テスラのオートパイロットの基本機能とFSDとの違いを解説|運転時の注意点も紹介

テスラの「オートパイロット」は、高速道路での車線維持や車線変更、速度や車間距離の維持など、ドライバーの運転操作をサポートする革新的な機能として注目されています。

完全自動運転に相当する「FSD(フルセルフドライビング)」についても関心が高まっていますが、オートパイロットとの機能の違いについて正しく理解していない方も少なくありません。

そこで本記事では、オートパイロットの基本機能やFSDとの違い、オートパイロットを利用するメリット、運転する際の注意点や動作しない場合の対処法について詳しく解説します。

※本記事は2025年8月15日時点の情報を参考にしています。詳しい情報はTESLAの公式サイトをご覧ください。

1. テスラのオートパイロットとは?FSDとの違い

「オートパイロット」と「FSD」の主な違い

テスラの自動車業界における独自の運転支援技術は、他メーカーやユーザーから高い関心が寄せられており、新しいモデルが登場する度に注目が集まっています。

そこで本章では、テスラの自動運転技術の基盤とも言えるオートパイロットと、FSDとの違いについて詳しく解説します。

1-1 テスラのオートパイロットの概要

テスラのオートパイロットとは、テスラの車両に搭載された高度な運転支援システムのことです。

高速道路での車線維持や速度調整、車線変更や必要に応じた自動ブレーキなど、ドライバーの運転操作をサポートする機能を備えています。

オートパイロットは、完全自動運転ではないため、常にドライバーの監視が必要ですが、長距離運転や渋滞時の負担を軽減する機能として注目されています。

参考:オートパイロット 機能|TESLA

1-2 オートパイロットとFSDの違い

オートパイロットはあくまで運転支援システムであり、ドライバーが操作を続ける必要があります。

ハンズオフ(ハンドルから手を離した状態)での運転を前提とした機能ではないため、一定時間、ハンドルからドライバーの手が検知されなかった場合には、ライトと音声で警告が発動し、最終的にはオートパイロットが解除されます。

一方でFSDは、「完全自動運転」を目指した高度な運転支援技術です。

現在は、アメリカ(プエルトリコ含む)・カナダ・メキシコ・中国でベータ版として提供されています。

買い切り型とサブスク型の2つから選択でき、買い切り型は8,000ドル、サブスク型は99ドルで提供されています。

なお、日本で販売されているテスラにはFSDのベータ版は導入されていません(一部機能は利用可能)。

今後、日本におけるテスラの普及や、自動運転に関する法整備が行われることで、すべてのFSD機能を利用できる可能性があります。

自動運転には全部で5つのレベルが設定されており、現在日本では、自家用車の自動運転はレベル2〜3が主流であり、日本で販売されるテスラはレベル2に該当します。

自動運転レベルの定義や対象車種について詳しく知りたい方は、関連記事で解説しています。あわせて参考にしてください。

関連記事:『自動運転レベルとは?0~5の各レベルの定義や対象車種・実用化の現状を解説

2. テスラのオートパイロットの基本機能

テスラのオートパイロットには、運転支援を強化するさまざまな機能が組み合わされており、快適かつ安全なドライブを提供しています。

そこで本章では、オートパイロットの基本機能について解説します。

なお、紹介する機能の一部は、日本では利用できない場合があり、モデルによっても利用可能な機能が異なるため、テスラを運転する際は、利用可能な機能を必ず確認してください。

2-1 トラフィックアウェアクルーズコントロール(TACC)

トラフィックアウェアクルーズコントロール(TACC)は、自動で車間距離を維持しながら速度調整を行う機能です。

一定の車間距離を保ちながら加減速を行うため、高速道路の走行時や渋滞時などには、ドライバーの負担を大幅に軽減します。

従来のクルーズコントロール(定速走行装置)は速度維持のみでしたが、トラフィックアウェアクルーズコントロール(TACC)が利用可能になったことで、安全性と快適性を両立させたドライブが可能になります。

参考:トラフィックアウェア クルーズコントロール|TESLA

2-2 オートステアリング(Autosteer)

