超小型モビリティ・電動モビリティの種類一覧を紹介|法律を理解し正しく運用するために

小型モビリティや電動モビリティは、環境問題や都市部の交通混雑の解決策として、全世界で需要が高まっています。近年は、エコで場所を取らない移動手段として、観光地でレンタルできたり、宅配サービスで使われたり、街中で見かける場面が増えてきました。

高まる需要に応えて、各メーカーでは、さまざまなタイプの小型モビリティや電動モビリティを発売しています。そのような中、多くのモビリティが生まれたことにより、種類が多すぎて利用する私たちも混乱し、法整備も追いついていない状況です。

本記事では、小型モビリティや電動モビリティの種類や特徴について解説するとともに、各モビリティの法律や交通規則、使用する上での注意点について解説します。

1.小型モビリティ・電動モビリティとは?

小型モビリティと電動モビリティは定義が異なります。

【電動モビリティとは】

電動モビリティとは、電動モーターで動くすべての乗り物を指し、一般的な車両区分の認識では「EV車」「超小型EV車(超小型モビリティ)」「電動マイクロモビリティ(小型モビリティ)」に分けられます。

 

【小型モビリティとは】

電動モビリティの中に小型モビリティのカテゴリがあり、電動スクーター、電動キックボード、モペット、電動アシスト自転車、シニアカーなどが、小型モビリティの例として挙げられます。

 

引用元:現行制度について|国土交通省

ただし、これらの車両区分はあくまで一般的な認識であり、法律で定められた車両区分とは異なるため注意が必要です。

また、同じ電動モビリティでも「道路交通法」と「道路運送車両法」では車両区分が異なるため、人によって電動モビリティの交通規則があいまいなケースが多いです。

全体的に非常にわかりづらいため、電動モビリティに乗る際は、使用する車両の道路交通法と、道路運送車両法で定められた規則を、必ず確認してください。

参考:電動モビリティの車両区分|警視庁 / (2)超小型モビリティとは?|国土交通省

道路交通法と道路運送車両法の違いとは?

道路交通法と道路運送車両法は、どちらも道路や交通の安全を守るための法律で、それぞれ異なる目的で規定されています。2つの法律の違いは以下の通りです。

  道路交通法 道路運送車両法
法律の目的 道路における危険を防止し、交通安全と円滑をはかる 車両の安全性の確保、公害の防止、環境の保全をはかる
法律の内容 運転免許、交通ルール、飲酒運転、型式認定など 自動車の検査、登録、届出、強制保険など
取り締まり対象 自動車、自転車、原動機付自転車などの運転者や、歩行者 自動車、自転車、原動機付自転車などの車両(車両の所有者)、関連する企業や人物

電動モビリティの種類、および区分方法は法律によって異なるため、電動モビリティの購入を考えている方は、事前に道路交通法と道路運送車両法の規則を確認しましょう。

参考:自動車の種類|国土交通省

2.原動機付自転車

原動機付自転車に該当する電動モビリティは、以下の交通規則が定められています。

  • ・速度制限:時速30km以内、もしくは時速60km以内
  • ・免許の取得必須
  • ・ヘルメット着用義務あり
  • ・車道のみ通行可能(歩道、路側帯、自転車道の走行は原則不可)
  • ・自賠責保険の加入必須
  • ・2,000円/年の軽自動車税の納税

原動付機自転車は、コンパクトで小回りが利くため、日常生活の移動手段だけでなく、宅配などの配達手段としても便利です。また近年では、ペダル付き原動機付自転車のモペットも普及しはじめています。

しかし、その他さまざまな電動モビリティの交通規則と混同しやすいため、原動機付自転車に乗る際は、注意が必要です。

そこで本章では、原動機付自転車に該当する「原付バイク(電動スクーター)」と「モペット」の交通規則や特徴について解説します。

関連記事:『モペット(フル電動自転車)が免許不要の対象ではない理由|特定小型原動機付自転車との違いを解説

原付バイク(電動スクーター)

原付バイク(電動スクーター)は、電動モーターで走るバイクです。電動モーターの定格出力によって、車両区分が第一種と第二種に分けられ、交通規則も異なります。

【第一種原動機付自転車の場合】

  • 定格出力:600W(0.6kW)以下
  • 速度制限:時速30km
  • 原付免許の取得が必須(普通自動車免許で運転可能)

【第二種原動機付自転車の場合】

  • 定格出力:600W(0.6kW)を超え1000W(1.0kW)以下
  • 速度制限:時速60km
  • 小型限定普通二輪免許(ATも含む)の取得が必須

どちらも高速道路および、自動車専用道路の走行はできません。なお、原付通行禁止の標識がある道路では、第二種のみ走行可能です。

参考:自動車の種類|国土交通省

モペット

モペットは、ペダル付きの電動バイクで、自転車と電動バイクの両方の機能を楽しめます。電動スクーターと同じく、電動モーターの定格出力によって、第一種と第二種に分けられます。

