置は大変危険です。
ほかにも、遊園地やテーマパーク、公園や海水浴場など、直射日光があたりやすい状況での長時間の使用はなるべく控え、日陰や風通しの良い場所で使用しましょう。
3-2 車を離れるときはモバイルバッテリーも持ち出す
車内は外気温よりも高温になりやすく、短時間でもモバイルバッテリーに負荷をかけます。
JAFが夏場に行ったテストでは、エアコン停止から15分で車内温度が31℃を超えることがわかっています。
コンビニやスーパーなどに立ち寄る場合でも、モバイルバッテリーは忘れずに持ち出しましょう。
3-3 水・湿気に注意する
水や湿気は、モバイルバッテリー内部の回路をショートさせ、発火や故障を引き起こす可能性があります。
雨の日の持ち運びやアウトドアシーンでは、防水ケースに入れるなどの工夫が有効です。
ほかにも、浴室やキッチンなど水気や湿気の多い場所での使用は避けましょう。
3-4 モバイルバッテリーを丁寧に取り扱う
モバイルバッテリーは精密機器なので、落下や衝突による強い衝撃は、内部の基板を傷つけ、熱暴走や発火のリスクを高めます。
バッグの中でほかの荷物とぶつかることでもダメージを受ける場合があるため、持ち運ぶ際は専用ケースやポーチを使うなどして、できるだけ衝撃を与えないように気をつけましょう。
3-5 PSEマークが表示されたモバイルバッテリーを使う
2019年1月31日以降、モバイルバッテリーの製造・輸入または販売を行う事業者には、「PSEマーク」の表示がないモバイルバッテリーの販売が禁止されています。
PSEマークがある製品は一定の安全基準をクリアしている証であり、安心して使用できます。
海外製の安価なモバイルバッテリーや、2019年以前に製造されたモバイルバッテリーは、発火事故の危険性が高まるとされているため、購入時には必ずPSEマークの有無を確認しましょう。
4. モバイルバッテリーが発熱・膨張した時の対処法
モバイルバッテリーが発熱・膨張した場合、次のような手順で対処することが推奨されています。
【モバイルバッテリーが発熱・膨張した場合の対処法】
- 1. 直ちに使用を中止する。
- 2. 発熱のみの場合、風通しの良い場所で自然に冷ます(冷蔵庫に入れる、保冷剤をあてるなどの急激な冷却は避ける)。
- 3. 膨張している場合、金属製品や土鍋に入れて延焼を防止し、販売事業者に相談する。
- 4. 発火した場合、大量の水をかけて消火し、可能な限り水没させて消防に通報する。
ハンディ扇風機やスマートフォンも、使用状況によっては発火の恐れがあるため、発熱・膨張した場合や異臭や異音がする場合は、直ちに使用を中止し、適切に対処しましょう。
5. モバイルバッテリー以外の車内放置NGなアイテム
夏場の車内は想像以上に高温になるため、モバイルバッテリー以外にも多くの精密機器や日用品に影響を及ぼします。
「これくらいなら大丈夫」と思って車内に置いた物でも、熱による変形や故障、発火事故を引き起こすリスクがあるため、扱い方には注意が必要です。
そこで本章では、車内放置が危険なアイテムについて5つ解説します。
5-1 パソコンやスマ-トフォンなどの精密機器
スマートフォンやノートパソコン、タブレットなどの精密機器は、高温に弱く、内部のバッテリーや基板が劣化・破損する恐れがあります。
特に液晶ディスプレイは熱で変色や液漏れを起こしやすく、寿命を大幅に縮める原因になります。
保存しているデータが破損するリスクもあるため、車内放置は避けましょう。
また、意外と見落としがちな精密機器とされるのが「アルコールチェッカー」です。
運転前に車内で使用することが多いため、ダッシュボードやグローブボックスに入れっぱなしにする人は少なくありません。
しかし、アルコールチェッカーも内部が劣化したり、正確な数値が測定できなくなる恐れがあるため、扱い方には注意が必要です。
アルコールチェック義務化の対象企業には「アルコールチェッカーを常時有効に保持すること」が道路交通法施行規則で定められているため、故障したままのアルコールチェッカーを使用した場合、法令違反になる可能性があります。
また、誤った測定結果は安全運転の確保や企業の社会的信頼を失うリスクとなるため、使用後は取扱説明書に沿って取り扱い、直射日光や高温環境を避けて、室内の涼しい場所で保管しましょう。
5-2 電池
乾電池やボタン電池などは、モバイルバッテリーと同様に使い方や保管方法によっては、発火のリスクがあります。
特に、リチウムイオン電池が使用された「リチウム乾電池」は高温に弱く、発火事故の危険性が高いため、車を離れるときは一緒に持ち歩くように心がけましょう。
また、頻繁に使用しないアイテムは電池を取り外して、冷暗所で保管しましょう。
5-3 ライター・スプレー缶
