制動距離と空走距離の違いは?停止距離にどう影響するのか解説

運転中に
「急ブレーキを踏んだけれど、すぐに止まれない」
「想像していた停車位置より、オーバーした」
という経験をした方は多いのではないでしょうか?

車が完全に停止するまでには、ドライバーの反応速度や、路面のコンディション、車のスピードや重さが密接に関わっています。このような要素は、車の「停止距離」に大きく関係しており、車を運転する方は、それぞれの違いを理解することが重要です。

安全な運転のために、知っておくべき基礎知識を押さえておきましょう。

1.制動距離・空走距離・停止距離とは?

危険に気づいてから車が完全に停車するまでには、制動距離・空走距離・停止距離の3つの要素が関係しています。

そこで本章では、制動距離・空走距離・停止距離について詳しく解説します。

制動距離・空走距離・停止距離を記した図

制動距離とは?

制動距離とは、ドライバーがブレーキを踏み、ブレーキシステムが作動してから、車が完全に停止するまでの距離のことです。

制動距離は、路面の状態(乾燥・雨・雪など)や、タイヤのすり減り、車のスピード、車の重量などに大きく影響されます。制動距離が伸びると、事故のリスクが高まります。

空走距離とは?

空走距離とは、ドライバーが危険を認識し、ブレーキを踏み、ブレーキが効き始めるまでの間に車が走る距離のことです。

一般的に、約1秒かかると言われています。たった1秒ですが、数メートル〜数十メートルをあっという間に進みます。

また、空走距離はドライバーの反応速度や注意力、車のスピードによって変化し、基本的に走行スピードが速いほど空走距離が伸びやすい傾向があります。

停止距離とは?

停止距離とは、空走距離と制動距離を合わせた総距離のことです。

ドライバーの反応速度や注意力、路面の状況、車のスピードや重量など、あらゆる要素が「停止距離」に影響します。

とくに速度が速い場合、停止距離が大きく伸びるため、適切な車間距離をとり、法定速度内で安全運転を心がけることが大切です。日頃から運転する方は、この3つの要素を改めて覚えておきましょう。

2.速度ごとの1秒間・3秒間に進む距離と停止距離一覧

車の速度によって、停止距離は大きく変化します。そこで本章では、「乾燥したアスファルト舗装路」での、速度ごとの停止距離を紹介します。

【速度別停止距離一覧(摩耗係数0.7、空走時間0.75秒として計算)】
  1秒間に進む距離 3秒間に進む距離
(安全な車間距離)
乾燥したアスファルト舗装路における停車距離
10km/h2.78m8.34m2.64m
20km/h5.56m16.68m6.42m
30km/h8.33m24.99m11.31m
40km/h11.11m33.33m17.33m
50km/h13.89m41.67m24.48m
60km/h16.67m 50.01m32.75m
70km/h19.44m58.32m42.14m
80km/h22.22m66.66m52.66m
90km/h25m75m64.30m
100km/h27.78m83.34m77.07m

参考:速度別停止距離一覧表|佐賀県警察

 

表の距離は、車の重量・タイヤのすり減り・路面状況・ドライバーの反応速度等により変化します。
基本的に、速度が速いほど距離が伸びるため、走行中は適切な車間距離をとることが重要です。

3.制動距離・空走距離・停止距離の計算方法

本章では、制動距離・空走距離・停止距離の3つの計算方法について解説します。

制動距離・空走距離は、あらゆる状況によって変化します。「車が一体どのくらいの距離を移動するのか?」について目安を知っておけば、交通事故の防止につながるので参考にしてください。

制動距離の計算方法

計算式:車速(km/時)の2乗 ÷(254×摩擦係数)

【時速50kmで乾いたアスファルト舗装路を走行する場合】
計算式:(50×50)÷(254×0.7)=14.06
制動距離は約14m  となる

摩擦係数は、乾いたアスファルト舗装路で0.7〜0.9、濡れている場合は0.4〜0.6程度です。路面の状態によって摩擦係数は異なります。なお、計算する際は一般的に、乾いた路面では0.7、濡れた路面では0.5を用います。

空走距離の計算方法

計算式:反応時間(秒)× 車の速度(m/秒)

【時速50kmで反応時間が0.75秒かかる場合】
計算式:0.75 ×(50,000 ÷ 3,600)=10.41・・・
空走距離は約10.4m  となる

空走距離は車の速さに比例します。反応時間は個人差があり、平均的な反応時間は0.75秒とされています。

停止距離の計算方法

計算式:制動距離+空走距離

【時速50kmで乾いたアスファルトを走行し、反応時間が0.75秒かかった場合】
計算式:制動距離(14m)+ 空走距離(10.4m)=24.4
停止距離は約24.4m  となる