ペダル付きなので「自転車と似ているから、免許不要で乗れるのでは?」と考える方もいますが、モペットの運転には運転免許が必須です。

より詳しい交通規則や罰則内容は、関連記事で解説していますので参考にしてください。

関連記事:『モペットは自転車ではない|取り締まり強化の背景と罰則・罰金について解説

3.特定小型原動機付自転車

特定小型原動機付自転車に該当する電動モビリティは、以下のような交通規則があります。

  • ・速度制限:時速20km以下
  • ・定格電力::600W(0.6kW)以下
  • ・免許不要
  • ・16歳未満は運転不可
  • ・ヘルメットの着用は努力義務
  • ・車道および自転車道を走行可能

令和5年7月から、電動モビリティのうち一定の基準を満たす車両については、特定小型原動機付自転車に区分され、免許不要で運転できるなど、新しい交通規則が適用されています。

コンパクトで走行性能に優れているため、交通量の多い都市部や観光地では、レンタルサービスを見かける機会が増えています。しかし、特定小型原動機付自転車の交通規則を知らない方も多く、危険運転が問題視されているため、乗る際は正しい交通規則の把握が重要です。

そこで本章では、特定小型原動機付自転車である「電動キックボード」と「電動サイクル」の交通規則や特徴について解説します。

電動キックボード

電動キックボードは、免許不要で乗れる小型の電動モビリティです。

ただし、見た目が電動キックボードでも、車体や定格出力などの条件を満たさない場合は、電動スクーターと同じ一般原動機付自転車に区分され免許が必要です。

加えて、最高速度が6km/h以下の電動キックボードは「特定特例小型原動機付自転車」に区分されます。

【特定特例小型原動機付自転車とは】

  • 速度制限:時速6km以下
  • 最高速度表示灯を点滅できる
  • 長さ190cm以下、幅60cm以下、高さ140cm以下

電動キックボードに乗る際は、車両区分を確認し、交通ルールを守って楽しみましょう。

関連記事:『【必須】電動キックボードのナンバープレート取得方法と注意点を紹介

電動サイクル

電動サイクルは、今後需要が高まると考えられている電動モビリティです。

ペダルをこがなくても走行できるため、ペダルをこいでモーターを駆動させる「電動アシスト自転車」とは車両区分が異なります。また、特定小型原動機付自転車の条件を満たした電動サイクルは免許不要で乗れるため、免許が必要なモペットとも車両区分が異なります。

ただし、電動サイクルは16歳未満の運転が禁止されているため、16歳未満の人に貸す・買い与える・譲渡するなどしないよう注意しましょう。

参考:「電動自転車」って自転車?バイク?|警視庁

4.自動車

電気自動車(EV)は、CO2削減などを目的に全世界で普及している電気自動車です。日本での2023年の販売台数は約44,000台、全世界では約1,380万台と拡大しています。

物流関連の企業はEVトラックを導入するなど、今後さらに普及が進むと考えられます。

そこで本章では、電気自動車の種類や車両区分について解説します。

EV

EV車は、一般的に以下の4種類にわけられます。

EV(電気自動車)の種類と特徴
種類特徴
BEV(バッテリー式電気自動車)大型バッテリーのみでモーターを駆動させ走行する。
PHEV(プラグインハイブリッド)エンジンとモーターを搭載し、充電が切れてもエンジンで走行可能。充電は外部充電方式。
HEV(ハイブリッド)エンジンとモーターを搭載し、充電が切れてもエンジンで走行可能。外部充電ではなく、エンジン駆動により充電可能。
FCEV(燃料電池自動車)水素と酸素の化学反応によって発生する電気で、モーターを駆動し走行する。

道路交通法では、以下の6つに車両区分されます。

  • 大型自動車
  • 中型自動車
  • 準中型自動車
  • 普通自動車
  • 大型特殊自動車
  • 小型特殊自動車

運転するEV車の車両区分に応じて、取得が必要な運転免許や交通ルールが異なるため、運転する際は交通規則を必ず確認してください。

参考:電動モビリティの車両区分|警視庁

超小型EV(マイクロEV・超小型モビリティ)

超小型EVの運転には、「普通自動車免許の取得」「ナンバー取得」「車検」が必要です。

道路運送車両法では「自動車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動の足となる1人から2人乗りの車両」と定義され、3つの車両区分に分けられます。

超小型EV(マイクロEV・超小型モビリティ)の車両区分
  第一種原動機付自転車
(ミニカー)
超小型モビリティ
(型式指定車)
超小型モビリティ
(認定車)
制限速度時速60km構造上、時速60km個別の制限付与
定格出力600W(0.6kW)以下600W(0.6kW)超600W(0.6kW)〜8000W(8.0kW)
長さ2.5m以下2.5m以下3.4m以下
1.3m以下1.3m以下1.48m以下
高さ2.0m以下2.0m以下2.0m以下