ライターやスプレー缶は、内部に可燃性の高圧ガスが含まれています。
そのため、温度が上昇しやすい車内での放置は、発火事故や車両火災を引き起こす可能性があるため大変危険です。
以下のようなスプレー缶は危険性が高いため、車内に忘れないように気をつけましょう。
【爆発の危険性があるスプレー缶の種類】
- 冷却スプレー
- 消臭スプレー
- 虫よけスプレー
- 油膜とりスプレー
- ヘアースプレー
- 制汗スプレー など
2025年8月には、札幌市の駐車場で冷却スプレーを乗せた車が爆発し、男女2人が怪我を負った事故が発生しています。
屋根が吹き飛び、分厚いフロントガラスが粉々になるほどの威力があるため、自分や同乗者の命を守るために使用上の注意を守り、使用後は涼しい場所で保管しましょう。
参考:爆発で車の屋根が吹き飛ぶ 冷却スプレー缶から漏れたガスが引火か ドラッグストア駐車場で男女2人がけが 札幌市中央区 |TBS NEWS DIG
5-4 ペットボトル飲料・メガネ
ペットボトル飲料やメガネのレンズは、太陽光を集め、シートや内装が焦げて発火につながる場合もあるため注意が必要です。
このほか、透明な容器や鏡、吸盤でつけるアクセサリー類も光を集め、火災を発生させるリスクがあるため、ダッシュボードなどの直射日光が当たる場所に放置しないように気をつけましょう。
5-5 アルコール消毒液
アルコール消毒液には揮発性の高い成分が含まれています。
気化したアルコールが車内に充満した場合、静電気やタバコの火などの小さな火種でも、引火や爆発が発生するリスクがあります。
成分が変質して除菌効果が低下する可能性もあるため、車を離れる場合は一緒に持ち出し、室内などの涼しい場所で保管しましょう。
6. モバイルバッテリーの適切な処分方法
モバイルバッテリーにはリチウムイオン電池が搭載されているため、可燃ごみや不燃ごみには出せません。
安全に廃棄するには、自治体のルールに従うか、JBRC回収協力店、販売元・メーカーの回収サービスを利用しましょう。
本章では、それぞれの処分方法について詳しく紹介します。
6-1 各自治体のルールを確認する
多くの自治体では「小型充電式電池」として、処分する際のルールが設けられており、一般ごみとしては回収されません。
戸別回収を行っている自治体もあれば、特定の施設や協力店への持ち込みを指定している自治体もあります。
また、回収に出す際は、絶縁テープやセロハンテープで金属端子部を絶縁処理する必要があり、膨張したモバイルバッテリーは回収を断られる場合もあります。
誤った処分方法は、ごみ回収車やごみ処理施設の火災の原因となるため、必ず自治体の処分ルールをホームページなどで確認しましょう。
6-2 JBRC回収協力店へ持ち込む
一般社団法人JBRCは小型充電式電池のリサイクルを推進しており、JBRC回収協力店では無料で回収を行っています。
家電量販店やホームセンターなどに専用の回収ボックスが設置されており、誰でも利用可能です。
ただし、膨張しているモバイルバッテリーは、安全上の理由から回収を断られる場合があります。
また、JBRCに加盟していないメーカーのモバイルバッテリーも、回収を断られる可能性があるため、事前に所有しているモバイルバッテリーが「JBRC会員企業リスト」に掲載されているか確認してください。
なお、回収協力店は全国に多数あるため、最寄りの店舗を知りたい場合は、JBRCの公式サイト「協力店・協力自治体検索(検索システム)」を活用しましょう。
6-3 販売元・メーカーに問い合わせる
保証期間内や初期不良の可能性があるモバイルバッテリーは、メーカーに問い合わせることで、回収・交換・下取りを受け付けてもらえる場合があります。
一部のメーカーでは、独自のリサイクルプログラムを設けており、安全に処分できるだけでなく、新しい製品を割引価格で購入できるケースもあります。
モバイルバッテリーを処分する際は、公式サイトやカスタマーサポートで、回収方法や対応内容を確認してみましょう。
7. まとめ|モバイルバッテリーの車内放置による発火事故に注意しよう
本記事では、モバイルバッテリーの車内放置が危険な理由や、過去に発生した発火事故、安全対策や適切な処分方法、車内放置が危険なアイテムについて紹介しました。
モバイルバッテリーは外出時や災害時に便利な一方で、温度が上昇しやすい車内に長時間放置すると、発火事故を招く恐れがあります。
スマートフォンなどの精密機器やスプレー缶、光を集めやすいペットボトルやメガネ、アルコール消毒液なども発火リスクがあるため、車内に放置しないように心がけましょう。
また、モバイルバッテリーを処分する際は、自治体のルールに従い、JBRC回収協力店や販売元・メーカーの回収サービスも活用しながら、適切に処分しましょう。