オートステアリング(Autosteer)は、トラフィックアウェアクルーズコントロール(TACC)と同様に、前方車両がいない場合は速度を維持し、前方車両がいる場合は車間距離も自動で調整します。

さらに、車線ラインや路肩および周囲の車両や障害物を検知しながら、走行車線を維持します。

ドライバーの操作は大幅に減りますが、完全自動運転ではないため、常にハンドルに手を置き、運転状況を監視することが重要です。

参考:オートステアリング|TESLA

2-3 オートレーンチェンジ

オートレーンチェンジは、オートステアリングの作動時にウインカーを操作した場合、ウインカーが示している方向に車線変更する機能です。

周囲の車両や障害物を確認しながら、安全なタイミングでスムーズに車線を移動します。

ドライバーの意図を尊重しつつ安全性を高めるため、高速道路など混雑した道路での利便性が向上します。

2-4 ナビゲートオンオートパイロット

ナビゲートオンオートパイロットは、ナビゲーションに基づいて適切な車線への変更を提案・実行する機能です。

高速道路の出入り口やインターチェンジへの進入・退出をサポートしてくれるため、初めての道や標識が見えにくい場面でも、操作を誤る可能性を抑えられます。

トラフィックアウェアクルーズコントロール(TACC)とオートステアリングの機能をもとに構築されており、オートステアリングの作動中に利用できる機能ですが、日本ではまだ有効化されていません。

2-5 オートパーキング

オートパーキングは、オートステアリングの作動時に、縦列駐車や並列駐車を自動で行う機能です。

ドライバーがハンドル操作をしなくても、車が自らスペースを認識して駐車を行います。

狭い駐車場や苦手なシチュエーションでも安心して利用できる便利な機能です。

ただし、オートパーキングはトラフィックアウェアクルーズコントロール(TACC)の作動時は利用できません。

2-6 スマートサモン

テスラのサモンは、車外からテスラアプリを使って、駐車スペースからの出し入れを遠隔操作できる機能です。

スマートサモンは、ドライバーのいる場所まで車両を呼び寄せたり、設定した目的地まで自動で運転操作を行う機能です。

日本では、以下の条件下でのみ作動します。

  • 操作するスマートフォンが車両から6m以内にあること
  • 公道ではないこと
  • 走行経路が遮られていないこと
  • サモン移動距離が20m以下であること

特に、6m以内という条件は、日本の法規制の影響を受けており、実際の利用シーンでは制約が大きく、実用性に限界があります。

参考:
サモン|TESLA
スマートサモン|TESLA

2-7 キャンセルオートパイロット

キャンセルオートパイロットは、オートパイロットを解除する機能です。

解除するきっかけは複数あり、以下の状況で解除されます。

  • ハンドル右のスクロールボタンを押した場合
  • ブレーキペダルを踏んだ場合
  • 走行速度が140km/hを超えた場合
  • リバース、ニュートラル、パーキングにシフトした場合
  • ドアが開いた場合
  • 自動緊急ブレーキが作動した場合
  • シートベルトが解除されるか、運転者が座席から離れた場合

キャンセルされた場合、タッチスクリーン上の巡航速度アイコンが灰色になります。

オートパイロットの各機能を意図的に解除できるため、走行中に天候が悪化した場合や、急なハンドル操作が必要な場合などでも、柔軟に対応できる安心感があります。

参考:キャンセルオートパイロット|TESLA

2-8 オートパイロット機能の一時停止と制限

オートパイロットには、ドライバーの危険操作が繰り返された場合に、一時的にオートパイロット機能の一部が一時停止される機能があります。

「強制解除」を5回繰り返した場合、オートステアリング及びFSDの使用が1週間停止されます。

ドライバーに安全意識を持たせるための抑止効果があり、システムを正しく利用するための重要な安全機能といえるでしょう。

解除の残りの数は「コントロール」>「オートパイロット」と続けて操作すると確認できます。

【強制解除とは】
ドライバーが不注意のため音声および表示による警告を数回受けた後、現在の走行サイクルでそれ以降、 オートパイロット システムが解除されることを指します。

