車の定期点検(法定点検)をしないとどうなる?車検との違いや点検時期・費用を解説

車を安全に運転するためには定期点検が大切です。
定期点検は、法律で義務付けられていますが、日々の忙しさやコストを理由に点検を後回しにする人も少なくありません。

定期点検を怠ると、車の事故やリスクが高まるだけでなく、高額な修理費用や罰則が発生する可能性があります。

そこで本記事では、車の定期点検をしない場合のデメリットや、日常点検・車検との違い、定期点検の時期や費用などについて解説します。定期点検を受けたことがない方や、時期が迫っている方は参考にしてください。

1.車の定期点検(法定点検)は義務付けられている

車の定期点検は、ドライバーが行うべき大切な点検であり「道路運送車両法」で義務付けられています。

自動車の使用者は、自動車の点検をし、及び必要に応じ整備をすることにより、当該自動車を保安基準に適合するように維持しなければならない。

引用元:道路運送車両法 第47条(使用者の点検及び整備の義務)|e-Gov法令検索

自動車(小型特殊自動車を除く。以下この項、次条第一項及び第五十四条第四項において同じ。)の使用者は、次の各号に掲げる自動車について、それぞれ当該各号に掲げる期間ごとに、点検の時期及び自動車の種別、用途等に応じ国土交通省令で定める技術上の基準により自動車を点検しなければならない。

引用元:道路運送車両法 第48条(定期点検整備)|e-Gov法令検索

自家用車の場合、1年ごと・2年ごとに定期点検を受けなければなりません。しかし、ドライバーの半数は、1年ごとの定期点検は行わず、2年ごとに車検と一緒に定期点検を済ませる傾向にあります。

本来、ドライバーは故障や重大な事故を未然に防ぐため、車両が安全かつ正常に動くか確認しなければなりません。愛車に長く安全に乗れるよう、忘れず定期点検を受けましょう。

2.車の定期点検(法定点検)をしないとどうなる?

車の定期点検をしない場合、車両の安全性が落ちるだけでなく、車両の価値や保証にマイナスな影響を受ける可能性があります。

そこで本章では、車の定期点検をしない場合のデメリットについて解説します。

事業用車は行政処分が科せられる

バス・トラック・タクシーなどの事業用車が法定点検を受けなかった場合、30万円以下の罰金が科されます。また、罪の重さにより業務停止命令などの行政処分が下される可能性があります。

すべての車において定期点検は義務ですが、自家用車の場合、定期点検を受けなくても罰せられることはありません。ただし、定期点検を受けていないことがきっかけで重大な事故を起こした場合、ドライバーに重い罰則が科せられる可能性があります。

さらに、自家用車の定期点検を受けない場合、売却時や故障時にデメリットが発生します。

参考:道路運送車両法 第110条(第8章 罰則)|e-Gov法令検索

売却時の査定評価が下がる可能性がある

日本自動車査定協会の基準では、すべての定期点検を受けた車は、査定額が1万5,000円上げられると定められています。

同じ年式・走行距離でも、定期点検を受けている車の方が安全性が高いとみなされるため、乗り換えを前提として車を購入する方は、忘れずに定期点検を受けましょう。

なお、査定時には、定期点検を受けた証明として「点検整備記録簿」が必要です。過去の定期点検の記録や車の状態が記録されている証拠になるので、大事に保管しておきましょう。

参考:点検整備記録簿|CARトータルサービス KURUMAYA

故障時にメーカー保証外になる可能性がある

法定検査の未実施が原因で、不具合や故障がおきた場合、メーカー保証がおりない可能性が高いです。メーカー保証には「特別保証」「一般保証」の2つがあり、車の部品の修理・交換が保証対象です。

故障の程度によっては、定期点検費用より高くなる場合があるため、1年ごとの定期点検も受けるようにしましょう。

3.車の日常点検・車検との違い

定期点検は、車の故障や不具合を未然に防ぎ、安全に走行することを目的にしています。

では、おなじく車の「日常点検」や「車検」とはどう違うのでしょうか?本章では、定期点検が「日常点検」や「車検」とどう違うのか解説します。

日常点検との違い

日常点検は、ドライバー自身が日常的に行う点検です。運転席に座りエンジンルームをのぞいたり、車からおりて車両の状態をチェックします。

事業用車の場合、ドライバーもしくは運行管理者による、1日1回の日常点検(運転前点検)が必要です。

事業用車の日常点検を怠った場合、運輸局員によってナンバープレートが外され、一定期間、車両停止となります。さらに、未実施の車両台数が多い場合や、ずさんな点検が行われていた場合、程度によっては営業停止の行政処分が下される可能性があります。

