次世代モビリティとは?進化する2つの領域と注目される最新技術・今後の課題を解説

次世代モビリティとは、単なる「乗り物の進化」ではなく、ライフスタイルや都市の在り方を変える新しい移動手段です。

なかでも「パーソナルモビリティ」と「スマートモビリティ」の2つの領域は、近年急速に技術革新が進み、交通社会の課題解決に大きな期待が寄せられています。

そこで本記事では、それぞれの特徴や最新技術を分かりやすく解説し、今後の展望や普及に向けた課題についても詳しく紹介します。

1. 次世代モビリティとは?進化する2つの領域

次世代モビリティとは、AIやIoTなどの最新テクノロジーを活用し、従来の交通手段やシステムを進化させた、新しい移動手段やサービスの総称です。

自動運転や電動モビリティ、小型モビリティ、MaaS(Mobility as a Service)などが代表的で、環境負荷の低減や高齢化社会への対応、都市の渋滞解消など、社会課題の解決手段として期待されています。

次世代モビリティは、大きく分けて以下の2つの領域に分けられ、それぞれ開発目的が異なります。

  • ・パーソナルモビリティ
  • ・スマートモビリティ

本章では、2つの領域の特徴を確認していきましょう。

パーソナルモビリティ(シルバーモビリティ)の領域|社会から技術へ

パーソナルモビリティは、人口減少や高齢化などの社会課題を解決するために必要な移動手段であり、社会のニーズが技術開発を後押ししている点が特徴です(社会から技術への流れ)。

主に高齢者の移動支援として注目されており、一部では、シルバーモビリティとも言われています。

パーソナルモビリティ(シルバーモビリティ)は、高齢者の外出や移動支援を目的としており、近距離の買い物や散歩などに役立ちます。

高齢者の移動の自由度を向上させ、より快適な生活を送るための重要なツールと言えるでしょう。

スマートモビリティの領域|技術から社会へ

スマートモビリティは、AIやIoTなどの最新技術が社会に与える影響に焦点を当てた領域で、技術が社会を変化させる点が特徴です(技術から社会への流れ)。

スマートモビリティの領域では、自動運転車だけでなく、ナビゲーションシステムやシェアリングサービスなどを含めた交通システム全体のスマート化を目指しています。

スマートモビリティやパーソナルモビリティは、異なるアプローチで技術開発や普及が進んでいます。

しかし、どちらも「モビリティ(乗り物)の改良」にとどまらず、私たちの生活やインフラにまで変革をもたらす点から、総称して「次世代モビリティ」と呼ばれています。

2. 次世代モビリティ|パーソナルモビリティに該当する乗り物と活用例

パーソナルモビリティ(シルバーモビリティ)は、次世代モビリティのひとつであり、高齢者など移動が困難な人のサポートをしたり、都市の移動をより快適にするための小型のモビリティです。

近年、少子高齢化社会や都市のコンパクト化を背景に、移動の自由と安全性を両立させる手段として注目されています。

そこで本章では、パーソナルモビリティに該当する乗り物と、それらがどのような場面で活用されているかを具体的に紹介します。

パーソナルモビリティに該当する乗り物

パーソナルモビリティは、主に1〜2人乗りの電動モビリティを指します。

パーソナルモビリティに該当する乗り物には、電動車椅子や電動シニアカー、超小型EV(超小型電気自動車)、電動キックボード、セグウェイなどがあります。

パーソナルモビリティは、操作が簡単で、狭い道や歩道でも使用できる点が特徴です(歩行者の通行を妨げない場合に限る)。

また、シルバーモビリティと言われるように、高齢者の移動支援として導入が進んでおり、自治体や企業でも積極的に活用されています。

以下の関連記事では、小型モビリティの車両区分や利用する際の注意点について詳しく解説しています。EV自動車(電気自動車)などのモビリティについても紹介していますので、あわせて参考にしてください。

関連記事:『超小型モビリティ・電動モビリティの種類一覧を紹介|法律を理解し正しく運用するために

パーソナルモビリティの活用例

パーソナルモビリティは、日常生活のさまざまなシーンで活用されています。

たとえば、高齢者の買い物や通院の移動手段、観光地での移動支援、住宅街でのラストワンマイル交通などが代表例です。

また、介護施設や大規模病院では、施設内の移動補助としても活用されています。

パーソナルモビリティの普及により、自立支援や外出機会の拡大、安全な移動環境の確保などの効果が期待されています。

参考:次世代モビリティについて(PDF)|堺市ホームページ

3. 次世代モビリティ|スマートモビリティに該当する乗り物(技術)と活用例

スマートモビリティは、AIやIoT、ビッグデータなどの先進技術を活用し、都市全体の交通を効率化・最適化する新しいモビリティです。

自動運転やMaaS(Mobility as a Service)などが代表的で、次世代モビリティの「技術」として進化を遂げています。

そこで本章では、スマートモビリティに該当する乗り物や技術、そしてスマートモビリティが、社会でどのように活用されているのかを分かりやすく紹介します。

スマートモビリティに該当する乗り物(技術)

