ETCが使えなくなる?2022年問題と2030年問題の概要と対策
ETCは、料金所の渋滞解消や、騒音や排気ガスの削減などを目的に導入された通信システムです。
日本の高速道路を便利に利用するために欠かせない存在ですが、近年「2022年問題」や「2030年問題」と呼ばれる課題があることをご存じでしょうか?
どちらも、ETCの使用に関わる問題であり、一部のETC車載器は使えなくなります。
そこで本章では、2022年問題と2030年問題の詳しい内容を紹介するとともに、使えなくなるETC車載器や、よくある質問について解説します。ETCを利用している方や、利用可能なETC車載器を確認したい方は参考にしてください。
目次 / このページでわかること
1.ETCの2022年問題とは?
ETCの2022年問題とは、2007年以前に製造された一部のETC車載器が、2022年12月から使えなくなる問題です。
本章では、2022年問題の概要や、一部のETC車載器が使えなくなる理由、確認方法について解説します。
2022年問題の概要
2022年問題は、電波法関連の法令改正により、2007年以前に製造された一部のETC車載器を2022年12月以降に使用すると、電波法違反になるというものです。
2018年9月3日に、国土交通省・高速道路株式会社6社・ITSサービス高度化機構が、連盟で文書を発表し現場の混乱を考慮して2022年11月30日まで、移行の猶予期間が設けられていました。
しかし、2022年以前に世界中でコロナウイルスが蔓延し、関係各所で対応の遅れが生じたため、猶予期間が「当分の間」に延長されたため、現在は過剰に心配する必要はないとされています。
ただし、「当分の間」がいつまでなのか明記されていないため、知らぬ間に法律違反にならないよう注意が必要です。
一部のETCが使えなくなる理由と2022問題の背景
従来のETCシステムは、ETC車載器と料金所間で、無線通信電波を介して、通行料金の自動支払いが行われています。
しかし、この通信方法は、周辺の無線通信機器に悪影響を及ぼす可能性があるため、電波法にある旧スプリアス規格の一部見直しが行われました。
【スプリアスとは?】
無線通信機が発する、通信に必要な周波数以外で発生する電波のこと。スプリアスが多いと、周りの通信に悪影響を与える可能性がある。ETC車載器などの通信機は、スプリアス規格に則って製造されている。
新規格では、スプリアスの許容値が厳格化されています。2007年以前に製造されたETC車載器は、新規格に対応できないため、猶予期間以降に使用すると法律違反で検挙・罰則の対象です。
現在、さまざまなIT機器の技術進化に合わせた、快適で安全な電波環境の仕組みづくりが急がれています。ドライバーも情勢に合わせて、新規格に適合したETC車載器を設置しましょう。
2022年問題で使用できなくなるETCとその確認方法
2022年問題で使えなくなるETC車載器は、ごくわずかです。
対象機器か判断するには、ETC車載器本体などに記載されている「各メーカーの型式登録番号」を確認してください。(取扱説明証・保証書・車載器セットアップ証明書でも確認可能です。)
すでに生産終了している機種も多く、対象機種を扱っているメーカーは2024年11月時点で6社のみです。
メーカー | 型式登録番号 |
---|---|
日産 |
【ビルトインタイプ車載器】
【ビルトインタイプ車載器以外】
|
マツダ | ・C9N1V6380 |
パナソニック |
|
デンソー |
|
クラリオン | ・ETC920 |
矢崎 |
|
そのほか、ETC車載器を製造している「三菱・フルの電気・トヨタ・ホンダ・スズキ・カロッツェリア・アルパイン・ケンウッド・イクリプス」で使えなくなる機種はありません。
旧規格のETC車載器を利用している方は、型式登録番号を確認し、該当する場合は早急に買い替えを行ってください。
2.2022年問題の現状とその対策
2022年12月から「一部のETC車載器が使えなくなる」と、一時期ニュースなどで取り上げられました。しかし現状として、「2022年問題の対象機器が高速道路で使えなくなった」という事例はありません。
