デジタルタコグラフ(運行記録計)とは?デジタコの種類やメリットを紹介
デジタコとは、デジタルタコグラフの略称であり、車両の走行距離、速度、時間などを記録する運行記録計のことです。
現在、法律によってトラックなどの貨物自動車や、バス・タクシーなどの旅客自動車は、タコグラフの装着が義務化されており、デジタコもしくはアナタコのどちらかを装着しなければなりません。
しかしながら、近年はデータ管理のしやすさから、デジタコが主流になっています。
そこで本記事では、デジタコとアナタコとの違い、デジタコの種類、デジタコを導入するメリット・デメリットについて解説します。
目次 / このページでわかること
1.デジタコ(運行記録計)とは?
デジタコ(運行記録計)とは、デジタル化されたタコグラフのことです。記録紙が必要なアナタコより詳細なデータを記録できるため、車両の運行管理やドライバーの勤怠管理、事故削減のための安全管理に役立てられています。
本章では、デジタコの役割について正しく理解するために、アナタコとドラレコとの違いを比較しながら解説します。
デジタコとアナタコの違い
デジタコとアナタコは、どちらも車両の稼働状況や運行管理を目的に設置されます。
2つの違いは以下の通りです。
デジタコとは?
デジタコとは、メモリーカードに車両の走行速度・距離・時間を記録するデジタル式のタコグラフ(運行記録計)のことです。車両の位置情報、急加速・急減速、アイドリング情報なども記録されるため、アナタコよりも詳細なデータを簡単に把握でき、業務効率化に優れています。
アナタコとは?
アナタコとは、専用のチャート紙に「走行速度・距離・時間」の法定3要素を記録するタコグラフ(運行記録計)のことです。チャート紙を読解するための専門知識が必要で、手間や時間がかかります。デジタコよりも導入コストが低く、ドライバーの心理的な束縛がない特徴があります。
デジタコとドラレコの違い
デジタコとドラレコは、設置目的が違います。
ドラレコは、車両に取り付ける映像記録機器であり、運転中の状況や、事故前後の映像や音声を記録する目的で設置されます。
デジタコは、車両の運行管理を目的に設置されます。車両の詳細な運行情報を取得でき、近くで事故渋滞などがあれば、営業所から最適なルートをドライバーに提案可能です。
なお最近では、ドラレコ搭載型のデジタコやドラレコと連携可能なデジタコなども展開されています。目的と用途に応じて自社に合ったものを選びましょう。
2.デジタコは3種類に分類される
デジタコは
- ・「単機能型」
- ・「標準型」
- ・「多機能型」
の3つに分類され、使える機能やメーカーによって特徴が異なります。そこで本章では、各デジタコの特徴について紹介します。
単機能型デジタコ
単機能型デジタコは、法定3要素と呼ばれる「車両の速度・距離・時間」などの、基本的な情報を取得するシンプルなデジタコです。必要な機能に絞られており、設置や操作も簡単なため、導入コストが低いです。
【単機能型デジタコで記録できる項目(一例)】
- 走行速度
- 走行距離
- 走行時間、休憩時間
- エンジン稼働状況
標準型デジタコ
標準型デジタコは、エンジンの回転数、アイドリング時間、急ブレーキ、急加速の回数なども記録可能です。
ドライバーの労働時間を詳細に記録できるため、過労を防ぎ、安全運転のサポートにも役立ちます。また、ドラレコや日報などの外部機器と連動可能です。法令遵守をより重視した設計なので、中小企業や大企業で採用されています。
【標準型デジタコで記録できる項目(一例)】
- 走行速度
- 走行距離
- 走行時間、休憩時間
- エンジン稼働状況
- 急ブレーキ、急加速
- アイドリング時間
- GPS機能
- 関連機器との連携 など
多機能型デジタコ
多機能型デジタコは、標準型デジタコの機能に加え、燃費データの分析、アルコールチェッカーとの連携機能が搭載されています。
ドライバーの運転の癖を把握でき、燃費の良い運転のサポートや、車両のメンテナンス管理に役立ちます。
さらに、メモリーカード式か、Wi-Fiを利用したクラウド式かを選べる機種もあります。記録項目や機能面が充実しているため、3種類の中で最も導入コストが高いです。
【多機能型デジタコで記録できる項目(一例)】
- 走行速度
- 走行距離
- 走行時間、休憩時間
- エンジン稼働状況
- 急ブレーキ、急加速
- アイドリング時間
- GPS機能
- 燃費状況
- 関連機器との連携 など
以上の通り、
「単機能型デジタコは、低コストで必要最低限の記録が可能」
「標準型デジタコは、記録項目が増えてバランス良く機能が充実」
「多機能型デジタコは、あらゆる機能の充実で業務の効率化が可能」
といった特徴があります。
3.デジタコを導入する3つのメリット
タコグラフの装着は義務化されており、近年はデジタコが主流になっています。アナタコよりも導入コストが高いにもかかわらず、デジタコが選ばれるのは、事業者にとって大きなメリットがあるからです。
そこで本章では、デジタコを導入するメリットを3つ紹介します。
運行管理の効率化
デジタコを導入することで、車両の運行状況をリアルタイムで把握でき、効率的に運行管理が行えます。
取得した走行ルートをもとに、事故渋滞があれば、営業所から最適なルートを指示できるほか、細かいスケジュール調整、配車計画が可能です。
また、取得した燃費データをもとに、エコドライブを目指した運転指導にも活用できます。燃料などのコスト削減が可能になり、事業者の運行管理の効率化に大きく役立ちます。
安全性の向上
デジタコを活用することで、ドライバーの運転状況を細かく把握でき、安全性の向上につながります。
速度超過、急加速、急ブレーキなどの情報が自動的に記録されるため、ドライバー一人ひとりに合わせた運転指導が可能です。
