自動運転レベルとは?0~5の各レベルの定義や対象車種・実用化の現状を解説

近年、自動運転技術の進化が目覚ましく、すでに一部の自動運転技術は実用化されており、2021年11月には、国産の新型車に対して「衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)」の搭載が義務化されています。

自動運転技術には「レベル0」から「レベル5」までの6段階が定義されており、それぞれ運転支援の範囲やドライバーの関与度が異なります。

そこで本記事では、自動運転のレベル0から5までの定義や特徴、対象車種、実用化の現状について分かりやすく解説します。

自動運転技術に興味がある方や、実用化に不安を感じる方は、ぜひ最後まで読んでいただき、各レベルの違いや現状を正しく理解し、自分の生活や移動手段にどのような影響があるのか、考えるきっかけにしてください。

1. 自動運転レベルとは?ADAS (先進運転支援システム) との違い

自動運転技術は近年急速に進化しており、法整備や開発状況に合わせてレベル分けされています。

これらの技術と併せて、自動運転の進化を支えているのが、車両と外部を通信でつなぐ「テレマティクス」と呼ばれる通信・情報処理技術です。

また、AD(自動運転)、ADAS(先進運転支援システム)など、自動運転の技術に関する言葉を耳にする機会も増えました。

これらは混同されがちですが、それぞれ明確な定義と役割があります。

そこで本章では、自動運転の全体的な概要を把握するために、自動運転レベルの定義やADASとの違いについて、わかりやすく解説します。

自動運転レベルとは?

自動運転レベルとは、アメリカのSAE International(米国自動車技術者協会)が定義づけた「自動運転の度合い」を示す指標です。

日本では国土交通省がSAEの指標に基づき、以下のように独自で0〜5の6段階でレベル分けしています。

【自動運転レベルの概要】
レベル 名称 操縦の主体
0 運転自動化なし 運転者
1 運転支援
2 部分運転自動化
3 条件付運転自動化 システム(作動継続が困難な場合は運転者)
4 高度運転自動化 システム
5 完全運転自動化

各レベルは「操縦の主体」や「走行領域」によって定義され、特にレベル2(部分運転自動化)とレベル3(条件付運転自動化)が大きな分かれ目となります。

レベル2までは、人が運転の主体ですが、レベル3以降はシステムが主体となり、ドライバーは走行中にセカンドタスク(読書やスマートフォン操作など)が可能です。

2025年現在、新型の国産車の多くはレベル2、一部でレベル3の技術も実装され始めています。

レベルが上がるほど自動化の度合いが高まり、レベル5では完全な自動運転が可能です。

ただし現在は、レベル3(条件付運転自動化)の実用化には、法整備や技術面での課題が残されています。

参考:自動運転車の安全技術ガイドライン(PDF)|国土交通省自動車局

AD(自動運転)とADAS(先進運転支援システム)の違い

AD(自動運転)と 、ADAS(先進運転支援システム)は混同されがちですが、両者は明確に異なります。

ADASは、ドライバーの運転を支援する自動運転技術で、自動ブレーキ(AEB)や車線維持支援(LKAS)などが該当します。

一方、ADは特定条件下でシステムが主導して運転操作を行う自動運転技術で、ドライバーの介入が不要な段階も存在します。

ADASはあくまで「支援」にとどまり、ADは「代行」するという点で差があります。

なお、ADASに該当する自動ブレーキ(AEB)は、2021年11月より国内の新型車に搭載するよう義務化されています。

2025年9月以降からは、トラックやバスなども搭載の対象となり、2028年までには、すべての新型車に実装される見通しです。

自動ブレーキの機能や義務化の背景、取り付け方法について以下の関連記事で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。