そこで本章では、2022年問題の現状について解説するとともに、旧規格のETC車載器を利用した場合に科される罰則について解説します。
2024年11月時点では猶予期間を延長している
2024年11月時点では、2022年問題の対象機種は、現在も使用可能です。
本来、2022年12月から旧規格のETC車載器が使えなくなるはずでしたが、コロナウイルスによる関係各所への影響をみて、猶予期間が延長されました。
旧スプリアス規格(不明なものも含みます。以下同じ。)の無線設備については、その使用期限を令和4年11月30日までとしていましたが、新型コロナウイルス感染症による社会経済への影響等による無線設備の製造や移行作業に遅れが生じていることを考慮し、令和3年8月に無線設備規則の一部を改正する省令(平成17年総務省令119号)の附則第3条及び第5条の一部を改正し、その使用期限を当分の間、延長することとしました。
引用元:無線設備のスプリアス発射の強度の許容値|総務省
猶予期間終了後に対象機器を使用していると違法になる
今後、2022年問題の猶予期間が終了すると、旧規格で製造されたETC車載器の使用は法律違反になります。厳しい罰則が科される可能性があるため、注意しましょう。罰則内容は以下のとおりです。
【旧規格のETC車載器を不法設置、運用した場合】
1年以下の懲役または100万円以下の罰金
【重要な無線局に影響を与えた場合】
5年以下の懲役または250万円以下の罰金
ETCを利用している方は、猶予期間終了後に旧規格のETC車載器を利用しないよう、早めにETC車載器の型番を確認し、必要があれば買い替えを行いましょう。
参考:電波監視のQ&A|総務省
3.2022年問題の後は2030年問題に備えなければいけない
2030年問題もETCの利用に関わる問題です。
本章では、2030年問題の概要や背景、使えなくなるETC車載器の確認方法について解説します。
2030年問題とは?
2030年問題とは、ETCシステムのセキュリティ規格の改正により、多くのETC車載器が使えなくなる問題です。
国土交通省は、サイバー攻撃などの脅威に備えて、ETCシステムの規格そのものを変更することを決定し、すでに新規格に対応したETC車載器も製造・販売されています。
2022年問題により、さらに多くのETC車載器が使えなくなるため、2030年に向けた対応が急がれています。
2030年問題の背景
国土交通省では、IT機器の技術進化に伴い、情報漏洩やデータ改ざんなどの不正防止を目的として、ETC関連のセキュリティの強化を進めています。
大きな障害がなければ、2030年ごろまでに多くのETC車載器が使えなくなるため、「2030年問題」と言われています。
また、2022年問題の対象機種は、料金所を通過できなくなります。高速道路の混乱を招くため、2030年以降も利用できるETC車載器の買い替えがおすすめです。
2030年問題で使えなくなるETCとその確認方法
2030年問題では、ETCシステムの規格そのものが変更・適用されるため、新規格に対応しているETC車載器を搭載する必要があります。
2022年問題の時よりも使えなくなる機種が増えるため、ETCを利用している方は注意が必要です。
2030年問題で使えなくなるETC車載器は、本体のマークを確認する方法と、19桁の車載器管理番号を確認する方法があります。
本体のマークを確認する
【ETC車載器(専用)の新・旧セキュリティ対応の区別】
注1)車載器の型式により識別マークが描かれていない場合があります。
引用元:新・旧セキュリティ対応車載器の識別方法|国土交通省
注2)上記の方法で識別できない場合は、購入した販売店またはセットアップ店にご確認下さい。
新規格に対応しているETC車載器は、ETCカードの挿入口やロゴ下に「●●●」マークがついています。「●●●」マークがついていない機種は、2030年をめどに使用不可になるため、早めの買い替えがおすすめです。
【ETC2.0・ETC-DSRC車載器の新・旧セキュリティ対応の区別】
注1)車載器の型式により識別マークが描かれていない場合があります。
引用元:新・旧セキュリティ対応車載器の識別方法|国土交通省
注2)上記の方法で識別できない場合は、購入した販売店またはセットアップ店にご確認下さい。