引用元:オートパイロットの一時停止|TESLA

関連記事:『【新次元のクルマ体験】テスラの最新機能一覧|EV先駆者のコネクテッドサービスを紹介

3. テスラのオートパイロットを利用する3つのメリット

テスラのオートパイロットは、高度な運転支援技術によって、移動の安全性と快適性を両立させた機能です。

ドライバーの負担軽減にも役立ちますが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

本章では、オートパイロットを活用することで得られる代表的な3つのメリットを紹介します。

3-1 長距離運転の疲労軽減

テスラのオートパイロットを活用すれば、車線維持や速度調整を自動でサポートしてくれるため、長時間移動でのドライバーの負担を大幅に減らすことが可能です。

特に高速道路での移動では、ハンドル操作やアクセル・ブレーキの操作回数が減り、より余裕を持った運転が実現します。

完全自動運転の一歩手前ともいえる体験ができるため、目的地に到着した際の疲れが軽減され、快適な移動体験につながります。

3-2 事故リスクの低減

交通事故の多くは、ドライバーの判断ミスや注意不足が原因とされています。

オートパイロットは、周囲の車両や歩行者、道路状況をセンサーやカメラで常に監視し、危険を察知すると自動で回避行動を取ります。

これにより、追突や車線逸脱といった事故リスクを大幅に抑えることが可能です。

さらに、人間では見落としがちな死角もカバーできるため、安心して運転支援を受けられる点が大きな魅力といえるでしょう。

3-3 移動の快適性向上

テスラのオートパイロットでは、車間距離調整、速度調整、車線変更など、自動で運転支援が行われるため、長距離ドライブでも快適な移動が可能です。

運転しながら、音声コマンドで音楽再生やエアコンの調整、ナビゲーション指示ができるため、ハンドルから手を離すことなくさまざまな操作ができます。

リラックスしながら音楽を楽しんだり、目的地を設定できたりと、ドライバーや同乗者の車内で過ごす時間がより快適になるでしょう。

関連記事:『自動運転のメリット・デメリット10選|レベル分けや緑ナンバー車両への実用化状況・環境への課題を解説

4. テスラのオートパイロットで運転する際の4つの注意点

テスラのオートパイロットは、長距離ドライブや渋滞時の負担を軽減してくれる先進的な運転支援機能ですが、安全に使うためには守るべきポイントがあります。

誤作動や不意の状況変化に備えるためにも、ドライバーの責任ある操作と適切なメンテナンスが欠かせません。

本章では、オートパイロットを利用する際の4つの注意点について紹介します。

4-1 常にハンドルに手を添える

オートパイロット作動中でも、テスラはドライバーがハンドルを握っていることを前提に設計されています。

オートパイロットはハンズフリーの機能ではありません。常にハンドルの上に手を置き、道路状況、周囲の交通状況、その他の道路利用者(歩行者や自転車など)に注意を払ってください。これらの指示に従わない場合、損傷、重傷、または死亡の原因となる可能性があります。