危険運転による事故のリスクを下げるほか、ドライバーや車両の安全性が高まることで、企業の信頼向上にもつながります。
正確な労務管理
デジタコの導入により、ドライバーの労働時間や休憩時間が自動で記録され、正確な労務管理が行えます。
過去に、トラックによる死亡事故や重傷事故、長距離・長時間輸送が問題視され、平成26年には、事業者に対する監督強化を目的に法改正が行われました。そのため、事業者は今日に至るまで、ドライバーの正確な労務管理が求められ、守れない場合は罰則が科されます。
デジタコは、管理者には把握しづらいドライバーの労働状況を自動で記録し、ドライバーによる不正や過重労働の防止に役立ちます。事業者にとっても、法令を遵守した労務管理が可能です。
4.デジタコを導入する3つのデメリット
デジタコは、簡単に運行管理や労務管理が行えるため、多くの事業者に選ばれています。ただし、デメリットも存在します。
そこで本章では、デジタコのデメリットを3つ紹介します。デジタコの導入を検討している方は、参考にしてください。
導入コストが高い
デジタコの導入コストは、本体購入費用と設置費用を合わせて、単機能型デジタコで約5〜7万円、標準型デジタコと多機能型デジタコで約15〜30万円が相場です(メーカーや搭載するオプション、機能によって価格は異なるため、見積りを取得することをおすすめします)。
アナタコの導入コストが約3〜5万円なので、デジタコの導入コストは3倍以上高いです。車両を何台も保有している事業者にとって、デジタコの導入は大きな負担になる可能性があります。
そのため、経済産業省・国土交通省・トラック協会・日本自動車運送技術協会で行っている補助金・助成金制度を活用する企業も少なくありません。
参考:事故防止対策支援推進事業|国土交通省 / トラック輸送省エネ推進事業|経済産業省 / 令和6年度 安全機器等導入促進助成事業|一般社団法人 神奈川県トラック協会 / 運行管理の高度化に対する支援|公益財団法人日本自動車輸送技術協会
データ管理が手間
デジタコは、膨大な運行データを記録・保存するため、定期的にバックアップが必要です。SDカード式のデジタコの場合、データ破損の恐れがあり、個人情報の流出につながりかねません。
また、記録したデータ量が多いことで、データ解析やレポート作成に労力がかかる場合があります。
取得データが多い分、運行管理者にとってデータ管理は重要項目であり、場合によっては、管理システムが必要になる可能性があります。
従業員のプライバシーへの懸念
デジタコは、自動で走行ルートや休憩時間が記録されるため、ドライバーは「監視されている」とストレスを感じる可能性があります。とくにデジタコの場合、リアルタイムでドライバーの走行状況を把握できるため、プライバシーへの配慮が求められます。
デジタコの導入にあたって、ドライバーに対して、取得データの使用目的や取り扱い方針を説明し、十分なコミュニケーションを図るよう、配慮が必要です。
導入後も、ドライバーがストレスを感じていないか、定期的に確認することも重要です。
5.デジタコの今後の発展
デジタコの装着率は、現在80%まで増えており、国土交通省は、2027年までに事業用トラックのデジタコ装着率を85%まで引き上げることを目標としています。
また、技術の進化に伴い、性能がより優れたデジタコが今後も登場すると考えられています。
そこで本章では、デジタコの今後の発展に関わる、注目すべきポイントを紹介します。
AIを搭載したデジタコ
AIを搭載したデジタコは、過去の運行データや事故データをもとに、ドライバーの疲労や危険運転を検知する機能を備えています。これにより、管理者はリアルタイムでドライバーの状態を把握でき、危険運転や事故を未然に防ぐことが可能です。
また、運転終了後に自動で運転スコアを計測し、ドライバー一人ひとりに対して、適切な運転指導を行えます。教育ツールとして利用できるため、今後もAIを搭載したデジタコが増えていくと考えられます。
アルコールチェッカーやドラレコとの連携
アルコールチェッカーやドラレコと連携することで、安全管理をさらに強化できます。
アルコールチェッカーの場合、運転前にドライバーのアルコールチェック結果をデジタコに記録・送信できます。測定結果を操作できないため、飲酒運転を未然に防ぐことが可能です。
また、ドラレコの映像とデジタコの走行データを組み合わせて確認でき、事故やトラブルの原因を素早く確認・特定できます。
クラウドデータの活用
クラウドを活用することで、いつでもどこでもデータを確認でき、複数の従業員と情報共有が可能です。現在、メモリーカードにデータを記録・保存するデジタコが多いですが、今後はクラウドを活用したデータ管理が主流になると予想されます。
なお現在、国土交通省では、デジタコの進化版である「スマートタコグラフ」の普及が計画されています。
スマートタコグラフは「AI」「アルコールチェッカーやドラレコとの連携」「クラウドデータの活用」はもちろん、ドライバーの健康診断や適正診断、IC運転免許証の認証機能などが搭載されます。
デジタコの性能次第で、運行管理に活用できるデータの幅は広がるので、今後のデジタコの発展は注意深くチェックする必要があります。
6.まとめ
本記事では、デジタコの機能や種類、アナタコ・ドラレコの違い、メリット・デメリットについて解説しました。
現在、事業用の大型トラックなどに対して、タコグラフの装着が義務化されています。今後はデジタコの装着が主流になり、機能もさらに充実すると考えられています。
アナタコに比べて導入費用がかかりますが、各省庁・協会が行っている補助金や助成金制度を上手に活用することで、コストを抑えることが可能です。紹介した内容を参考に、デジタコの導入を検討してみてください。