日常点検の実施は、会社の信用に関わる大事な取り組みです。また、会社への損失も発生するため、正しく日常点検を行うよう心がけましょう。

参考:道路運送車両法 第4章 道路運送車両の点検及び整備|e-Gov法令検索

車検との違い

定期点検と車検は、どちらも車の安全性を保つために必要な検査ですが、点検項目や法的な位置づけに違いがあります。

車検は、車が法律で定められた安全基準に適合しているか、確認するための検査です。自家用車も必要な検査で、クリアしていない車は公道を走行できません。

車検切れで公道を走行した場合、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」の刑事処分と、「違反点数6点、30日間の免許停止」の行政処分が科せられます。

4.定期点検(法定点検)の時期と項目数

定期点検の時期と項目数は以下のとおりです。

主な対象自動車(例示)定期点検の時期点検項目数(※)
マイカー
(自家用乗用車、軽自動車)
1年ごと29項目
2年ごと60項目
中小型トラック(自家用車)
レンタカー(乗用車)
6ヶ月ごと24項目
12ヶ月ごと86項目
バス、トラック、タクシー(事業用車)
大型トラック(自家用車)
レンタカー(乗用車以外)
3ヶ月ごと51項目
12ヶ月ごと101項目
被牽引自動車3ヶ月ごと23項目
12ヶ月ごと36項目
二輪自動車1年ごと35項目
2年ごと54項目

※点検項目数は、走行距離が規定以下(マイカーは年間5千キロ、事業用車両は3ヶ月あたり二千キロなど)で、前回の点検を行っている場合に限り、減る場合があります。

参考:定期点検整備|国土交通省

日常点検の項目数

日常点検の項目数は15項目あり、定期点検よりも簡単で少ないため、ドライバー自身で実施できます。項目内容は以下のとおりです。

エンジンルーム
  • 1.ブレーキ液の量
  • 2.冷却水の量
  • 3.エンジン・オイルの量
  • 4.バッテリー液の量
  • 5.ウインド・ウォッシャ液の量
車の周り
  • 1.ランプ類の点灯・点滅
  • 2.タイヤの亀裂や損傷の有無
  • 3.タイヤの空気圧
  • 4.タイヤの溝の深さ
運転席
  • 1.エンジンのかかり具合・異音
  • 2.ウインド・ウォッシャ液の噴射状態
  • 3.ワイパーの拭き取り能力
  • 4.ブレーキの踏み残りしろと効き具合
  • 5.駐車ブレーキの引きしろ(踏みしろ)
  • 6.エンジンの低速・加速状態

日常点検は、車の走行距離や状態などから判断し、適切な時期に実施することが必要です。罰則が科されない自家用車の場合でも、運転前にできるだけ確認するよう心がけましょう。

参考:安全確保と環境保全はクルマの点検・整備から|国土交通省

事業用車の日常点検(運行前点検)の項目数

バス・トラック・タクシーなどの事業用車は、車とドライバーに対する日常点検(運行前点検)が義務付けられており、1台ごとに日常点検表を用意・記入し、1年間保管する必要があります。

事業用車が行うべき、車両における日常点検の主要8項目は以下のとおりです。

主要8項目内容
1.ブレーキペダルの踏みしろが適当、効きが十分である、液量が適当など
2.タイヤ空気圧が適当、亀裂、損傷、異常摩耗がない、ディスク・ホイールの取り付け状態が不良でない
3.バッテリー液量が適当
4.原動機冷却水、エンジンオイルの量、ファンベルトの張り具合が適当
5.灯火装置および方向指示器に損傷がない汚れ、変色、損傷がない
6.ウインド・ウォッシャ液量、ワイパー払拭が良好など噴射状態、拭き取りの動作に異常がない
7.エアタンクにぎょう水がないドレン・コックを開き、エアタンクに水が溜まっていないか確認
8.運行において異常が認められた箇所前日の運行における異常箇所の確認

以上の項目を中心に、各企業で事業用車両の日常点検を行う必要があります。また、ドライバーに対しては、検温やアルコールチェッカーによる酒気帯びの有無などの確認も実施します。

関連記事:『運転日報の書き方とテンプレートを紹介|法律に基づいた保管方法と必要項目とは?

