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運送業許可(一般貨物自動車運送事業許可)を取得するために必要な5つの条件とは?

運送業で起業する際に求められるのが「運送業許可」です。

運送業許可には大きく分けて

  • 一般貨物自動車運送事業
  • 特定貨物自動車運送事業
  • 貨物軽自動車運送事業

の3つの種類があります。

本記事では「一般貨物自動車運送業許可」に焦点を置いて、運送業許可に必要な条件や書類、取得ステップについて紹介します。

事業内容によっては取得する必要がないケースがあるので、これから運送業を始める方や、起業を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

1.運送業許可制度(一般貨物自動車運送事業許可)とは?

本章では、運送業許可制度(一般貨物自動車運送事業許可)の内容や、取得が必要なケースについて解説します。ご自身が計画している事業内容において、許可の取得が必要かどうか、参考にしてください。

一般貨物自動車運送事業とは?

一般貨物自動車運送業とは「他人から運賃をもらい、一般貨物自動車で荷物を運ぶための許可」です。原則として、国内で自社以外の人から代金を得て荷物を運ぶ場合は、一般貨物自動車運送業許可の取得が必要になります。

この許可は法人だけでなく、個人事業主にも適用されます。無許可で営業した場合は「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金または併科」、初犯の場合は「事業停止30日間」が課せられるので、必ず取得するようにしましょう。

参考:貨物自動車運送業法(e-Gov法令検索)「第6章 罰則

運送業許可が必要なケースは?

自社以外の人から代金を得て荷物を運ぶ場合は「運送業許可」の取得が必要です。運送業許可は大きく分けて3つの種類があります。使用する車両や事業内容によって、取得すべき運送業許可の種類が異なるので、下記の表を参考にしてください。

運送業許可の種類許可制度車両の種類事業内容
①一般貨物自動車運送事業
(緑ナンバー)
許可制(国土交通大臣または地方運輸局長の許可が必要) トラックや普通自動車など(軽自動車以外の車両) 事業用の車両を使用し、不特定多数の依頼主から有償で荷物を運送する事業。
②特定貨物自動車運送事業事業用の車両を使用し、1社と専属契約して有償で荷物を運送する事業。
③貨物軽自動車運送事業
(黒ナンバー)
届出制(登録を行えば許可される) 軽自動車・排気量125cc以上の自動二輪車 事業用の車両を使用し、不特定多数の依頼主から有償で荷物を運送する事業。(軽自動車を使用した個人経営の小口貨物配達、バイク便など)

参考:公益社団法人全日本トラック協会「貨物自動車運送事業法ハンドブック

 

ちなみにバスやタクシーは旅客自動車運送業に該当しますが、霊柩車の場合、亡くなったご遺体は貨物扱いとなるので、一般貨物自動車運送事業の許可が必要です。

関連記事:『緑ナンバーとは?取得するまでの3ステップとメリット・デメリットを紹介
黒ナンバーとは?取得するための5つの条件と3ステップを解説| 軽貨物運送事業に必須

2.運送業許可(一般貨物自動車運送事業許可)に必要な5つの条件

運送業許可(一般貨物自動車運送事業)の取得には、必要条件が5つあります。

本章では、5つの条件について、それぞれ解説するので、条件を満たしているかチェックしてください。

①人員の確保

運送業許可(一般貨物自動車運送事業許可)を得るには、運行管理者1名と運転者5名、計6人の人員が最低でも必要です。運行管理者は、運転者との兼務は認められていません。なお、事業用車両の安全管理を行う整備管理者も最低1人必要ですが、こちらは運行管理者、もしくは運転者が兼務しても問題ありません。

ただし、整備管理者になるためには「整備士の有資格者」と「実務経験が2年以上で陸運局が行う整備管理者講習を受講した者」の2つの要件を満たす必要があります。

関連記事:『運行管理補助者とは?選任方法や業務範囲・権限について解説

②事業設備が整っているか?

運送業許可(一般貨物自動車運送事業許可)の取得にあたっては、営業所、もしくは車庫と併設した休憩所を整えることが必須です。加えて、同時休憩者(睡眠者)1人当たり2.5平方メートルの広さを有する必要があります。また「市街化調整区画」に該当しない場所に設置し、運転者が常時利用できる施設でなければいけません。

③車両の確保

一般貨物自動車運送事業許可の取得に関しては、軽自動車以外、かつ車検証の用途欄に「貨物」と記された車両を、最低でも5台保有する必要があります。ただし「購入予定」として売買契約書を提出すれば、許可申請時に営業所への車両配置が間に合わなくても問題ありません。

④駐車場の確保

駐車場や車庫は原則として、営業所に併設しなければいけません。併設できない場合は、営業所から直線で10km以内の場所に設置する必要があります。その他、細かい条件は以下の通りです。

  • 都市計画等関係法令に違反していないこと(市街化調整区画に該当していないこと)
  • 自動車車庫出入口の前面道路の幅が車両制限令に適していること
  • 車庫において、車両相互間の間隔が50cm以上確保されていること
  • 保有するすべての車両を容易に収容できること
  • 賃貸物件の場合、2年以上もしくは自動更新の賃貸借契約が結ばれていること

なお、自分で候補地の幅測定をした場合、正規の数値として認められないので、行政書士に調査依頼することが一般的です。

⑤資金の確保

運送業許可の取得には、綿密な資金計画が重要です。費用の内訳は、人件費、建物費、燃料油脂費など多岐にわたり、これらの必要資金は、従業員数や車両の確保状況によって異なります。また、資金調達の裏付けが必要なので、申請から許可が降りる間は常時確保されていることが定められています。