引用:関連事項 オートパイロット|テスラ

一定時間ハンドルから手を離した場合、ライト点滅とチャイム音によりハンドル操作を促し、最終的にはオートパイロット機能が解除されます。

完全自動運転と混同しないように注意し、緊急回避や予期せぬ車両の動きに対応するために、常にハンドルに手を添えて運転しましょう。

4-2 悪条件下では手動運転に切り替える

大雨、降雪、濃霧など、センサーやカメラが周囲の状況を認識しにくい状況では、オートパイロットの精度も低下します。

車線や標識の認識、障害物検知が不十分になる可能性があるため、安全を優先して手動運転に切り替えましょう。

オートパイロットは、以下の3つの方法で解除できます。

  • ブレーキペダルを強く踏む
  • ステアリングコラム右側のレバーを上に押す
  • ステアリングを強く操作する

ドライバーはもちろん、同乗者や周囲の人の命を守るためにも、悪条件下では手動運転に切り替えましょう。

4-3 ソフトウェアアップデートを確認する

テスラは頻繁にソフトウェアのアップデートを行っており、オートパイロットをはじめとする、さまざまな機能の精度が日々進化しています。

アップデートを怠ると、安全性が低下する可能性があるため、定期的にシステムを最新の状態に保つことが大切です。

アップデートはWi-Fi経由で自動的に配信され、通知がきたら、車両のタッチスクリーンまたはテスラアプリにて、インストールを選択できます。

FSDを見据えた機能強化も進んでいるため、常に最新バージョンで利用する習慣を身につけましょう。

4-4 配慮ある運転を心がける

オートパイロットは安全を最優先にした保守的な動作を行います。

車線変更の際も、余裕ある車間距離が取れなければ実行しない仕組みです。

安全性を重視する点では優れていますが、渋滞や交通量の多いシーンでは柔軟性に欠け、ほかのドライバーにとっては、ややストレスになる可能性があります。

オートパイロットに完全に頼らず、ドライバー自身が常に周囲の交通状況に目を配り、必要に応じてハンドルやブレーキを操作できる体制を整えることが大切です。

5. テスラのオートパイロットが作動しない場合の対処法

テスラのオートパイロットは、天候や周囲の状況、車両設定によって正しく作動しない場合があります。

原因を正しく把握し、適切な対処を行うことで、安全かつスムーズな利用が可能です。

本章では、テスラのオートパイロットが作動しない場合の対処法を3つ紹介します。

5-1 カメラ・センサーを清掃する

オートパイロットは、車体に搭載されたカメラやセンサーから得られる情報をもとに作動します。

雨や雪、泥、虫の付着などで視界が遮られると、機能が一時停止する場合があるため、運転前にカメラやセンサーが汚れていないか確認しましょう。

【カメラのクリーニング方法】

カメラレンズに水を噴射し、マイクロファイバーの布で乾かしてください。カメラの洗浄は、雪、雨、みぞれなどの湿気の多い時期は毎週、乾燥している時期は1か月ごとに実施してください。

引用:カメラのクリーニング|テスラ

このほか、車内に設置されたフロントカメラの精度を保つために、フロントガラスも定期的に清掃しましょう。

5-2 言語設定を変更する

テスラのオートパイロットは、ハンドルから手を離していないにもかかわらず、急に解除されるケースがあります。

テスラユーザーの口コミでは、「言語設定(ランゲージ)を日本語→英語→日本語に切り替えると作動した」との報告が多数あるため、オートパイロットが正しく作動しない場合の対処法として覚えておきましょう。

設定変更はタッチスクリーンのメニューから操作可能です。

5-3 ソフトウェアの更新・契約状況の確認

テスラのオートパイロットは、契約内容やサブスクリプションの利用状況によって、利用可能な機能が制限される仕組みです。

サブスクリプションが切れると、一部サービスが利用制限される場合があるため、常に最新のアップデートが適用されているかを、テスラアプリやタッチスクリーンで確認しましょう。

また、更新されたサブスクリプションの内容や契約内容もあわせて確認し、スムーズに使えるように調整しましょう。

6. まとめ|テスラのオートパイロットで快適な移動が可能に

本記事では、テスラのオートパイロットの基本機能やメリット、運転する際の注意点や動作しない場合の対処法について解説しました。

オートパイロットは、自動で車間距離や速度を調整し、長距離運転や渋滞時のストレスを軽減し、快適で安全な移動をサポートします。

ただし、完全自動運転ではないため、ドライバーは常にハンドルを握り、状況に応じた運転操作が必要です。

本記事で紹介した使い方や注意点を理解し、運転操作の参考にするとともに、今後、購入を検討している方は、ショールームや試乗イベントなどをとおして、より快適なドライブ体験を味わってみてください。

株式会社パイ・アール ロゴ

この記事の執筆者

株式会社パイ・アールPAI-R Co., Ltd.

安心・安全な交通社会の実現へ向けてさまざまな課題や解決を探求している 株式会社パイ・アール は、アルコールチェックをはじめドライバーの安全管理や業務管理にまつわるさまざまなお役立ち情報を発信しています。

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