5.車の定期点検(法定点検)にかかる費用

車の定期点検の費用は、車種・時期・業者によって異なります。一般的な定期点検の費用相場は以下のとおりです。

  • 1年点検:10,000〜20,000円
  • 2年点検:20,000〜50,000円

2年ごとの定期点検を車検と一緒に受ける場合、合算請求されます。その場合、7万円〜10万円が費用相場となります。また、部品の交換やオイルの補充が必要な場合、費用は変動します。

費用を抑えたい場合は、ガソリンスタンドや、フランチャイズの車検専門店がおすすめです。業者によって数万円単位で費用が異なるため、事前に複数の業者の費用を確認しておきましょう。

6.車の定期点検(法定点検)が受けられる場所

車の定期点検が受けられる場所は、主に5つです。それぞれメリット・デメリットがあるので、定期点検を行う際の参考にしてください。

①ディーラー

ディーラーは、各メーカーの車を販売している専門店であり、専用の整備工場を併設しています。自社の車であれば、構造を熟知した整備士が担当してくれるため、安心して定期点検を受けられます。

また、盗難防止の最新システムが搭載された車でも、故障診断や解析が可能な機器がそろっており、突然のトラブルにも対応してもらえるのが嬉しいポイントです。

ただし、ディーラーの場合、純正パーツを使用するため、費用が割高になりやすく、自動車整備工場やカー用品店で定期点検を受ける人が多い傾向があります。

②自動車整備工場

自動車整備工場は、一般的に、幅広い車種の整備・点検を行っているため、整備が難しいビンテージカーや外車の定期点検も引き受けてくれます。また、できるだけ修理対応してくれるため、部品交換をしない分、費用が安くなる場合が多いです。

さらに、地域に根ざした工場が多く、顧客の細かい要望に対応してもらいやすい特徴もあります。

ただし、工場によって対応の差が激しかったり、最新システムを搭載した車などは完璧に整備・点検が行われなかったりする可能性があります。事前にネットなどで口コミ情報を確認しておくといいでしょう。

③ガソリンスタンド

近年、定期点検や日常点検を引き受けるガソリンスタンドが増えています。給油や洗車のついでに、手軽に定期点検を申し込めるのが嬉しいポイントです。

日常点検は無料で実施する店舗が多く、定期点検は軽自動車であれば、1年ごとの点検の場合、10,000円程度で引き受けてくれます。

ただし、陸運局による認証を受けたガソリンスタンドでしか定期点検を受けられないことや、店舗の混雑状況によっては断られる可能性があります。

④カー用品店

カー用品店は、車の部品や便利なグッズを豊富に取りそろえているお店です。タイヤやエンジンオイル、バッテリーなども状況に合わせて選べます。

一般的に、整備工場を併設しているカー用品店が多く、定期点検も申し込むことが可能です。1年ごとの定期点検の費用相場は、軽自動車で10,000〜20,000円程度です。

車検を含めたプランを用意している場合もあり、車やお財布の状況に合わせてサービスを選べます。

⑤車検専門店

車検専門店は、点検や整備を専門としているため、作業が早く、サービスの質が高い特徴があります。店舗によっては、洗車や車内清掃を無料で行ってくれる場合があります。

加えて、早期予約やWeb申込みなどのキャンペーンの利用で、割引が適用され、よりお得に定期点検を受けることが可能です。ただし、部品交換が発生した場合、別途費用が追加されます。

できるだけ費用を抑えて定期点検を行いたい方は、車検専門店の利用がおすすめです。

7.まとめ|愛車に長く安全に乗るために、車の定期点検(法定点検)を受けましょう

本記事では、車の定期点検の時期や項目数、費用、車検や日常点検の違いなどについて解説しました。

定期点検は、車を安全に乗るために重要な点検であり、法律で定められたドライバーの義務です。自家用車の場合、定期点検の未実施に対する罰則はありませんが、事故や故障の際にマイナスな影響を受ける可能性があるため、必ず定期点検を行いましょう。

また、点検費用を抑えたい方は、車検専門店や自動車整備工場の利用がおすすめです。依頼前に、口コミや見積もりを確認すると、より確実に安く点検を受けられます。

愛車に長く安全に乗れるよう、本記事の内容を参考に法定点検を行ってください。

株式会社パイ・アール ロゴ

この記事の執筆者

株式会社パイ・アールPAI-R Co., Ltd.

安心・安全な交通社会の実現へ向けてさまざまな課題や解決を探求し、アルコールチェックをはじめドライバーの安全管理や業務管理にまつわるさまざまなお役立ち情報を発信しています。

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