次世代型ETCシステムである「ETC2.0」に対応した車載器は、ETCカードの挿入口やロゴ下に「■」マークがある場合とない場合があります。「■」マークがある場合は2030年をめどに使用不可、「■」マークがない場合は2030年以降も使用可能です。
車載器管理番号を確認する
車載器管理番号は、ETC車載器本体・取扱説明書・保証書・車載器セットアップ証明書で確認可能です。
番号の始まりが「1」であれば新規格、「0」であれば旧規格です。「0」始まりのETC車載器は2030年以降使えなくなります。
なお「DRCS」と記載されているETC車載器は、すべて旧規格に則って製造されたものなので、ETCやETC2.0と同じく2030年以降は使えなくなります。
どちらの方法もすぐに確認できるので、利用中のETC車載器が2030年以降も使用可能か確認してください。
4.【対策】ETCの買い替えとそのタイミングを検討する
2022年問題で電波法違反に該当するETC車載器は、早急な買い替えの検討が必要です。
ただし、高速道路の利用頻度が低いのであれば、買い替えではなく、取り外すだけでも良いでしょう。
大事なのは、電波法違反に該当するETC車載器を車に載せないことです。
今後、電波法違反に該当するETC車載器の取り締まりが強化されると考えられ、一般道の走行や駐車場に駐車している場合でも、検挙される可能性があります。
2022年問題に該当しないETC車載器であれば、寿命とされる10年間は問題なく使用できるでしょう。ただし、今後主流となるETC車載器は、新セキュリティ規格に対応した「ETC2.0」です。
ETC2.0は通行料金が割引されるほか、リアルタイムで周辺の交通情報を提供します。セキュリティが強化されているため、ETCカードに紐づいたクレジットカードの情報漏洩のリスクも低いです。
買い替えの要否は、個人のETCの利用状況により異なります。設置しているETC車載器の種類や、お財布事情に合わせた買い替えの検討をおすすめします。
5.2022年問題・2023年問題に関するよくある質問
2022年問題や2030年問題は、どちらもETCに関連する問題であり、違いや特徴がわかりづらいという声もあります。
そこで本章では、2022年問題や2030年問題に関する、よくある質問について紹介します。
Q:2022年問題と2030年問題は何が違う?
2022年問題は、電波法関連法案の改正により、一部のETC車載器が使用不可になる問題です。
2030年問題は、サイバー攻撃などの脅威に備えた、セキュリティ規格の変更により、多くのETC車載器が使用不可になる問題です。
Q:ETC2.0って何?2022年問題・2030年問題との関係は?
ETC2.0とは、通行料金の自動支払い、災害・事故・渋滞などの交通情報を、音声や画面表示で提供するシステムのことです。ETC2.0対応の車載器は、2016年から販売されています。
2030年問題では、一部ETC車載器が使用不可になるだけでなく、高齢化社会や人口減少、都市部の交通量の集中、物流量の増加による交通インフラのひっ迫も問題視されています。
ETC2.0は、リアルタイムの交通情報を提供可能なので、渋滞を回避し、効率的な物流ルートを走行できます。
Q:型式登録番号と車載器管理番号は何が違う?
2022年問題で使えなくなるETC車載器は、「型式登録番号」で確認できます。「型式登録番号」は、製品の型式を表す番号です。一方、2030年問題で使えなくなるETC車載器は、「車載管理番号」で確認できます。「車載管理番号」はETC車載器一つひとつを区別する番号です。
どちらも異なる番号なので、確認する際は見間違いに注意してください。
6.まとめ
本記事では、2022年問題と2030年問題の概要や、使えなくなるETC車載器について解説しました。
2022年問題で使えなくなるETC車載器はごくわずかですが、猶予期間終了後に利用すると電波法違反で罰則の対象になります。
また、2030年問題で使えなくなるETC車載器はさらに増え、現在のETCの利用状況に合わせた買い替えの検討が必要です。加えて、今後は新しいETCシステムである「ETC2.0」が主流になるため、本記事で紹介した内容を参考にしつつ、快適なドライブ環境を整えていきましょう。