自動運転車(バス、トラック)は、スマートモビリティに該当する乗り物であり、車に搭載された車間距離制御システムや自動ブレーキなどの先進技術もスマートモビリティに該当します。

ほかにも、インターネットと接続された車を意味する「コネクテッドカー」や「V2X(車車間・路車間通信)」、ドローン配送、カーシェアリングなどもスマートモビリティの一例として挙げられます。

スマートモビリティは、移動の効率化や安全性向上を目的に開発が進んでおり、単なる「乗り物」ではなく、技術の一部として進化しています。

インフラとの連携も進み、MaaS(Mobility as a Service)など、スマートシティ構想と密接に関係しています。

関連記事:
自動運転レベルとは?0~5の各レベルの定義や対象車種・実用化の現状を解説
コネクテッドカーとは?メリットや期待される効果・クルマの未来について解説

スマートモビリティの活用例

スマートモビリティは、都市部や観光地、地方の過疎地域など、さまざまなシーンで活用が進んでいます。

たとえば、自動運転バスによる高齢者の移動支援、MaaSアプリを使った公共交通の一元管理、ドローンを用いた医療物資の輸送などが代表例です。

経済産業省と国土交通省は、将来の自動運転社会の実現を見据えて、令和元年から「スマートモビリティチャレンジ」に力を入れており、地域と企業の協働による移動課題の解決をサポートしています。

2025年6月時点で、124の自治体と35の団体、242の事業者が参加しており、全国各地でスマートモビリティを活用した実証実験が実施されています。

参考:企業・地域の取り組み紹介|SmartMobility Challenge(経済産業省・国土交通省)

4. スマートモビリティチャレンジの事例

スマートモビリティチャレンジは、地域における移動課題の解決や経済の活性化を促すため、以下の4つのコンセプトを掲げ、2019年から全国での取り組みを後押ししています。

  • ・地域社会における交通を便利に
  • ・ITのちからで地域交通の維持
  • ・ヒトもモノもサービスも運ぶ車
  • ・自動走行技術をもっと身近に

2025年現在も、地域課題の解決と持続可能な移動手段の実現を目指し、日本各地で次世代モビリティを活用した実証実験が行われています。

そこで本章では、地域特性を活かしたスマートモビリティチャレンジの事例を紹介します。

関西全域でのスマートモビリティチャレンジ

大阪・関西万博を見据え、関西広域のシームレスな移動を実現するために、日本初の本格的大規模MaaS「KANSAI MaaS(カンサイ・マース)」が、2024年12月からサービスを開始しています。

近鉄やJR西日本、阪急、阪神など、関西の主要交通事業者81社が参加しており、交通機関の経路検索や運行情報のリアルタイム提供、各社の企画乗車券を電子チケットで購入・利用できるシステムを提供しています。

今後は、高齢化や排出ガスなどの社会課題にも対応した「新たなインフラ」の構築に向けて、QRコード対応改札機の整備や交通事業者との連携強化が進められる見通しです。

参考:KANSAI MaaSによる交通事業者連携認証基盤への対応(PDF)|国土交通省

群馬県でのスマートモビリティチャレンジ

県民の自動車依存の高さや中高生の自転車事故、交通格差などの地域課題の解決に向けて、群馬県は「GunMaaS3.0(グンマース3.0)」サービスを2025年1月から順次開始しています。

JR東日本、東武鉄道など複数の交通・業界団体が連携し、鉄道やバスなど複数の交通手段を一括利用できるサブスクリプション型の電子チケット(サブスクバス)や、商業施設と連携した「パーク&バスライド」サービスも開始されています。

「GunMaaS3.0(グンマース3.0)」では、自家用車から公共交通へのスムーズな移行を後押しし、環境負荷や家計の負担、地域交通の持続可能性を高めることを目的とし、将来的には、群馬県全体での本格導入や施策展開も視野に入れています。

スマートモビリティの分野は、自動運転技術の開発だけでなく、交通の利便性向上や、環境負荷の低減などの社会的課題の解決にも寄与しています。

参考:GunMaaS3.0~複数交通モードによるサブスクリプションサービス(PDF)|国土交通省

5. 次世代モビリティの最新技術

次世代モビリティは、社会全体のインフラや生活スタイルに大きな影響を与える最新技術の集合体です。

自動運転技術、MaaS(Mobility as a Service)、HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)、さらには空を飛ぶモビリティまで、最先端技術が現実の移動を根本から変えようとしています。

そこで本章では、次世代モビリティ分野で注目されている最新モビリティや技術を紹介します。

自動運転

自動運転は、AIやセンサー技術を活用して人の運転操作を不要にする技術です。

新型の国産車の多くはレベル2(運転支援)、一部でレベル3(条件付運転自動化)の技術も実装され始めています。

2025年現在、「レベル4(完全自動)」の実用化に向けた開発や実証実験が進んでおり、将来的にはドライバー不要での公道走行が可能になる見込みです。

自動運転は事故削減や高齢者の移動支援、物流の効率化など、幅広い分野で注目されています。

自動運転レベルの定義やそれぞれの特徴、対象車種、メリット・デメリット、そして実用化の現状については、以下の関連記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