車速が50kmの場合、危険を察知してから停車するまでに、24.4m進むことがわかります。

高速道路を100kmで走行している場合、約77m進みます。路面が濡れていれば、さらに距離が伸びるため、走行中は十分な車間距離をとるなどして、安全運転を心がけることが大切です。

4.停止距離を把握した上で安全運転のために意識すること

車のスピードや路面の状況次第で、停止距離は大きく変化します。そこで本章では、「停止距離」が伸びやすくなる状況や、運転時に気をつけるべきポイントについて解説します。

ハイドロプレーニング現象について把握しておく

ハイドロプレーニング現象とは、雨の日に水が溜まった路面を走行する際に、タイヤと路面の間に薄い水の膜ができ、タイヤが地面に着かずハンドル操作やブレーキが効かなくなる現象のことです。

タイヤの溝は、水はけを良くするものですが、タイヤがすり減ることで水はけが悪くなり、滑りやすくなってしまいます。また、高速道路などでスピードを出しすぎると、排水が間に合わず、余計に滑りやすい状況が生まれてしまいます。

もしハイドロプレーニング現象が起きたら、焦らずゆっくり減速してください。徐々にスピードが落ちることで、自然と収まります。ハンドルをきったり、急ブレーキを踏んだりしないようにしましょう。

雨や雪の日はいつも以上に注意する

雨や雪の日は、路面の摩擦が少ないため制動距離が伸びやすいです。いつもよりスピードを落とし気味で走行するなど、運転には注意しましょう。

また雪の日は、路面に薄い氷の膜ができ、アスファルトの色が見える「ブラックアイスバーン現象」や、凍って鏡のように反射する「ミラーバーン現象」などが起こります。

減速することはもちろんのこと、スタッドレスタイヤに変えたり、タイヤチェーンをつけるなどして、交通事故を回避しましょう。

速度に応じて十分な車間距離を保つ

制動距離や停止距離は、車のスピードが速いほど伸びます。仮に乾いたアスファルトの路面を、時速50kmで走行した場合、完全に停止するまでに24.4mの停止距離を要します。

天候・ドライバーの体調・車の重量・タイヤのすり減り加減では、さらに距離が伸びるため、重大な事故につながりかねません。

とくにスピードが出やすい高速道路では、十分な車間距離をとって運転するように心がけましょう。

余裕をもって予定より3分前に出発する

予定より3分早めに出発するだけで、ゆとりをもって運転できます。

余裕があると、無理な追い越しや信号無視といった危険行為や、急ブレーキを踏むような危険な状況も回避できます。また、渋滞や悪天候など、予期せぬトラブルにも柔軟に対応可能です。

とくに、朝の通勤時間や週末のお出かけ前には、「予定の3分前の出発」を意識することが、安全運転につながります。

疲労や眠気がある場合は運転を控える

疲労や眠気を感じた状態での運転は、事故のリスクが高まります。疲労の蓄積や睡眠不足は、注意力や集中力が低下しやすく、反応時間が遅れ、停車距離が伸びる傾向にあります。

もし、運転の途中で疲れや眠気を感じたら、駐車場などの安全な場所に停車して、しっかり休憩をとるようにしましょう。また、体調が優れない時は、無理せず運転を控えるようにしましょう。

関連記事:『居眠り運転を防ぐには?事故が起きやすい特徴や眠気の対処法について解説

5.まとめ

本記事では、制動距離・空走距離・停止距離について、それぞれの違いや計算方法を解説しました。

制動距離はブレーキを踏んでから停車するまでの距離で、空走距離はブレーキが効き始めるまでの反応時間内に進む距離です。この2つを合わせたものが停車距離です。

停車距離は、車のスピード、路面の状況、天候、ドライバーの体調によって、大きく変化します。そのため、日頃から安全運転を心がけるには、制動距離と空走距離についての理解を深めることが重要です。

また、天候が悪い日やスピードが出やすい高速道路などでは、十分な車間距離をとり、いつもよりスピードを落として走行するよう心がけましょう。

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この記事の執筆者

株式会社パイ・アールPAI-R Co., Ltd.

安心・安全な交通社会の実現へ向けてさまざまな課題や解決を探求し、アルコールチェックをはじめドライバーの安全管理や業務管理にまつわるさまざまなお役立ち情報を発信しています。

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