関連記事:『自動ブレーキの義務化はいつから?対象車や既存車への取り付け・運転時の注意点を解説

2. 自動運転レベル0〜5(6段階)の概要と対象車種

自動運転は、米国自動車技術者協会(SAE)が定めたレベル0〜5の6段階で定義され、数字が増えるほど自動化の範囲が広がります。

現在はレベル2までが主に市販されており、レベル3以降は一部で実証段階に入っています。

本章では、各レベルの特徴と対象車種を紹介します。

自動運転レベル0の概要と対象車種

自動運転レベル0は、完全に手動運転の状態を指します。

自動運転機能は一切搭載されず、運転操作はすべてドライバーが行います。

安全警告やブザーが搭載されている場合でも、実際の加減速やハンドル操作の自動化はされません。

対象車種は、過去から現在にかけて製造されているほとんどの従来型車両が含まれます。

特に古いモデルや自動運転技術がまだ発達していなかった年代の車はすべてレベル0です。

もっとも一般的な運転状態であり、すべての運転技術がドライバーの責任となります。

レベル0の車両は、法的にもドライバーの操作が完全に求められるため、交通安全の基本は運転者の注意力や運転技術に依存します。

自動運転レベル1の概要と対象車種

自動運転レベル1は、運転支援の基本的な段階で、以下の2つの機能のどちらかを搭載している必要があります。

  • アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC):前方の車に追従する機能
  • レーンキープアシストシステム(LKAS):車線内走行を維持する機能

このほか、自動ブレーキ(AEB)もレベル1の機能に該当します。

レベル1では、追従走行や車線内走行が一部自動化され、ドライバーの負担軽減に効果的です。

ただし、完全にシステムに運転を任せるわけではなく、常にドライバーが運転状況を監視し、必要に応じて操作する必要があります。

2021年11月以降に販売された一部の新型車種には、メーカーに対して自動ブレーキ(AEB)の搭載が義務化されており、義務化に該当する車種はレベル1に分類されます。

【自動運転レベル1の対象車種】
メーカー システム 対象車種
トヨタ自動車 プリクラッシュセーフティ クラウン、プリウスなど
日産自動車 セーフティアシスト、踏み間違い衝突防止アシスト スカイライン、エルグランドなど
マツダ アクティブセンス CX-5、ロードスターなど
スバル アイサイト レガシィ、レヴォーグなど
ホンダ ホンダセンシング レジェンド、アコードなど

今後は自動運転レベル1の対象車種よりも、自動運転レベル2の対象車種が上回る見込みです。

実際、自動運転レベル1だった一部の対象車種が、すでに自動運転レベル2に進化しているケースもあります。

参考:自動運転のレベル分けについて(PDF)|国土交通省

自動運転レベル2の概要と対象車種

自動運転レベル2は、車両の加減速やハンドル操作をシステムが同時に制御する「部分運転自動化」の段階です。

レベル1の機能が搭載されており、高速道路などの限定条件下では、ハンドルから手を離した「ハンズオフ」走行も可能になります。

自動運転レベル2の対象車種は以下のとおりです。

【自動運転レベル2の対象車種】
メーカー システム 対象車種
トヨタ自動車 トヨタセーフティセンス アルファード、プリウスなど
日産自動車 プロパイロット2.0 スカイライン、アリアなど
マツダ アイアクティブセンス アテンザ、CX-5など
スバル アイサイト/アイサイトX XV、インプレッサなど
ホンダ ホンダセンシング レジェンド、インサイトなど

