ライドシェアリングの5つの問題点とは?日本における白タクとの違いや今後の課題

昨今ニュースでよく耳にする「ライドシェア」。
タクシーが不足している地域や時間帯に、タクシー会社の管理のもとで一般ドライバーが有料でサービスを提供できる新たな制度「日本版ライドシェア」が2024年4月から一部地域でスタートしました。
今後の市場拡大の行く末はどのようになっていくのでしょうか?
この記事を通してライドシェアのメリット・デメリットを正しく理解しましょう。
目次 / このページでわかること
1.ライドシェアリングとは?
そもそもライドシェア(Ride Share)とは自動車の相乗りサービスを意味し、他の利用者と座席をシェアして使用する仕組みです。
一般ドライバーが自家用車を使用して、運送サービスを提供します。広義的には自動車以外の自転車やバイク等も含まれますが、本記事においては自動車に限定して解説していきます。
関連記事:『ライドシェアとは?カーシェアとの違いやメリット・デメリットを解説』
ライドシェアと白タクの違いは?
白タクは、国の許可なく白色ナンバーのまま個人が旅客輸送業を行う違法タクシーです。
通常のタクシーは国から営業許可を得て緑色のナンバーをつけているため、区別するために「白タク」と呼ばれるようになりました。発覚すれば、『3年以下の懲役または300万円以下の罰金』の重い罰則が科される可能性があります。
それに対してライドシェアは、国から認可を受けた上で行う旅客輸送事業であり、違反行為に当てはまりません。
白タクは日本では違法
もともとライドシェアは、一般ドライバーが自家用車を利用した自動車の相乗りサービスとして世界で急速に普及してきたサービスです。
しかし、日本では営業許可がない個人が自家用車を使って運転するタクシー(=白タク)は、道路運送法の第78条で原則禁止されています。
福祉などの目的の自家用有償旅客運送であれば認められている
白タクは日本では原則禁止されていますが、一部例外があり「自家用車有償旅客運送」がそれに該当します。
「自家用有償旅客運送」とは、バス、タクシー、電車などが一定の距離になく、十分な移動サービスが提供されない過疎地域などで、国土交通大臣の登録を受けた市町村、NPOなどが自家用車を用いて有償で運送する仕組みです。
この他に、豪雨や地震、火災といった災害が起こって緊急を要する際にも、有償での運送は認められています。
2.ライドシェアリングの5つの問題点(デメリット)
ライドシェアの問題は、分かりやすく言うと「タクシーとの差」です。タクシーでは当然なことが、現時点の国内ライドシェアの取り決めでは担保されません。
そもそもタクシーは会社が個人に提供するサービスであり、海外のライドシェアではサービスプラットフォーム上とはいえ、個人と個人でのサービス取引です。
したがって、責任や信頼性が希薄な関係から、さまざまな問題が発生することが懸念されています。
本章では、今後考えられるライドシェアの問題点5つを、海外で実際に起きた問題も交えて紹介します。
①ドライバーが加害者となる事件への懸念
ライドシェアを導入する上で、一番懸念されているのはドライバーが乗客に危害を加える事件です。
実際にライドシェアが普及している世界各国では、すでにライドシェアの運転手による乗客への暴行や誘拐といった犯罪が発生していることから、同乗中に危険な目に遭う可能性もあります。
車内という密閉空間になるため、人の目から触れにくく、また乗客が逃げることが困難となります。
参考:性的暴行998件、レイプ141件 米ウーバーが安全報告書公開|CNN
女性客に性的暴行の「ウーバー」運転手に終身刑、インド|AFPBB News
②乗客が加害者になる場合もある
また酔っ払いの乗客などによる暴言・暴行行為なども懸念されています。
個人の自家用車の車内で嘔吐されたり、車を傷つけられる可能性もあります。
したがって、運転者は車内撮影用にドライブレコーダーを搭載することも必要だと考えられます。
世界各国のライドシェアの仕組みの多くは「相互レビュー」が採用されており、乗客も運転者もお互い気持ちよくサービスが利用できるように相手側の情報を事前に把握して選択することが可能です。
③ドライバーの飲酒運転
タクシーは運行管理者によってドライバーの体調確認、車両点検、酒気帯び確認が義務付けられていますが、ライドシェアでは一般のドライバーが自家用車で乗客を乗せるため、そのようなチェック体制がとられていません。