3.運送業許可(一般貨物自動車運送事業許可)取得に必要な書類

運送業許可(一般貨物自動車運送事業許可)の取得に必要な書類は、下記の通りです。

書類を揃えたら管轄の運輸局の窓口に提出しましょう。

【運送業許可(一般貨物自動車運送事業許可)取得必要書類】

  • 一般貨物自動車運送事業許可申請書(特別積合せ貨物運送を除く)
  • 事業用自動車の運行管理等の体制を記載した書類
  • 事業の開始に要する資金および調達方法を記載した書類
  • 事業施設概要および付近の状況を記載した書類
  • 施設関係宣誓書
  • 車両諸元明細書(自動車検査証の添付があれば不要)
  • 法5条等宣誓書(欠格事由)

申請者が個人か法人かで、提出書類は異なります。提出書類のダウンロードは国土交通省HPもしくは、各都道府県の運輸支局HPにて可能です。なお、許可が降りた後は運行管理者・整備管理者の選任届や、運賃料金設定届出の書類等を届け出る必要があります。

参考:国土交通省 北陸信越運輸局「一般貨物自動車運送事業 経営許可申請書作成の手引き

4.運送業許可(一般貨物自動車運送事業許可)取得のステップ

運送業許可(一般貨物自動車運送事業許可)取得のステップは大きく分けて4つです。

本章では、各ステップごとに手続き内容を詳しく解説します。

①取得に必要な書類を提出する

前の章で紹介した必要書類を各都道府県の管轄運輸支局に提出します。申請書類の収集および作成は、早くても約1ヶ月程度かかる場合が多いです。また、保有する車両がリースなのかどうかで提出書類が異なるため、書類作成にあたっては、行政書士に頼む方も少なくありません。

②各地域の運輸局にて審査を受ける

書類がすべて揃ったら、各都道府県の管轄運輸支局に提出します。一般貨物自動車運送事業の場合、書類提出後に常勤役員1名を対象に、法令試験が実施されます。法令試験に合格後、書類審査が開始され、新規許可申請の場合、認可までに3〜5ヶ月程度かかります。申請内容の再確認や修正が生じると、さらに期間が延びる可能性があるので、注意が必要です。提出先が不明な方は、下記リンク「全国運輸支局等のご案内」から確認できます。

参考:自動車検査登録 総合ポータルサイト「全国運輸支局等のご案内

③事業用自動車等連絡書を取得

運送業許可が降りると、その場で事業用自動車等連絡書が発行されます。この書類は、この後緑ナンバーを取得するために必要な書類です。いわば「車庫証明」なので、大切に保管しましょう。

④ナンバーの取得

受け取った事業用自動車等連絡書に必要事項を記入し、手数料納付書と、諸元表もしくは車検証(中古車の場合)を揃えて運輸支局へ提出します。提出後、緑ナンバーが交付されたら車両に取り付けます。その後、事業用車両の自動車任意保険に加入しましょう。

希望ナンバーがある方は「希望番号申込サービス」でインターネットから申込可能です。人気番号は抽選となり、当選した場合は支払い期日までに交付手数料を支払う必要があります。

なお、軽自動車(黒ナンバー)の取得に関しては関連記事で詳しく紹介しているので、下記リンクから確認してください。

関連記事:『黒ナンバーとは?取得するための5つの条件と3ステップを解説| 軽貨物運送事業に必須

5.ラストワンマイル配送について

運送業界では、配送の需要拡大に伴い、ラストワンマイルの改善が要されています。

ラストワンマイルとは?
消費者が商品を手にするまでの、最後の再送区間(最後1マイル)のこと。
宅配における、配達店から個人宅への区間を指す。

近年、年末年始などの繁忙期は輸送需要が急増し、事業用車両(緑・黒ナンバー車両)のみでは輸送力の確保が難しいことが問題視されています。そこで国土交通省は、許可を得た運送事業者の、繁忙期における自家用車(白ナンバー)の活用を例外的に許可する制度の改正を行いました。

令和3年9月改正「年末年始および夏期等繁忙期におけるトラック輸送対策について」

 許可の期間申請手続き法令違反等への対応
改正後内容

以下の期間について1車両あたり90日間の稼働日を任意で選択

  • ・春期:3/10〜3/31、4/20〜4/30、5/6〜5/15
  • ・夏期:6/15〜8/12
  • ・秋期:8/13〜11/9
  • ・年末:11/10〜12/31
  • ・一度で1年間の申請が可能
  • ・翌年2月までに運送実績を報告
  • ・悪質な違反や社会的に影響のある事故があった場合、直ちに許可証の返納
  • ・上記の場合、稼働日数が90日を超えた場合、事故事実の隠蔽が発覚した場合は、翌年の許可を行わない

この制度によって、宅配業者や引越し業者は白ナンバー車両での営業が可能になり、輸送力が確保できるようになりました。改正後の内容を把握していない事業者も意外と多いので、開業に向けてすでに動いている方や開業を検討している方は、運送業に関する制度を定期的に把握し、活用してください。

6.まとめ|運送業許可は計画的に取得しよう

本記事では運送業許可(一般貨物自動車運送事業許可)の取得条件や必要書類、取得ステップについて解説しました。

運送業許可を取得するまでには、書類の準備期間も合わせると、早くても3〜6ヶ月程度かかります。場合によっては、営業所や車庫を設置する土地を見つける必要があり、さらに時間がかかる可能性があります。運送業許可の取得を検討している方は、条件や関連法規を十分に確認し、手続きを行いましょう。

株式会社パイ・アール ロゴ

この記事の執筆者

株式会社パイ・アールPAI-R Co., Ltd.

安心・安全な交通社会の実現へ向けてさまざまな課題や解決を探求し、アルコールチェックをはじめドライバーの安全管理や業務管理にまつわるさまざまなお役立ち情報を発信しています。

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