関連記事:『自動運転レベルとは?0~5の各レベルの定義や対象車種・実用化の現状を解説

MaaS

MaaS(Mobility as a Service)は、鉄道・バス・タクシー・シェアサイクルなど複数の交通手段をひとつのアプリやサービス上でシームレスに連携させたサービス(システム)です。

利用者は目的地までの最適ルートを検索でき、チケットの購入や予約、決済までを一括で完了できます。

交通手段の利便性が大幅に向上するほか、地方の交通弱者の移動課題解決にも期待され、経済産業省と国土交通省の支援もあり、自治体や交通事業者との連携が加速しています。

HMI

HMI(Human Machine Interface)とは、人とクルマや、人とAIシステムとのやり取りを支援する技術です。

車向けの「Siri」や「Alexa」と言えばイメージしやすいでしょう。

音声操作、タッチパネル、AR表示、ドライバーのジェスチャー認識などの最新技術を活用し、自動でエアコンの空調調節ができたり、フロントガラスに半透明のナビゲーション映像を表示できたりします。

今後、自動運転車との円滑なコミュニケーションにもHMIは欠かせない存在となるでしょう。

次世代空モビリティ

次世代空モビリティは、いわゆる空飛ぶクルマやドローンタクシーなど、空を活用した新しい移動手段です。

都市の渋滞回避や災害時の輸送、離島・山間部へのアクセスの改善など、空間を活用した移動革命として注目されています。

日本でも2025年の大阪・関西万博でデモ飛行が行われており、今後のインフラ整備と法整備に向けた取り組みが国家レベルで行われています。

参考:次世代空モビリティ|経済産業省

6. 次世代モビリティの今後の展望と課題

次世代モビリティは、少子高齢化や環境問題、都市の交通渋滞などの社会課題を解決する新たな移動手段として注目されています。

自動運転やMaaS、空モビリティなどの技術は日々進化を遂げており、わたしたちの生活様式や都市インフラが大きく変わる可能性があります。

一方で、制度の整備や安全性の確保、費用負担など、実用化・普及に向けた課題も多く残されています。

そこで本章では、次世代モビリティの今後の展望と課題について分かりやすく解説します。

次世代モビリティ|今後の展望

次世代モビリティは、今後、より安全で効率的な移動手段の普及が期待されています。

自動運転車やMaaSの活用により、移動の自由度が高まり、高齢者や交通弱者の生活支援にもつながるでしょう。

乗用車としての自動運転車だけでなく、小型モビリティやバス、タクシーなど、事業用の次世代モビリティも普及すると考えられ、私たちの移動手段が大きく変わる可能性があります。

近年は、実用性と環境性能を兼ね備えたモビリティへのニーズが高まっており、今後は高級車にとどまらず、公用車や営業車、小口配送車などでも導入が進むと見込まれています。

また、都市だけでなく地方でも、公共交通を補完する手段として活用が進み、地域活性化にも貢献すると注目されています。

矢野経済研究所の調査によると、国内の次世代モビリティの新車販売台数は2030年に最大49,500台に達する見込みです。

次世代モビリティは、すでに私たちの暮らしのすぐそこまで来ており、近い将来、街中で目にする機会も増え、誰もが当たり前のように利用する時代が訪れるでしょう。

参考:次世代モビリティ市場に関する調査を実施(2023)|株式会社矢野経済研究所

次世代モビリティ|今後の課題

次世代モビリティの普及に向けては、いくつかの課題が立ちはだかっています。

まず、次世代モビリティに関連する法律や保険制度の整備が不十分で、モビリティごとの車両区分や交通ルール、事故発生時の責任の所在の明確化など、解決すべき課題が残されています。

また、高額なインフラ整備費用や維持コストも普及の障壁になります。

さらに、都市部と地方での格差、ITリテラシーの差による使いこなしの問題など、技術と社会のギャップを埋める取り組みが求められます。

今後の次世代モビリティの普及に向けて、行政・企業・市民が一体となって、制度設計やインフラの整備、デジタル教育の充実など、多角的な視点からの取り組みが重要となるでしょう。

7. まとめ|次世代モビリティによる新たなライフスタイルが目の前まできている

本記事では、次世代モビリティの概要や2つの領域、最新技術や今後の展望と課題について詳しく解説しました。

次世代モビリティは、わたしたちの暮らし方や社会のあり方を変える力を秘めています。

高齢化や環境問題、都市と地方の交通格差などの課題を解決する手段として、すでに実用化が進んでおり、移動がより便利で快適になる未来がすぐそこまで来ています。

今後、制度やインフラの整備が進めば、次世代モビリティは私たちのライフスタイルに自然と溶け込み、誰もが当たり前に使う時代が到来するでしょう。

本記事をきっかけに、次世代モビリティとの関わり方に目を向け、日々の生活にどのような変化が訪れるのか、イメージしてみてください。

株式会社パイ・アール ロゴ

この記事の執筆者

株式会社パイ・アールPAI-R Co., Ltd.

安心・安全な交通社会の実現へ向けてさまざまな課題や解決を探求し、アルコールチェックをはじめドライバーの安全管理や業務管理にまつわるさまざまなお役立ち情報を発信しています。

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