ドライバーが万が一飲酒運転をしていても、よほどの酩酊状態でなければ乗客は気づけないかもしれません。
乗客はもちろんですが他の歩行者などにも危険をもたらし重大な事故に繋がってしまう恐れがあります。
その他労働時間の規制もないため、体調不良や居眠り運転なども懸念されています。
④ライドシェアは質が担保されない
ライドシェアの反対意見として多く挙げられるのが、運転の質や安全性が担保されないのでは、という点です。
海外のライドシェアでは、運転免許証があれば誰でも始められるので、ドライバーによって運転技術に差があり不安を感じている人が多いようです。
しかし、日本版ライドシェアは、タクシー会社の管理下で運行されるため、海外のライドシェアに比べると安全面に配慮された仕組みになっています。ただし、タクシーと完全に同じ体制になるのか、今後の運用や制度の整備にも注目が必要ですね。
⑤事故の場合の保険や保障
海外のライドシェア運営会社の多くは、同乗者の補償が十分なされるように運転手に任意保険の加入を義務付けているそうです。通常、乗客の輸送を行っている間はライドシェア運営会社負担で事業用の保険が適用され、交通事故発生時の補償に対応できるといったシステムになっているようです。
日本のライドシェアでも、万が一の事故の際の補償面も注目すべきポイントです。
3.ライドシェアリングのメリット3選
日本での白タクは原則禁止されていることもあり、不安や心配の声が多く聞こえてきますが、ライドシェアには以下のようなメリットもあります。
- ・タクシー不足の解消に貢献
- ・スマホアプリで簡単に配車
- ・ドライバーの新たな働き方の創出
上記3つを解説します。
① タクシー不足の解消に貢献
近年、運転手不足の影響でタクシーの供給が追いつかず、とくに過疎地域ではタクシー会社の撤退が相次いでいます。一方で、コロナ禍からの経済回復に伴い、外国人観光客の急増によりタクシー需要は高まっています。
こうした状況の中、日本版ライドシェアは、タクシー不足が深刻な観光地や地域社会の移動手段として活用が期待されています。利便性の向上だけでなく、地域経済の活性化にも貢献する可能性があるでしょう。
② スマホアプリで簡単に配車
スマホアプリを使えば、タクシーを探す手間がなく、簡単にライドシェアを利用できます。目的地を入力するだけでスムーズに配車され、待ち時間を短縮できます。
また、アプリ上で事前に料金が決定されるため、乗車後に想定外の料金が発生する心配もありません。さらに、キャッシュレス決済に対応しており、現金を持ち歩かなくてもスムーズに支払いが完了します。利便性の向上に期待できるでしょう。
③ ドライバーの新たな働き方の創出
自家用車を保有しているが乗る頻度が低く、維持費がかさんでいる方も多いと思います。ライドシェアはすでに保有している車を使って手軽に働くことができ、維持コストの軽減にもなります。
また、空き時間を活用し、自家用車で有償旅客運送を行うことで、地域住民に新たな収入源を提供する可能性があります。とくに地方部では、多様な働き方を求める人々にとって魅力的な選択肢となるでしょう。
4.ライドシェアリングの今後の見通しは?
日本では白タクが禁止されているため、本格的な運用開始には多くの壁がありますが、交通手段としての利便性だけではなく、過疎地のドライバー不足の解消、CO2排出の削減による環境への配慮など今後の日本を待ち受ける多くの課題を解決する手段としても注目を浴びています。
ドライバー、乗客双方の安全が守られるルールをきちんと整備した上であれば今後の普及も期待されるのではないでしょうか。
参考:大阪府・市 「ライドシェア」制度案まとめる 国に提案へ|NHK
関連記事:『ライドシェアに関する最新情報』
5.まとめ|ライドシェアの問題点(デメリット)・メリットを把握した上で今後の動きに注目
日本におけるライドシェアにまつわる議論は長年に及んでおります。
そもそもライドシェアは公共交通機関がなくて移動手段に困っている人たちが多い地方ほど必要不可欠です。
世界規模で見ると先進国でライドシェアが進んでいない国といえば、まず日本が挙げられるでしょう。海外からの観光客が増加する今、日本では自国同様のサービスが受けられないという声をニュースでもよく耳にします。
タクシーの運転手不足、運転手の高齢化、海外観光客の増加、地方の過疎化、需要と供給が不釣り合いになっている日本において、新たな移動インフラは間違いなく必要です。
近い将来、交通インフラという分野において日本の常識は大いに変わるかもしれません。