道路運送車両法で、第一種原動機付自転車扱いでも、道路交通法上は普通自動車に区分されるため、運転する際の交通ルールは自動車と同じです。ただし、高速道路は走行不可なので注意しましょう。

参考:超小型モビリティについて|国土交通省

5.その他モビリティ

電動モビリティは、他にもさまざまな種類が販売されています。

そこで本章では、「電動アシスト自転車」「セグウェイ」「電動車椅子・シニアカー」の交通規則や特徴について解説します。

電動アシスト自転車

電動アシスト自転車は、道路交通法では「自転車」に区分され、以下のような規則が定められています。

  • 速度制限:時速24km
  • 免許不要
  • ヘルメットの着用は努力義務

電動アシスト自転車であっても、原動機の力が加わる改造をして、基準に合致しない場合は原動機付自転車に該当します。

最近は、電動アシスト自転車と称する違法自転車を販売する事例があるため、購入時は慎重に確認しましょう。

参考:電動アシスト自転車と称する違法自転車について|警視庁

セグウェイ

セグウェイは、電動の搭乗型移動支援ロボットで、一般的には私有地や許可を得た敷地内での利用に限られています。

国土交通省関東運輸局の資料によると、セグウェイは「小型特殊自動車」に分類され、公道での走行には特別な許可が必要です。

【小型特殊自動車の条件】

  • 最高速度:10km/h以下
  • 全長:1,500mm以下
  • 全幅:700mm以下
  • 全高:2,800mm以下

公道走行には、地方公共団体等が設置する協議会との連携や、所轄警察や地域住民との協力、基準緩和認定の申請と審査が必要です。また、18歳以上で普通自動車免許または普通自動二輪免許の所持が必要となります。
(私有地の走行の場合は免許不要)

日本では、現状は一部の実証実験を除いて公道走行は原則として禁止されています。ただし、つくば市や横浜、箱根などで特区制度を利用した公道を走るツアーが実施されている例があります。

海外では多くの国で公道走行が認可されていますが、日本とイギリスでは現在も制限が続いている状況です。

参考:搭乗型移動支援ロボット認定申請の手引き|国土交通省 関東運輸局

電動車椅子・シニアカー

電動車椅子やシニアカーは、免許不要で乗れる三・四輪車です。

  • 速度制限:時速6km以下
  • 長さ:1.2m以下
  • 幅:0.7m以下
  • 高さ:1.2m以下(ヘッドサポートを除いた部分の高さ)

などのルールが定められています。

道路交通法上は、歩行者とおなじ扱いになるため、歩道のみ走行可能です。シニアカーを購入する場合、自治体によって補助金が出る場合があります。条件や補助金額は自治体によって異なります。

電気車椅子の場合、補装具支給制度もしくは介護保険の適用で、補助金を受けられます。自治体ごとに条件があるため、購入を考えている方は自治体のホームページや電話にて確認してください。

参考:道路交通法施行規則 第1条の4第1項(移動用小型車の基準)|e-Gov法令検索

6.小型モビリティ・電動モビリティを使用する上で注意すること

小型モビリティ・電動モビリティを使用する上で、注意したい項目は以下の通りです。

  • ・道路交通法を守る
  • ・通行可能エリアを確認する
  • ・ヘルメットを着用する
  • ・夜間はライトを点灯する
  • ・計画的に充電を行う
  • ・充電スポットを確認しておく
  • ・バッテリーや車両の廃棄方法を確認しておく

電動モビリティによって、免許やナンバープレートの取得などが必要な場合があり、規則を守らない場合は罰則の対象になります。

楽しく快適に乗るために、交通ルールを事前に確認し、周りの迷惑にならないよう安全運転を心がけましょう。

7.まとめ|モビリティの特性を理解し安全に運用しよう

本記事では、電動モビリティや小型モビリティの種類や、特徴について解説しました。

電動モビリティや小型モビリティは、現代社会のニーズに応じた便利でエコな移動手段です。利用する際は交通ルールを正しく理解し、安全に運転することが重要です。
近年は、小型モビリティの危険運転が問題視されているため、歩行者や他の車両への配慮ある運転が求められています。

安全対策や計画的な充電を行い、快適な運転を楽しみましょう。

株式会社パイ・アール ロゴ

この記事の執筆者

株式会社パイ・アールPAI-R Co., Ltd.

安心・安全な交通社会の実現へ向けてさまざまな課題や解決を探求し、アルコールチェックをはじめドライバーの安全管理や業務管理にまつわるさまざまなお役立ち情報を発信しています。

PAGETOP