国内では、2019年9月に日産がはじめてハンズオフ機能が利用できる「プロパイロット2.0」を搭載したスカイラインを販売しました。

自動運転レベル2は、現時点でもっとも普及がすすんでいる自動運転レベルで、運転負担軽減に加え、安全性向上にも貢献しています。

ドライバーは運転席に座りながら、一部の操作をシステムに任せられますが、運転の常時監視と即時介入が必要です。

完全な自動運転ではないため、運転の主体は人であることを覚えておきましょう。

自動運転レベル3の概要と対象車種

自動運転レベル3は「条件付き自動運転」と呼ばれ、特定の条件下でシステムが主体的に運転操作を行い、ドライバーは緊急時のみ対応します。

ドライバーは一時的に運転から解放され、スマートフォンや読書などの「セカンドタスク」が可能になるのが魅力です。

現在、国内で販売されている自動運転レベル3の対象車種は、ホンダの「レジェンド」のみとされています(2022年1月生産終了)。

ホンダのレジェンドは、世界初の自動運転レベル3機能を搭載したモデルであり、高速道路の渋滞時など限定的なシーンで自動運転が実現しています。

運転の主体はシステムですが、ドライバーの待機義務や対応準備が求められ、完全放任は不可です。

現在は技術的・法的課題があり、市販車種はまだ少数です。

今後の技術進展と法整備により、普及の拡大が期待されています。

自動運転レベル4の概要と対象車種

レベル4は「高度運転自動化」とされ、特定のエリアや条件内で完全な自動運転が可能です。

ドライバーの介入が不要で、システムがすべての運転操作を担いますが、エリア外や特定状況では自動運転が解除されます。

日本では、2023年5月に福井県永平寺町で、レベル4の機能を搭載した車両の運行許可がはじめて取得されています。

現在では、都市部や限定エリアでの無人タクシーや自動運転シャトルバスなどが実証実験として運行されています。

対象車種はまだ限られており、商用化はこれからの段階です。

レベル4の実用化が進めば、移動の自由度が大きく変わり、高齢者や過疎地域における交通弱者の支援につながると期待されています。

参考:国内初!自動運転車によるレベル4での運行許可を取得しました|経済産業省

自動運転レベル5の概要と対象車種

自動運転レベル5は、あらゆる環境・状況で完全自動運転を実現し、人間の運転操作が一切不要となる最高レベルです。

天候や地形、交通状況に左右されず、システムがすべての判断と操作を担います。

現時点では技術的な課題が多く、実用化はまだ研究開発段階にとどまっています。

販売されている対象車種はなく、将来的な実現に向けて各自動車メーカーやIT企業が取り組んでいます。

実用化されれば、自動車同士の交通事故の大幅な減少や、交通効率の改善、移動の自由度向上が期待されており、社会インフラとしても大きな変革をもたらすと期待されています。

参考:自動運転車の安全技術ガイドライン(PDF)|国土交通省自動車局

3. 自動運転の4つのメリット

自動運転は、交通の安全性向上や利便性の向上など、社会的に大きなメリットがあります。

本章では、自動運転がもたらす4つの代表的なメリット、「交通事故の削減」「ドライバー不足への対応」「移動の快適性の向上」「環境負荷の軽減」について詳しく解説します。

交通事故の削減

自動運転技術が搭載された車両は、センサーやAIを駆使して常に周囲の状況を把握し、ヒューマンエラーを防ぐことが可能です。

自動運転車は、制限速度や一時停止などをしっかり守り、歩行者などの交通弱者を優先させるようにプログラムされています。

そのため、信号や標識の見落としなど、軽微な交通違反を大幅に減らせるだけでなく、ドライバーの漫然運転による交通事故の削減にもつながります。

ドライバー不足への対応

物流や公共交通の分野では、少子化や高齢化によるドライバー不足が深刻な問題となっています。

自動運転技術を導入することで、無人運転や夜間運行が可能になれば、人手不足の解消や、輸送能力の向上が期待できます。

特に過疎地や高齢化が進む地域では、住民の移動手段確保という面でも期待されています。

移動の快適性の向上

自動運転により、運転の負担が軽減され、移動時間をより快適に過ごせるようになるでしょう。

自動運転レベル3以降は、読書やスマホ操作が可能になるため、移動そのものの快適性が高まります。

また、一定速度での走行や滑らかなブレーキ制御により、乗り心地の向上も期待できます。

環境負荷の軽減

自動運転車は、ムダな加減速やアイドリングを抑えた効率的な運転が可能です。

燃料消費の削減や排出ガスの低減が期待でき、特にEV(電気自動車)と組み合わせることで、地球温暖化対策や持続可能な社会の実現に貢献します。

環境保護の観点からも、自動運転の普及が期待されています。

4. 自動運転の4つのデメリット

自動運転には多くのメリットがある一方で、技術的な課題や法制度の懸念点も指摘されています。

本章では、自動運転の導入で懸念される4つのデメリット、「システムトラブル」「責任問題」「セキュリティリスク」「雇用への影響」について詳しく解説します。

システムトラブルのリスク

自動運転車は、センサーやAI、ソフトウェアに依存して走行しますが、不具合や誤作動が起きた場合、重大な事故につながるリスクがあります。

特に、悪天候などの視界が悪い状況では、センサーが障害物を検知できなかったり、GPSが誤作動を起こすケースも想定されます。

事故発生時の責任問題

自動運転車が事故を起こした場合、「誰が責任を負うのか」という問題は、現行の法律では不明確となっています。

レベル2までは運転の主体がドライバーなので、事故の責任所在はドライバーです。

しかし、レベル3以降はドライバー、車両メーカー、ソフトウェア開発者のいずれに過失があるのかを明確にする法律が定められていません。

責任の所在が不明確なので、自動運転技術の実用化とともに法整備も求められています。

サイバー攻撃や盗難のリスク

インターネット接続や車両間通信(V2V)に依存する自動運転車は、サイバー攻撃の標的になる可能性があります。

ハッキングにより遠隔操作されたり、個人情報の漏えいなどのリスクも考えられます。

また、スマートキーの不正利用による盗難被害も懸念されており、高度なセキュリティ対策が求められます。

関連記事:『車の盗難防止対策5選|盗まれた時の対応方法と対策グッズも5つ紹介

ドライバー雇用への影響

自動運転技術の普及がすすむと、タクシーやバス、トラックのドライバー従事者の需要が減少する可能性があります。

特に運送業界では、自動運転による無人化がすすむことで、雇用の減少や喪失につながるリスクも考えられます。

一方で、自動運転システムの監視業務やメンテナンスなど、新たな分野での雇用創出も期待されており、運送業界全体での対応が求められます。

5. 2025年|自動運転実用化の現状

2025年現在、自動運転技術の実用化が着実にすすみ、レベル2および一部のレベル3車両が販売されています。

日本ではホンダ「レジェンド」が限定的ながらレベル3に対応し、海外ではメルセデス・ベンツやBMWも高速道路限定の自動運転機能を搭載したモデルを展開しています。

また、レベル4に相当する無人タクシーの実証実験が東京や福岡など一部地域で行われ、都市部での本格運用を視野に入れた開発が進行中です。

これらの実証実験では、テレマティクスを活用して車両の位置情報や運行状態をリアルタイムで遠隔監視する仕組みも導入されており、実用化に向けた重要な基盤となっています。

ただし、レベル5の完全自動運転は依然として研究段階にあり、法整備や安全性確保といった課題の解決が不可欠です。

日本政府は、2027年に国内初となる自動運転レベル5の公道での実証実験を、横浜市で開催される「国際園芸博覧会」で計画しています。

2030年〜2040年代までに実用化されると言われ、今後は、限定エリアでの商用サービスを足がかりに、自動運転の普及が加速すると期待されています。

6. まとめ|自動運転の実用化はレベル4へ移行中!今後の動向に注目

本記事では、自動運転レベルの6段階の定義と対象車種、メリット・デメリット、実用化の現状について解説しました。

自動運転技術は着実に進化を遂げており、現在はレベル4の実用化に向けた取り組みが全国各地ですすんでいます。

レベル5の実現には、まだ課題が多いものの、限定条件下での完全自動運転が現実のものとなりつつあります。

今後は法整備やインフラの整備も進み、自動運転がより身近な存在になると期待されています。

特に、テレマティクスを活用した運行データの共有や遠隔監視の仕組みは、自動運転車の安全性と利便性を支える中核技術とひとつといえます。

自動運転のメリットとデメリットをふまえつつ、自分にとって最適な関わり方を考えていきましょう。

株式会社パイ・アール ロゴ

この記事の執筆者

株式会社パイ・アールPAI-R Co., Ltd.

安心・安全な交通社会の実現へ向けてさまざまな課題や解決を探求し、アルコールチェックをはじめドライバーの安全管理や業務管理にまつわるさまざまなお役立ち情報を発信しています。

PAGETOP